【JSTnews3月号掲載】NEWS&TOPICS 創発的研究支援事業/研究課題「肺における組織炎症記憶の4次元制御機構の統合的解明」
ぜんそくなどの慢性炎症を引き起こす原因となるたんぱく質を特定
2026年03月17日 12時00分更新
私たちの体の中には、一度侵入したウイルスや細菌を覚えて再感染時に素早く、強力に反応する「記憶T細胞」という免疫細胞があります。この細胞は感染時に体を守る番人のような役割を持ちますが、一方で体内に長くとどまることで、花粉症やぜんそく、潰瘍(かいよう)性大腸炎、関節リウマチといったアレルギーや自己免疫疾患などの慢性炎症を引き起こす主な原因となります。
千葉大学大学院医学研究院の平原潔教授らの研究グループは、免疫細胞の一種である「組織常在性記憶CD4⁺T細胞(CD4+TRM細胞)」が、病原性微生物による感染後の肺や腸などの組織に長期間とどまるメカニズムを解明。炎症を引き起こす分泌たんぱく質である炎症性サイトカインの持続的な生成が、遺伝子の働きを調節するたんぱく質のHLFによって制御されていることを特定しました。また、研究グループは、HLFが欠損したマウスではCD4+TRM細胞の数が著しく減少し、炎症および線維化による組織の硬化が抑制されることを発見。HLFが同細胞の組織への定着に関わる因子と、組織からの移動に関わる因子を直接制御して、組織に長くとどまらせていることを見いだしました。さらに、ヒトのさまざまな慢性炎症性疾患において、HLFに反応する同細胞が病変組織に入り込んでいることを確認しました。
今回の成果は、ぜんそくや自己免疫疾患といった慢性炎症の病態を理解し新たな治療法開発につながるものです。今後、HLFがどのようにして誘導されるのかを明らかにすることで臨床応用や創薬に役立つ可能性があります。

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