Mr.ウォーカー・玉置泰紀がキーマンに聞く「新しい街づくりのOS」 第6回
Google、TwitterなどのIT企業で活躍してきた牧野氏が探る、情報の多層化がもたらす「次世代都市のOS」【一般社団法人メタ観光推進機構・牧野友衛氏】
「自分事化」のスイッチ:住民から「街の担い手」へ
玉置: 今のお話にも出てきましたが、自宅から見える景色の話など「自分事化」という点について深掘りしたいなと思っていて。メタ観光って、ドラマに出てくる名所だとかアニメ聖地があるという情報の羅列だけじゃなくて、個人の視点、物語、ナラティブというのを大切にしているところがすごく面白いなと思っていまして。住民が単なる住民から街の担い手になっていくスイッチというか、どこで入るのか、あるいは普段から入っているものなのか、という点はいかがでしょうか。
牧野: 参加してもらう人たちに言っているのは、ハードルを下げて、「ストーリーを語って」という難しいことではなく、「自分がその街で一番好きな場所はどこですか?」という問いかけです。そうすると、話し出すと結構止まらなくなるんですよね。観光だからどうこうではなく、本当につい行ってしまう、好きな場所を教えてくださいと言うと、割とみんな語ってくれるなと思っています。
ワークショップなのでみんなで話し合って発表すると、人の発表を聞いて「あ、こんな場所でもいいんだ」という気づきが生まれます。そうすると、より話しやすくなる。そもそもワークショップの仕組み自体が、自分の好きなところを語ろうというめちゃくちゃポジティブな話なので、ポジティブな場が作られます。街のことを嫌いな人がいない場なので、自分事にもなるし、街を好きになる雰囲気ができてくる気がします。
玉置: シビックプライド(市民の誇り)の醸成って、言うは易く行うは難しでなかなか難しくて。街の名所案内みたいな地図をもらって歩いたって、なかなか気持ちが分からなかったりするんですが。「ドンツキ」とか「暗渠」でも、実際にワークショップをやって自分で探して見つけて、人に知らせたいというところで、すごくシビックプライド、自分事化した気持ちが醸成されますよね。
牧野: 専門家とやっていて良かったと思うのは、みんな愛を持って語っていることなんですね。「電線」であれ「暗渠」であれ、「建築」でも「路上園芸」でも。あの人たちの「大好きだ」という気持ちを聞くと、その視点を学んだら、みんなやっぱり大好きになっていく。今回の高校生のもので面白かったのは、一度それを聞いたら忘れられなくて、自分たちの地域に戻ってもそれを探してしまうようになることです。
僕が高校生のプロジェクトで専門家を入れたのは、みんなに、たとえ自分の視点が他の人と違っていても自信を持ってもらいたかったからなんです。電線好きな女の子が一人しかいなくて周りに変だと言われていたとしても、あの専門家の人たちがあれだけ自信を持って語ってくれたら、「これでいいんだ」という気持ちになってもらえるかなと思ったんですね。何が好きでもいいんだ、という気持ちになってもらうのは、観光をどうするか以前の問題として、すごく教育的に意味があるんじゃないかなと思いました。
また、専門家にとっても高校生に教えるのは初めてで、すごく工夫してくれました。彼らは普段、同じ趣味を共有した人たちの集まりで街歩きをすることがあっても、メタ観光が行っている観光のど真ん中で実施することはないと思います。観光や教育としてちゃんと取り上げて扱うことで、彼らのやっていることをもっと表舞台に引っ張ってくる。テレビとかだと「変わった人」として紹介されがちなのが嫌だという専門家の方もいましたが、メタ観光では「これが街の見方だ」という王道として持ってきているので、そこも協力してくれている理由の一つだと思います。
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