ITへの予算をどのように振り分けるか?
最後にテックバイザージェイピージェイピー代表取締役の栗原潔氏が登壇し、「内部統制、IT投資ポートフォリオ管理、そして、IT基盤最適化」と題して講演を行なった。
「日本版SOX法」施行を控え、すっかりおなじみになった「内部統制」という言葉だが、特にSOX法がらみの文脈で使われる場合の意味合いは、なかなか理解しづらいものがある。法律である以上、どうしても堅苦しい文体になり、網羅的内容になるため、要点をつかみづらいのだ。
栗原氏は、IT部門担当者にとってのSOX法は「行なうべき項目のチェックリスト」であることを指摘、そのうえで内部統制とは「不正やミスを防ぐための社内のチェック機能」と分かりやすく説明する。また、これまでも存在していた概念だが、法律の施行にともない、注目が集まっていることを指摘した。
「IT投資ポートフォリオ」とは、ITの予算をどのように振り分けるかの戦略であり、個別案件ごとの投資判断(個別最適)や十把一絡げのどんぶり勘定でもない。ハイリスク/ハイリターン、ローリスク/ローリターンといった特性ごとに分類し、リスクの最小化と効果の最大化を同時に実現するバランスを見つけ出すことである。
また栗原氏は経営資源の割り振り方の判断基準として、ジェフリー・ムーアの「コア・コンテキストモデル」を挙げる。「コア」とは企業の差別化に結びつく要素、「コンテキスト」がそれ以外の要素である。企業は成熟するにつれ、コンテキストに割り振られる資源が増える傾向にある。しかし、長期的な競争力維持のためには、資源をコア要素へ意識的に集中させることが必要と訴えた。また、その際にコンテキストの資源を機械的に削減するのではなく、サービスレベルを維持しながらのコスト削減していく「サービス管理」が重要であると付け加えた。
すべての前提となるIT基盤最適化
最後にここで紹介した内部統制の強化、IT投資ポートフォリオの改善の前提条件として、栗原氏は「IT基盤最適化」の必要性を訴える。IT基盤が適切に整備されていればシステム全体が見通せる。しかし、そうでない状態で内部統制の強化を行なっても、運用・管理の負荷が増大し、本来の業務に支障が生じるし、IT投資ポートフォリオの改善をしようとしても、必要なサービスレベルを保てなくなり、業務に悪影響が出るからだ。
栗原氏はIT基盤最適化を構成する要素として、仮想化、現代化、自動化、単純化、部品化、標準化の6点を挙げ、バランスをとって進めることの大切さを訴えた。