Mr.ウォーカー・玉置泰紀がキーマンに聞く「新しい街づくりのOS」 第6回
Google、TwitterなどのIT企業で活躍してきた牧野氏が探る、情報の多層化がもたらす「次世代都市のOS」【一般社団法人メタ観光推進機構・牧野友衛氏】
AI時代の人間証明とデジタル・ナラティブの交差
玉置:AIの真っ只中にいらっしゃる牧野さんから見て、デジタルの人間(AIアイデンティティや証明)と、リアルの街歩きが繋がっていく接点はどこにあるとお考えでしょうか。本業での活動と、メタ観光の活動がリンクする部分についてお聞かせください。
牧野: AIが広まっても、そこに「個」がいるのかどうか、という点で言いますと、メタ観光がやっていることには大きな意味があります。例えば、玉置さんが「浅草橋のこの場所が気に入っている」という情報は、玉置さんが言葉にしたりSNSに出したりしない限り、世の中には存在しない情報です。つまり、僕らがやっているのは「みんなの視点」を集めることであって、そもそも情報化されていないものを情報化している、あるいは掘り起こしているということなんです。これは、今どれだけAIが頑張ってもできないことなんですよね。存在しない情報を作るのではなく、一人ひとりの内側にあるものを掘り起こす。これはいつまでも必要なことだと思っています。
玉置: あるものを拾い上げている、ということですね。でも、このメタ観光で僕らが提案していることって、これまでの観光ではやってこなかったことばかりですよね。
牧野: ええ。「この橋が自分は好きだ」というような個人的な視点は、物理的な橋が存在するという事実とは別の、観光としての意味合いを持っていません。それを「玉置さんが好きな橋」という意味を持たせて情報化していくのがメタ観光です。また、観光そのものが、AIが進化した社会においてより重要になってくると考えています。今後、物のコストが下がり、イーロン・マスクも言っていますが、人々があまり働かなくていい社会が来る時、どう時間を過ごして生きていくかが問われます。その時、観光は人間が生きていく上での食と同じくらい重要なエンターテインメント要素になります。ですから、より需要が増えるはずですし、そこで多くの視点を与えるメタ観光のような取り組みは、十分に必要なものだと思っています。
【編集後記:玉置の眼】
今回の対談を通じて確信したのは、牧野友衛という人物が取り組んでいるのは「場所の再定義」と「人間の再定義」が交差する、極めて野心的な試みだということだ。
メタ観光は、情報の多層化によって街の解像度を劇的に引き上げる。一方でテクノロジーによって情報の主体である「人間」の真正性を担保する事も重要になってきている。この両輪が揃って初めて、私たちはAI時代においても「街」というフィジカルな空間が持つ真の豊かさを、安心して享受し続けられるのではないか。
それは単なる観光のアップデートではない。デジタル・ナラティブ(物語)がリアルな街にシビックプライドを実装していく、新しい社会OSの誕生だ。アスキー読者も、スマホを片手に自分の街の「隠れたレイヤー」を探り、同時に訪れつつあるアイデンティティの未来に触れてみてほしい。
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