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気球からロケットを成層圏で発射 宇宙スタートアップ、ディープテックも挑むB Dash Camp「Pitch Arena」

B Dash Campのピッチコンテスト「Pitch Arena」出場者募集中。JIDに出展したスタートアップ3社を紹介。

連載
JID 2026 by ASCII STARTUP

提供: B Dash Ventures株式会社

 ASCII STARTUPが2026年3月3日に東京・浜松町で開催した展示交流・ビジネスカンファレンスイベント「JID 2026 by ASCII STARTUP」には、さまざまな分野のスタートアップがブース出展した。会場には、日本最大規模のスタートアップカンファレンス「B Dash Camp」のピッチコンテスト「Pitch Arena」に挑戦した企業の姿もあった。

JID展示会場に出展したAstroX株式会社のブース。大気球を使った空中発射方式のロケット「ロックーン」の仕組みを紹介するペーパークラフトが展示されていた

スタートアップの登竜門「Pitch Arena」

 B Dash Campは、スタートアップの経営者、投資家、大企業の新規事業担当者などが集まる、日本最大規模の招待制スタートアップカンファレンスだ。年2回開催され、国内外のスタートアップ関係者が集まり、講演やセッション、ネットワーキングなどが行われる。

 そのプログラムのひとつとして実施されているのが、スタートアップによるピッチコンテスト「Pitch Arena」だ。選ばれたスタートアップが、投資家や業界関係者の前で自社の事業やビジョンを発表する。

 これまでにもPitch Arenaをきっかけに知名度を高め、資金調達や事業拡大につながったスタートアップは少なくない。新産業の担い手となる企業が登場する場として、スタートアップ業界では注目度の高いステージとなっている。

2025年11月5日~7日に開催された「B Dash Camp 2025 Fall in Fukuoka」の「Pitch Arena」では株式会社メデタが優勝

「Pitch Arena」出場スタートアップを募集中

 現在、2026年5月に開催予定の「B Dash Camp 2026 Spring in Sapporo」に向けて、ピッチコンテスト「Pitch Arena」の出場スタートアップを募集している。

 Pitch Arenaは、選考を通過したスタートアップがB Dash Campのステージに登壇し、投資家や起業家、事業会社の関係者などの前でピッチを行うプログラムだ。スタートアップにとっては、自社の事業を広くアピールすると同時に、投資家やパートナー候補と出会う機会にもなる。

 応募締切は2026年3月27日。詳細や応募条件は、公式ページから確認できる。

 今回のJIDの展示会場には、過去のB Dash Campのピッチコンテスト「Pitch Arena」に出場したスタートアップの姿もあった。

 ブース出展していたのは、「B Dash Camp 2025 Fall in Fukuoka」のPitch Arenaに出場したAstroX株式会社とLOMBY株式会社、そして「B Dash Camp 2025 Spring in Sapporo」でファイナリストとなったParakeet株式会社の3社だ。

気球からロケットを空中発射する“ロックーン”で衛星打ち上げを目指す

 AstroXは「宇宙開発で “Japan as No.1” を取り戻す」というビジョンを掲げる宇宙スタートアップだ。同社が開発するRockoon(ロックーン)は、気球でロケットを成層圏まで運び、そこから空中発射して人工衛星を軌道に投入する方式である。

 同社 広報ブランディングを担当する柏女霊照氏によると、気球を使う打ち上げ方式には大きく3つのメリットがあるという。

AstroX株式会社 広報ブランディング 柏女 霊照氏

 1つ目はコストだ。地上からロケットを打ち上げる場合、重力や大気抵抗を突破するために多くのエネルギーが必要になる。一方、ロックーンでは気球で成層圏近くまで運ぶことで、大気の大部分を抜けた状態からロケットを発射できるため、エネルギー効率が高くなるという。

 また、地上からのロケット打ち上げで発生する爆音や衝撃波(ソニックブーム)が抑えられる。柏女氏は、「振動が少ないことで、搭載する衛星も強い振動を前提とした設計にする必要がなくなり、衛星側の開発コストを抑えられる可能性がある」と説明する。

 2つ目は、ロケット発射場に縛られない点だ。国内でロケットを打ち上げられる場所は、種子島宇宙センターや和歌山のスペースポート紀伊、北海道スペースポートなどに限られている。これに対し、気球方式であれば、気球を上げられる場所があれば打ち上げ拠点を設けることができ、多拠点での打ち上げが可能になる。

 3つ目は打ち上げの柔軟性だ。現在、人工衛星の打ち上げ需要が高まっており、打ち上げまで2〜3年待ちになるケースもあるという。ロックーンは小型で多拠点から打ち上げられるため、特定の時期に合わせた打ち上げなど、小規模でも柔軟に対応できる可能性がある。

 AstroXは2022年12月、姿勢制御を伴う気球からの空中発射に成功した。さらに2024年11月には、地上から気球を打ち上げる試験を実施し、高度約10kmまで到達している。現在は成層圏からの打ち上げ実証に向けた開発を進めており、2026年中のサブオービタルロケット実現を計画している。

コンビニの商品を玄関まで運ぶ自動配送ロボット「LOMBY」

 LOMBYは、コンビニなどの店舗から商品を自宅まで届ける自動配送ロボットだ。現在、東京都八王子市の南大沢エリアでは、セブン‐イレブンと連携し、6台のロボットが日常的に稼働している。

 LOMBY株式会社 代表取締役の内山智晴氏によると、南大沢ではセブン‐イレブンの配送サービス「7NOW」アプリから注文する際、配送方法としてロボットを選択できる仕組みになっている。

 「ロボット配送を選ぶと、セブン‐イレブンさんの店舗に置かれているLOMBYに商品を積み込み、お客さんの玄関前まで運びます」

「7NOW」アプリのデリバリー画面。南大沢のLOMBY設置店舗ではロボット配送が選べる

 LOMBYは道路交通法上、「遠隔操作型小型車」に分類される。このため公道走行には遠隔監視が必要で、現在は南大沢のオペレーションルームから見守りながら、毎日9時半から20時まで運行しているという。

 ロボットの前方にはカメラが搭載されており、横断歩道の信号を認識して青信号で横断する。配送先に到着すると利用者にショートメッセージで通知が届き、送られてきた二次元コードをロボットのスキャナーにかざすと扉が開き、利用者が商品を受け取る仕組みだ。

 配送料は1回330円で、人による配達と同じ料金に設定されている。内山氏は「コンビニ配送では、重い荷物というより“今欲しいもの”を届けるクイックコマース(即時配送)のニーズが高い。1kmほどの距離であれば20分程度で届けることができます」と説明する。

 現在サービスが南大沢エリアに限られているのは、ロボットの台数がまだ少ないため。今後の全国展開に向けて量産機の開発を進めている。

 「まずは量産の初期ロットを出し、セブン‐イレブンの店舗がある住宅街などで展開していく予定です。本当に日常で使われるサービスにしていきたい」と内山氏は話していた。

LOMBY株式会社 代表取締役 内山智晴氏(右)とプロジェクトマネージャーの澁江孟氏(左)。JIDのブースでは、実際に運行しているLOMBYの機体が展示され、来場者がロボットの仕組みやサービス内容について説明を受けていた

アニメ吹き替えを自動生成、日本語の声優の演技をそのまま多言語化する「Patra」

 Parakeet株式会社は、音声合成技術を活用したプロダクトを開発するスタートアップだ。代表取締役CEOの中村泰貴氏は東京大学で音声合成を研究していたバックグラウンドを持ち、その技術をもとに複数のプロダクトを手がけている。

Parakeet株式会社 代表取締役 CEO 中村泰貴氏

 今回JIDのブースで紹介していたのは、アニメの吹き替えを自動生成する技術「Patra」だ。日本のアニメを海外向けに展開する場合、英語などの吹き替え制作には通常、1言語あたり約1カ月の制作期間と約200万円のコストがかかるとされており、これが海外配信までのタイムラグの一因にもなっている。

 Patraを使うと、翻訳から吹き替えまでの工程を大幅に短縮できる。30分のアニメであれば約30分で吹き替え動画を生成でき、コストも1分あたり1万円程度、30分尺で約30万円と、従来の10分の1近くに抑えられるという。

 もう一つの大きな特徴が、日本語版の声優の演技をそのまま多言語に反映できる点だ。

 「ドラえもんのようなキャラクターの声で、そのまま英語を話しているような吹き替えを作ることができます。納期の短縮だけでなく、日本の声優の演技力や声色を海外版にそのまま活かせるのが特徴です」と中村氏。

 ブースでは、実際にアニメ動画を英語版に吹き替えたデモも公開していた。キャラクターの声色や演技のニュアンスはそのままに、同じ声優が流ちょうな英語で演技しているように聞こえる仕上がりで、来場者の関心を集めていた。

 対応言語は英語にとどまらない。

 「日本の声優さんがフランス語やヒンディー語で演技しているような吹き替え版も作れます。演技力が高ければ高いほど、そのニュアンスも多言語に反映されます」(中村氏)

 音声生成のプロセスは、日本語音声の文字起こし→生成AIによる翻訳→独自の音声合成技術による多言語音声の生成→キャラクターの声色への変換というパイプラインで構成されている。翻訳の調整や固有名詞の変更ができる編集環境も提供している。

 声の利用にあたっては、声優事務所などからの許諾が必要となる。アニメ制作側がPatraを利用する際に声優側から許諾を取る形を想定しており、「声優さん自身が英語や他言語を話せなくても、自分の声が使われることで収益につながるような形になれば」と中村氏は話す。

 現在は、アニメ配給会社やキャラクターIP企業、YouTuber事務所などとPoCを進めている。

次の「Pitch Arena」出場スタートアップを募集

 スタートアップカンファレンス「B Dash Camp」では、ピッチコンテスト「Pitch Arena」の出場スタートアップを募集している。次回開催は「B Dash Camp 2026 Spring in Sapporo」で、応募締切は2026年3月27日。詳細や応募方法は、公式ページで確認できる。

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