ifの歴史でも遊んだ秀逸な工業デザイン作品だ
筆者は視認性抜群の丸形Swatchも愛用している。丸形は機能的には完成形だ。しかし四角いアナログ時計には、合理性とは違う魅力がある。丸ではなく四角であること自体が、この時計の個性なのだ。
装着重量は23g。超軽量腕時計の代表格とも言えるカシオ「F-91W」との差は、わずか3gしかない。透明なケースとストラップが視覚的にも重量感を消し去り、腕に載せていることを忘れてしまうほど軽快だ。
今回WHAT IF...SEE THRU BLACK?を選んだ理由は、四角いアナログ時計だったからだけではない。同時に発売されたWHAT IF?シリーズの中でも、このカラーリングに最も惹かれた。
その理由を考えてみると、筆者自身の仕事にも行き着く。筆者はIBM時代、ThinkPadの商品企画に長く関わってきた。黒を基調としたボディーに、IBMロゴを印象づける赤・青・緑、そしてサポートカラーとして使われた黄色。そんな色彩設計を長年見続けてきた。
WHAT IF?の透明感の奥に見えるダークグレーと鮮やかなアクセントカラーには、どこかその頃のプロダクトデザインにも通じる空気を感じる。無意識のうちに、その記憶へ反応してしまったのかもしれない。
Swatchは透明素材を使ったのではない。透明という素材で遊んだのである。そして今回は歴史でも遊んだ。「もし初代Swatchが四角だったら」という、存在しなかった時間軸までデザインしてしまった。
優れた工業デザインは、性能を説明する前に人を立ち止まらせる。WHAT IF...SEE THRU BLACK?は、時間を知るための腕時計というより、「もしも」という発想を身に着ける工業デザイン作品だった。

今回の衝動買い
・アイテム:Swatch WHAT IF...SEE THRU BLACK?
・購入:Swatch Online Shop
・価格:1万4850円
T教授
日本IBMでThinkPadのブランド戦略や製品企画を担当。国立大芸術文化学部教授に転職するも1年で迷走。現在はパートタイマーで、熱中小学校 用務員。「他力創発」をエンジンとする「Thinking Power Project」の商品企画員であり、衝動買いの達人。
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