「おしゃべりスラミィ」を冒険の相棒に進化させた技術的知見
「ドラクエXの世界観を壊さない」Gemini実装 プロンプトからセキュリティ、サーバー設計まで工夫の数々
2026年08月19日 08時00分更新
「ドラゴンクエストX オンライン」において、“冒険の相棒(バディ)”となるAI機能「おしゃべりスラミィ」の開発が進められている。この機能にはGoogleのAI「Gemini」が採用されている。
2026年7月末に開催された「Google Cloud Next Tokyo 26」のスクウェア・エニックスのセッションでは、このGemini実装における技術的な知見やノウハウが共有された。
伝統あるIPの世界観を維持しつつ、チャットAIを「物語を共に歩む相棒」へと進化させるにはどうすべきか。本記事では、エージェント実装とサーバー構築の観点で語られた同機能における創意工夫をレポートする。
“冒険の相棒”としてのおしゃべりスラミィの機能要件
おしゃべりスラミィは、サービス開始14周年を迎えたMMORPG・ドラゴンクエストX オンラインにて実装予定のAIバディだ(詳細記事:ドラクエXで冒険の相棒「おしゃべりスラミィ」開発中 なぜGoogleのAI・Geminiが選ばれた?)。2026年4月から5月にかけてクローズドベータが実施されており、現行のバージョン8後半での正式公開を目指して、開発・調整が続けられている。
ゲーム内のチャットシステムを通じてスラミィと対話ができ、テキストやスタンプで話しかけると音声付きで反応してくれる。プレイヤーの行動をトリガーに、スラミィ側からも自発的に話しかけてくれる。
おしゃべりスラミィのクローズドベータ段階での機能要件は以下の通りだ。
・プレイヤーの問いかけに対して音声付きで回答
・まわりを見たり実況をしてくれる
・おすすめのクエストを教えてくれる
・指示や昨日話したことを覚えていてくれる
・写真撮影時やログイン時にスラミィから話しかけてくれる
“Gemini Live API”を利用したマルチエージェントシステム
まずは、AI&エンジン開発ディビジョン プログラマーである佐久間隆友氏が、上記要件を満たすために行ったエージェント実装における工夫を披露した。
おしゃべりスラミィは、複数のAIエージェントを組み合わせた「マルチエージェントシステム」によって構築されている。
クライアントからのリクエストは、セキュリティレイヤーを経由したのち、プレイヤーから話しかける「相互会話エージェント」かスラミィから話しかける「自発会話エージェント」へルーティングされる。その後、プロンプトの内容に応じて、配下であるカテゴリ別のサブエージェントが回答を生成する。
その「生の回答」が、後述する自然言語処理や感情判定、音声生成を挟み、再度セキュリティレイヤーを経て、クライアントにレスポンスされる。各エージェントは、Google Cloudのエージェント実行基盤である「Agent Runtime」の記憶サービスやレジストリと連携しており、今後はRAGによる知識拡張も想定しているという。
スラミィとの会話ではリアルタイム性を求められるため、マルチモーダルかつ低レイテンシな対話が可能な「Gemini Live API」が採用されている。「TTS(Text-to-Speech)も検討したが、人間の発話としての品質は十分なものの、ゲームキャラクターとしては物足りない点があった。Gemini Live APIであれば、『デスら』といった独特な語尾やイントネーション、テンションなどを“プロンプトで調整できる”」と佐久間氏。
また、開発ツールには、Google Cloudのオープンフレームワーク「Agent Development Kit」を利用している。エージェント開発に必要な機能が揃っており、サブエージェントやツール、記憶管理を組み合わせるだけでAIエージェントを構築可能だ。さらにAgent Runtimeへのデプロイも可能で、リクエストのAPI設計やランタイムリソースなどを意識せずに運用できる点は、多数のユーザーを想定する同サービスにとって利点だったという。
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります












