このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

Red Hat Summit 2026 現地レポート 第1回

RHEL・OpenShift・Ansibleの進捗が語られた「Red Hat Summit 2026」

ついに“永遠に使える”RHELが登場 Red HatはAI時代も「他にはない選択肢を提供していく」

2026年05月26日 08時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 福澤/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

NASAが語ったモダナイズの実績とAI活用の展望

 基調講演ではNASAマーシャル宇宙飛行センターのジョサイア・ジョンソン(Josiah Johnson)氏がゲスト登壇。月面探査を目指すアルテミス計画や国際宇宙ステーション(ISS)への物資・実験ペイロード運用を支えるインフラのモダナイズについて語った。

 例えば、有人の月周回ミッションであるアルテミス2においては、907の仮想ワークロードが34万のパラメーターをリアルタイムで処理し、エンジニアの意思決定を支援したという。

 ジョンソン氏は、この基盤となる約4千台のレガシーVMを、2千台以上の高性能VMと4千のコンテナに移行する大規模なモダナイズを主導した。Red Hatの仮想化移行ツールキット「Migration Toolkit for Virtualization」を活用することで、運用インフラコストを約40%削減。従来の仮想化プロバイダーが提示した200~300%のコスト増を回避するとともに、ワークロードのデプロイ時間を数日から数分に短縮したと明らかにした。

NASAのジョサイア・ジョンソン氏とRed Hatのクリス・ライト氏

 次のフェーズとして、OpenShift AIノード上でカスタマイズ可能な事前構築モデルを展開し、科学者や運用担当者の認知負荷を下げる計画だという。ジョンソン氏は、「AIは人間の判断の代替ではなく、force multiplier(力の乗数)だ」と語り、データをリアルタイムでフィルタリング・相関付け・優先順位付けすることで、オペレーターが意思決定に集中できる環境を整えていく。

 なお、同じくNASAのジェット推進研究所もRed Hat OpenShift Virtualizationへの移行を発表している。ミッションクリティカルなITインフラの基盤として採用し、VMワークロードの管理効率化と将来のコンテナ化アプリケーションへの移行を見据えた統合基盤の構築を進めるという。

デモで見せたAIエージェントのリスクと防御策

 基調講演では、2つのライブデモも披露されている。

 1つ目は「AgentOps」のデモだ。エージェントカタログによる開発者・動作プロファイルの管理、SPIFFE IDを使ったアイデンティティ付与とアクセス制御、ゲートウェイによるインテリジェントルーティング、そしてこれらを組み合わせた異常検知を実演した。

 実際にレッドチーム演習をすると、正規のトークンを持つエージェントがアクセスを拒否された後に、ネームスペースの機密情報を全ダンプ(一括取得)しようと試みるも、それも阻止。シグナルを人間に通知し、エージェントの挙動を可視化してみせた。

AgentOpsのデモ

 2つ目は「プロンプトハッキング対策」のデモだ。LLMチャットボットに対し、オフトピック検出・多言語検出・ジェイルブレイク検出・出力制御の4つのガードレールを実装し、会場の約1万人が一斉に攻撃を試みる形で検証している。

 Red HatのCTOであるクリス・ライト(Chris Wright)氏は、「エージェントはアプリケーションに過ぎない。その(動かすための)基盤を、皆さんはすでに構築している」と語った。RHEL、OpenShift、Ansibleという既存のプラットフォームに、アイデンティティ・最小権限・サンドボックス・ポリシー・監査証跡を重ね合わせることで、エージェントをガバナンスの枠内で動かすことができる。

 バダニ氏も、「AIへのアクセスを広げることは成功ではない。適切に制御することの方が重要だ」と語り、適切なアクセスを、適切なガードレールとともに与え、信頼を構築する重要性を強調した。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事

アクセスランキング

  1. 1位

    ITトピック

    「原則出社」命じる企業とテレワーク社員の意識ギャップ/“推し活依存”自覚するZ世代が2割/シニアの利用が盛んな○○アプリ、ほか

  2. 2位

    データセンター

    600km超離れたデータセンター間でシステム全体を「完全自動復旧」 日立・NTTドコビジらが実証に成功

  3. 3位

    ビジネス・開発

    物流、病院、家事まで変える“フィジカルAI”最前線 AWSが支援する日本企業14社の挑戦

  4. 4位

    ITトピック

    SaaSに代わりAIエージェント支える“AaaS”が台頭/議事録作成AIは「意思決定支援」へ進化/生成AIの顧客満足度・1位はClaude、ほか

  5. 5位

    sponsored

    Active Directoryがサイバー攻撃の標的となる理由とその対策

  6. 6位

    TECH

    フロンティアAI対策を国内組織はどう捉えているか “内製化への意欲”と待ち望む“政府主導のガイドライン”

  7. 7位

    ビジネス・開発

    フィジカルAIを支える「攻めのIoT基盤」と「守りのOTセキュリティ」

  8. 8位

    sponsored

    高齢者をポットで見守る「みまもりほっとライン」 25年続く「サービスの温もり」とは?

  9. 9位

    デジタル

    Dropbox Protect提供開始 “過剰なファイル共有”をすべて把握し情報漏洩リスクを低減

  10. 10位

    デジタル

    「ツールは入れて終わりじゃない」 香川の建設コンサルが利用率1割だったkintoneを全社基盤に育てるまで

集計期間:
2026年09月01日~2026年09月07日
  • 角川アスキー総合研究所