発電所から逆算する核融合。FRCミラーで小型・低コストを狙うLINEA
大学の実験室から始まった、“中性子を出さない”核融合への挑戦
使う場所で実証する──分散電源としての核融合
LINEAの描く核融合は、従来の発電所像とは少し違う。山間部や沿岸部に巨大な発電所を建て、長距離送電で都市部へ電力を送る、といったモデルを前提にしていない。
同社が想定しているのは、工場やデータセンター、研究施設、離島など、電力を使う場所の近くに置く分散型の電源だ。FRCミラー方式の特徴である小型性と安全性は、この使い方と相性がいい。
現在の電力システムでは、発電所から消費地まで電力を送る過程で、一定のロスが生じるとされている。使う場所で発電できれば、そのぶんを丸ごと省ける。加えて、製造業や化学産業など、CO₂排出量の削減が強く求められる産業分野では、電源そのものを置き換えるインパクトも大きい。
「将来の商用実証では、実証パートナーとなる企業と一緒に、その企業が実際に電力を使っている場所で核融合炉を動かしたいと考えています」と野尻氏。
「私たちの核融合炉は、安全で、コンパクトで、比較的低コストにできる可能性があります。そう考えると、使える業種は限定されません。まずは『うちでもできるかも』と思ってもらえたらうれしいですね」
データセンターのように電力需要が大きい施設はもちろん、製造業や化学プラント、遠隔地の拠点なども視野に入る。実証パートナーにとってのメリットも明確だ。もしうまくいけば、「核融合発電でつくった電力を実際に使った最初の企業」になる。脱炭素という文脈でも、その意味は小さくない。
後発だからこその戦略。発電はやらず「炉」に集中する
核融合という分野でLINEAは、明確に「後発」だ。世界にはすでに、巨額の資金を集め、長年研究を続けてきた先行プレイヤーがいる。その現実を、野尻氏は冷静に見ている。
「すべてを自分たちだけでやるのは現実的ではありません。後発だからこそ、すでにある知見や技術は積極的に使わせてもらう。そのほうが、社会実装までの距離を縮められると思っています」
そのひとつが、米国の核融合スタートアップ、TAE Technologiesとの連携だ。TAEはプロトン・ボロン反応に長年取り組んできた数少ない企業のひとつで、プラズマ制御や加熱技術に関する知見を蓄積してきた。LINEAはそうした先行研究を踏まえつつ、自分たちが勝負すべき領域に集中する。
もうひとつ、野尻氏がはっきり線を引いているのが、「発電事業者にはならない」という立ち位置だ。
「私たちは電力を売る会社にはなりません。あくまで、発電所の中核になる“炉”をつくるメーカーでありたい。どこで、誰が使うのかは、電力会社や実証パートナーと一緒に考える領域だと思っています」
巨大な発電事業まで自前で抱え込まず、炉の設計と実証に集中する。使う側とはパートナーとして組む。その割り切りもまた、後発スタートアップとしての戦い方だ。
もちろん、核融合開発の道のりは容易ではない。装置をつくり、実証を重ねるには、時間も資金も、人材も必要になる。
「一番悲しいのは、核融合のいろいろな実験をしてきたけれど、最終的に実用化できませんでした、というデッドエンドです。それでは誰も幸せにならない。私たちは『社会実装するなら、やっぱり中性子を出さない安全な核融合炉が必要だろう』というところから逆算しています。
FRCミラーを使った核融合は、正直かなりチャレンジングです。それでも、本当に商用化を考えるなら『これしかない』と私たちは思っている。そういうことに取り組んでいる会社がある、ということだけでも知ってもらえたらうれしいですね」


































