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中小企業のための“背伸びをしない”AI活用術 第1回

中小企業のAI導入を阻む“3つの壁”を乗り越えるために

AIは中小企業の“魔法の杖”にあらず 「今あるツール」と「現場の悩み」で小さく始めるAI活用のススメ

2026年04月15日 16時45分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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日々の業務データをAI活用につなげる

 こうした壁を乗り越えるために、中小企業が取るべき戦略は何か。ひとつは、既に利用しているクラウドサービスに組み込まれたAI機能を利用することだ。

 例えば、グループウェアとしてMicrosoft 365やGoogle Workspaceを導入している企業は多いだろう。Microsoft 365では、日々利用するOfficeアプリに組み込まれ、業務データにもアクセス可能な「Microsoft 365 Copilot」を、有償の拡張機能としてすぐに利用できる。さらに現在では、業務を自律的に遂行してくれる「Copilot Cowork」の機能も、早期利用プログラム経由で試用できる。

 Google Workspaceでも、上位ライセンスにおいて、各アプリに組み込まれた生成AI「Gemini」の機能や、AIノートツール「NotebookLM」の上位版などが利用できる。

日本マイクロソフトのイベント「Microsoft AI Tour」で披露されたCopilot Coworkのデモ

 他にも、バックオフィスのfreeeやマネーフォワード、社内チャットのSlack、Web会議のZoom、プロジェクト管理のBacklog、クラウドストレージのBoxなど、さまざまなクラウドサービスにAI機能が実装されている。

 これらの機能を活用すれば、日常の業務の中で自然にAIを使えるため、既存のプロセスを大きく見直さなくてすむ。新しいAIツールを一から習得する必要もないため、教育コストも大幅に抑えられる。

 何より、すでに各サービスで蓄積されている業務データをAIが参照できるので、実業務で役立つ「精度の高い働き」を期待できるのがポイントだ。現実にはまだ、定着化やノウハウの共有といった取り組むべき課題は残るものの、見えないコストを抑えつつ、着実に「成果」を生み出すための近道になる。

足元の業務が楽になるツールを見つける

 もうひとつのAI導入戦略は、現場の局所的な課題からスモールスタートして、その成功例を横展開していくことだ。

 いきなり全社展開・大規模展開に取り組んでも、社内のAI活用ニーズは部署・職種ごとに多様であり、合意形成が難しい。社員間の習熟度の差も広がりやすく、その結果、成果が不透明になる。

 そこで、まずは「営業事務の入力作業を減らしたい」「電話応対で作業が中断されるのを防ぎたい」といった“現場の切実な悩み”に耳を傾けることから始める。その中から改善効果が見込めるテーマを選び、AI搭載のサービスで解決を図る。

 または、既存サービスのAI機能を、特定部署に限定して試験導入するのも効果的だ。このように、AI導入を局所的に絞ることで、予算やリスクが抑えられ、得られる成果も見えやすくなる。

 そして、「AIのおかげで残業が減った」といった目に見える成果が出れば、それ自体が強力な社内プロモーションとなり、他部署への展開も進めやすくなる。さらに、成功事例で中心的な役割を担った社員を「AI推進人材」として据え、成果を生み出すための環境づくりも徐々にスケールさせていく。

 生成AIは、企業を一気に変革できる「魔法の杖」ではない。業務データが蓄積されたサービスのAI機能を検討することや、足元の業務を楽にするAIツールを探すところから、AI活用の第一歩を踏み出して欲しい。

 次回は、多くの企業が利用する人気サービスで利用できるAI機能を紹介する。

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