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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第253回

イスラエル・ハマス衝突 SNSにフェイクあふれる

2023年10月17日 07時00分更新

文● 小島寛明

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 イスラエルとハマスの軍事衝突とともに、世界中のSNSが偽動画や誤った情報であふれた。

 たとえば、ハマスの戦闘員がイスラエルのヘリコプターを撃ち落とす場面の動画がXに投稿されたが、本当はARMA 3というゲームの動画だった。

 イスラエルのネタニヤフ首相が病院に搬送されたとの投稿も拡散された。この投稿は、イスラエルの新聞エルサレム・ポストの名前を装ったアカウントから投稿されていた。

 2023年10月13日朝の時点では、エルサレム・ポストを装ったアカウントは凍結されている。

 ゲーム動画についても、「これはARMA 3のものだ」とするコミュニティーノートが表示される。

 こうした偽動画や誤情報の中には、各国の情報機関の関係者が、意図的に混乱や対立を煽るために投稿した「工作」が含まれると考えられている。

 欧州委員会(EU)の委員は、Xのイーロン・マスク氏や、Metaのマーク・ザッカーバーグ氏に書簡を送り、誤情報を削除するなどの対応を求めた。13日の時点では、EUがXに対して、本格的な調査に乗り出したことが明らかになっている。

マスク氏に罰則を示唆したEU

 欧州委員会の委員の書簡は、10月10日付でマスク氏に送付され、Xで公開された。

 最初に紹介したゲームの動画、今回の武力衝突とは無関係の過去の動画、誤情報などがXで拡散しているとして削除を求め、24時間以内に回答するよう求めている。

 さらに、罰則が課される可能性があるとも伝えている。

 デジタルプラットフォーム企業の経営者に対するEUの強い態度の背景には、2022年11月に施行されたデジタルサービス法(DSA)の存在がある。

プラットフォームに厳しいEUのデジタルサービス法

 DSAは、プラットフォームに対してかなり厳しい内容だ。

 EUは2023年4月25日、DSAに基づき「とても大規模なオンラインプラットフォーム」(Very Large Online Platforms)17サービスと、「とても大きな検索エンジン」(Very Large Online Search Engines)2サービスを指定している。

 検索エンジンは、非常にシンプルだ。月間4500万アクティブユーザー以上のプラットフォームが対象となる。対象とされたのはGoogleとBingだけだ。

 オンラインプラットフォームは、AmazonなどのECプラットフォームや、SNSが指定されている。今回の軍事衝突で問題が表面化したSNSとしては、例えば以下のプラットフォームが指定されている。

  • Facebook
  • Instagram
  • LinkedIn
  • Snapchat
  • TikTok
  • Twitter(現X)
  • YouTube

 DSAは、プラットフォーム企業に対し、ユーザーが違法なコンテンツを見つけた場合、通報する仕組みを導入するよう求めている。

 そのうえで、違法なコンテンツの投稿を認識した時点で、「迅速に」削除や無効などの措置をとることが求められる。

 プラットフォームの違反に対しては、前会計年度の全世界売上高の「6%」を超えない制裁金が課せられる可能性がある。

 旧Twitterの2021年の売上高は約5900億円。あくまで参考の試算に過ぎないが、上限の6%の制裁金が課せられた場合、354億円になる。

 欧州委員会側が、マスク氏に対して、とても強い態度で対応を求めているのは、DSAが根拠になっている。

真っ向から対立する、マスク氏とEUの方針

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