なぜ6年間、犬版が出なかったのか。飼猫6万匹のデータ所有企業が満を持して出した“犬用”「うちの子」の首輪
猫向けデバイス「Catlog」のデータ基盤を武器に、ドッグヘルスケア市場へ
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猫向けヘルスケアデバイス「Catlog(キャトログ)」で知られる株式会社RABOが、この春、満を持して犬向けプロダクト「Pawlinq(パウリンク)」をリリースした。
Catlogは、首輪型デバイスで猫の行動や体調を24時間365日センシングし、アプリ上で可視化するプロダクトだ。累計6万匹以上が利用し、蓄積データは160億件を超える。ストレスを数値化する「ストレススコア」や獣医師監修のAI相談機能、オンライン診療との連携、さらには個体別に最適化した乳酸菌サプリメントの開発まで、単なるガジェットを超えた展開を見せてきた。
だが今回のPawlinqは、その延長線上にあるようで、設計思想そのものが異なるという。株式会社RABO代表取締役社長の伊豫愉芸子氏に、Pawlinq開発の経緯と今後の展望を聞いた。
「Catlogがあったから異変に早く気づけた」6年間で積み重なった手応え
Catlogは、食事、水飲み、運動、睡眠などの日常データを継続的に取得し、異変の兆候を捉える。
2025年6月には猫のストレスを数値化する「ストレススコア」をリリース。さらに、獣医師監修のAI相談機能、オンライン診療との連携、ストレスケアを目的としたパーソナライズ乳酸菌サプリメントの展開、除菌ブランド「JAMES MARTIN」とのコラボによる猫をはじめとするペットにやさしいノンアルコール消臭除菌剤「JAMES MYARTIN(ジェームズ・ミャーティン)」販売など、そのビジネスは周辺領域へと広がっている。
こうした展開の根幹にあるのが、日々蓄積される膨大なデータだ。Catlogは、単なるIoT首輪にとどまらず、データを基盤にヘルスケアへと拡張していくモデルへと進化してきた。
「『Catlogがあったから(病気に)早く気づけました』という声を多くいただいています。命に関わる気づきにつながったというお話もあります」
Catlogは医療機器ではないため診断はできない。しかし日常の揺らぎを捉えることで、疾病の可能性を察知することはできる。この6年間で「継続してきたデータは命を守る」という手応えが積み重なってきた。
猫版の延長では届かない。犬と飼い主の関係性から再設計
Catlogのリリース当初から「犬版はないのか」という声は絶えなかった。にもかかわらず、RABOは6年間、猫に特化し続けた。
猫はほぼ家の中で生活し、ある種、独立した存在だ。飼い主は外から見守る感覚に近い。だからCatlogは、日々の変化を淡々と積み上げる「ログ」を中心に据えた設計になっている。
一方、犬は飼い主と一緒に行動し、散歩に行き、社会と接する。社会性を学ぶために幼稚園に通う犬もいるほどだ。飼い主の多くは、犬を“我が子”のような存在として捉えている。
伊豫氏は、犬の飼い主の心理をこう言語化する。
「ワンちゃんの飼い主さんは我が子同様に“自分が一番この子をわかっている”という感覚が強い。でも、実際は全部を定量的に把握できているわけではありません。言葉を話さない以上、体調の変化を完全に把握するのは不可能です。だからこそ、定性的な愛情を、定量的なデータで補完する必要があります」
この前提を無視して、猫版の延長として犬版を出すわけにはいかなかった。犬でもログは取れる。けれど、Pawlinqが目指したのは「ログを見せること」そのものではない。むしろ、ログは手段であり、中心に置くべきなのは、飼い主が抱く「もっとこの子のことを知りたい」という感情だ。
その感情と現実のギャップをどうUI/UXに落とし込むか。RABOはその問いに向き合うために、時間をかけた。
「誰と散歩したか」まで記録する理由
アプリを開くと、画面にまず表示されるのは「うちの子」の姿だ。Catlogではアイコンのアニメーションで行動が示されるが、Pawlinqでは犬の写真が全面に表示される。
さらに、散歩時には“誰と一緒だったか”も表示される。パパだったのか、ママだったのか。
「ワンちゃんの場合、飼い主さんとの“ニコイチ”の関係がとても大事なんです。誰と一緒にいるかで行動が大きく変わりますから」
この発想は機能設計にも直結している。
1つ目は、「吠える」のセンシングだ。猫では重要でなかった“声”が、犬にとっては重要なコミュニケーション手段となる。うれしいとき、不安なとき、体調が優れないとき――犬は声で伝える。その小さな変化を拾い上げることが、言葉を持たない家族のサインを受け取ることにつながる。
2つ目は、散歩の可視化だ。スマートフォンと連携し、歩いたルートや歩行状態、体温の変化などを記録する。今日はいつもよりゆっくりだったか、息が上がっていなかったか。散歩後のレポートで「いつもと同じ」を確認できること自体が、安心につながる。
3つ目は、留守番の状態把握だ。犬は猫よりも留守番が苦手なケースが多いと言われる。吠え続けていないか、不安で落ち着かず動き回っていないか。留守番の質を数値で可視化することで、飼い主の不安は和らぐ。
【可愛いうちの子には、ちゃんと似合うものをつけたい(次ページ)】
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