Mr.ウォーカー・玉置泰紀がキーマンに聞く「新しい街づくりのOS」 第6回

Google、TwitterなどのIT企業で活躍してきた牧野氏が探る、情報の多層化がもたらす「次世代都市のOS」【一般社団法人メタ観光推進機構・牧野友衛氏】

文●玉置泰紀(エリアLOVEウォーカー総編集長)

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テクノロジーとフィジカルの融合:メタ観光の「実装段階」

玉置: その流れで、今度は「テクノロジーとフィジカル」という点についてお伺いします。メタ観光マップなどを作っていますが、よく「実装する・しない」という話をしますよね。江東区などでは、エリアの様々な実践から、僕らとしては社会実装まで行きたいという思いがあります。まだ完璧ではありませんが、墨田区でも地図をアップデートしたりしています。

 牧野さん的には、こうした最先端のデジタル技術、例えば情報の多層化や、歩く際の位置情報の活用といったものを、みんなが普段使うインフラとして「実装」させていくために、何が必要だとお考えですか? あるいは、どういう形になればみんなが普通に楽しめるようになるか、具体的なイメージはありますか?

牧野: そういう意味では、メタ観光推進機構の総会にも出てくる「ヤママ(Yamama / 山口マニアマップ)」のようなものが、一つの「実装」というか、むしろ「自走」に近い形かなと思っています。結局のところ、我々が直接手掛けなくても、自発的に作ってくれる人たちが外側に増えていくということが、本当は一番いいことだと思っているんです。

玉置: なるほど。

牧野: 「ヤママ」は山口県の高校生たちが作ったものですが、ほぼメタ観光がやっていることと同じことを自分たちでやってくれています。あるいは、先ほどの墨田区では、メタ観光の成果を使って、マラソンコースにメタ観光スポットを組み込んでくれるといった活用事例も出てきています。ある意味、僕らが当初思っていた以上に、僕らの手を離れて外側に広がりつつあるなという気がしますね。

玉置: 作り手が僕らだけではなく、外部で事例が増えてきているということですね。一つには、これまで牧野さんを含め、皆さんの「方針」としてAPIなどを全部公開してきたことがありますよね。どうやったら作れるんですか、という作り方のノウハウも、惜しみなく全部出しています。

牧野: ええ、誰でもそれを読んで、自分たちでできるようにしています。その姿勢が少しずつでも広がっていくと良いなと思っています。究極的には、みんなが勝手にやってくれればいいんです。我々が全国どこへでも行く必要はなくて、このような動きが観光全体に起こればいい。そう思うと、今回の山口での「ヤママ」の事例は本当に励みになりますね。

玉置: 今日の発表内容を見ても、ああいうものがどんどん増えてほしいと感じました。

牧野: やはり、高校生と一緒にやったからこそ、ああいう「自分たちで作る」という動きが起こったというのも、非常に良かった点ですね。大人でやるのとはまた違った広がりがあります。愛媛の方でもメタ観光マップを作っていましたが、あちらは事務局が作っていたものでした。それに対し、今回の山口のように「参加した高校生自らが作る」という形は、高校生や大学生といった若い世代と組むからこその良さかもしれません。彼らは面白いと思ったら、大人よりも気楽にパパッと作ってしまいますからね。

玉置: フットワークが非常に軽いですよね。

牧野: あとは、高校生たちはある程度グループで取り組んでくれるので。単発でバラバラに参加するコミュニティとは違い、組織的な広がりも期待できます。今後は大学生などとも、こうした形で進めていくのはありだなと思っています。

玉置: ありがとうございます。

「ヤママ(Yamama / 山口マニアマップ)」は、山口県立山口高等学校の生徒たちが開発した多層型観光マップ。山口県主催の「若者活躍による観光力パワーアップ事業」を通じて誕生したこのツールは、単なる観光案内ではなく、高校生ならではの視点で地域の魅力を「歴史」「日常」「エモさ」などの複数のレイヤー(層)で可視化したデジタルアプリ。その革新的な点は、大人の用意した枠組みを超え、生徒自らが公開APIを使いこなしてシステムを「自走」させた点にある。この主体性とメタ観光への深い理解が評価され、「メタ観光アワード2025」を受賞した。若者の感性で地域の価値を多層的に捉え直した「ヤママ」は、2026年現在の観光DXにおける、次世代の担い手によるボトムアップ型モデルの象徴となっている。

2026年3月26日、2025年度メタ観光推進機構総会での牧野氏

山口高校観光班・山口マニアマップ(ヤママ)はメタ観光アワード2025に選ばれた

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