WSJにたてつくつもりはないんだけど……
Get a Macのコマーシャルについて、ASCII.JPのKQくんからメールをもらった。「WSJの記事を読みましたか?」という内容である。The Wall Street Journalのオンライン版に“Mac and PC's Overseas Adventures”という記事が掲載されている。実は、Get a Macのコマーシャルについては、月刊アスキーの原稿(2007年5月号、3月24日発売号)を、ちょうど入稿してしまったところだった。それも、ぜひご覧になっていただくとして、ここでは、このWSJの記事について考察してみることにする。
この記事の核心は、なんといってもジャスティン・ロングが、この比較広告のバランスについてきちんと語っていることである。
Mr. Long says his goal is "to not come off like, 'Sorry, man, I'm just better than you,' like I'm gloating and I'm kind of celebrating the fact that I'm better. [That] comes off as smug, and that's the danger."
ロング氏は「悪いね。君より僕のほうが、いかしてるみたいだ」とか、「自分が優れているという事実にほくそ笑んだり、自画自賛しちゃうタイプの人間にならないこと」が狙いだったと話す。「そうなると、キザな感じになって、危険だからね」。
これには、彼自身が、自分が適役でありどう演ずるか考えたかというニュアンスが出ていると思う。
ところで、実は、これより前にもWSJでこのコマーシャルを取り上げた別の記事があった。“Best (and Worst) Ads of '06”という“広告大賞”みたいな記事で、Get a Macが2006年のベスト広告の1つとして選ばれているのだ。ただ、このときは「ちょっとヘンだな」と思う部分があった。日本在住の私が、WSJのコラムニストにたてつく必要もないのだが、アップルのCMに触れた以下の部分である。
The Mac-man -- played by actor Justin Long, star of the film "Accepted," is clever, fun and handy -- he can communicate with all sorts of different people, and knows how to come up with pictures and music.
映画『Accepted』の俳優ジャスティン・ロングが演じる“Mac君”は、賢くて、陽気で、器用である――彼はさまざまな種類の人々とコミュニケーションがとれて、写真や音楽をどう扱ったらいいか知っている。
何とジャスティン・ロングが、“賢く”“陽気”で“器用だ”なんて書いてある! 「(he) knows how to come up with pictures and music.」という中途半端な説明は、あのコマーシャルのシリーズのうち、ほんの2~3本しか見ていないのではないかとも思わせる。
9.11以降の米国におけるカシコさ
Get a MacのCMで、ジャスティン・ロングは、「clever, fun and handy」という表現されうるのだろうか? 冷静に考えてみると、WSJのコラムニストが芸能音痴なのではなく、もはや、米国では、本当にジャスティン・ロングのような役者が、賢く、親しみやすいというイメージになっている可能性があるとも思えてきた。実際に、自分の周囲にこんな奴がいたら、さぞ迷惑なはずなんだけど、少なくとも映像の中では人気があるわけなのだ。
というのも、彼の役どころのパターンとして、ダメダメな負け犬系として登場するのだが、とにかく懲りないところが凄い。その迷惑パワーで、最後には、なんとか形になってしまう。その過程では、フツーの頭のよい良識人だったら絶対やらない、思いもよらない方法を繰り出してくる。それが、偶然にうまくいってしまうというストーリーが多い。従来からある弱い軍団が、パワフル軍団をやっつけるというパターンとはちょっと違う。もし、理由を付けるとすれば、9.11以降、この不屈の迷惑パワーこそ、新しい意味で賢い(いわば強い)ということなのだろう。
ちなみに、ジャスティン・ロングのこうしたハマリ役のパターンについて、ASCII.JPのマック担当のH君に話をしていたら、
「それって、いまのアップルそのものじゃないですか」
と言われた。

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