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バルセロナで語られたネットワーキング・ソブリンAI・クラウド戦略

ジュニパーを統合したHPEのネリCEO「ネットワーキングでリーダーになる」

2026年02月17日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 福澤/TECH.ASCII.jp

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ソブリンAI・プライベートクラウド戦略 ―― スパコンの実績を活かし成長機会に

 一方でネリ氏は、もうひとつの事業の柱であるAIビジネスで狙う顧客セグメントについて、公共セクター、モデルビルダー、サービスプロバイダー、エンタープライズを挙げた上で、「ソブリンとエンタープライズ」にフォーカスすると明言した。実際に、2025年第3四半期にソブリン関連の受注は250%以上成長し、ソブリンとエンタープライズを合わせるとAI事業の累計受注の50%以上を占めるという。

 HPEにとってソブリンAIは「大きな成長機会」だという。その根拠はHPEのスーパーコンピューティング事業の実績にある。例えば、欧州のスーパーコンピューターのほとんどをHPEが手掛けている。これらスパコンを導入する政府・公共セクターがAIインフラも求めており、そこにはデータを自国内で管理するソブリン要件が伴う。「HPEは公共セクターの信頼を得ており、ソブリン環境でのシステム運用・保守のノウハウも持っている」と強調した。

 「データ主権」への対応については、ネットワークから完全に切り離された「エアギャップ」環境を含む複数の展開オプションを提供しており、「エアギャップ環境でもクラウドのスピードやアジリティを損なわない」と語った。

 また、AI倫理プロセスを社内で確立し、各ソリューションに組み込むAIにも適用しているという。サプライチェーンにおいても、欧州市場向けには欧州内で製造し、人権(強制労働防止)や素材のトレーサビリティ、セキュリティクリアランス環境での製造など、すでに厳格な基準を満たしている。さらに、サプライチェーン全体のデジタルツインを構築し、ハリケーンなどのインシデントをAIでシミュレーションするリスク管理も行っている。

 プライベートクラウド事業では、「HPE Morpheus」を中核に据えた製品ラインが大きく前進した。仮想化市場が変化する中、VMwareに代わるエンタープライズグレードの仮想化基盤としてMorpheusを急速に強化している。「HPE Morpheus VM Essentials」はVMライセンスコストを最大90%削減でき、マルチハイパーバイザー対応とセルフサービスのクラウド利用環境を提供する。

 イベントではMorpheusの多数の新機能が発表された。ジュニパーの技術を活用したゼロトラストのソフトウェア定義ネットワーキング(SDN)、Juniper ApstraのData Center Directorとの統合によるネットワーク自動プロビジョニング、HPE Zerto Softwareとの統合による継続的データ保護、Veeam Data Platform v13との連携によるイメージベースバックアップなどだ。

 現時点で上記のVM Essentialsには、Kubernetesサポートが含まれていないが、段階的なアプローチをとる。「顧客からの最も緊急な要求は、エンタープライズグレードで高可用性を備えた仮想化環境を、より低コストで利用できること」だとネリ氏。KubernetesやコンテナのフルサポートはMorpheus Enterprise Softwareで提供されており、VM Essentialsからのアップグレードパスも用意されている。「この環境では毎月、毎四半期にイノベーションを投入し続ける」と語り、将来的なパッケージング変更の可能性も示唆した。

 最後にHPE Discover Barcelona 2025におけるAIインフラ関連の展示を写真で紹介する。

HPE Private Cloud AI Developer System:HPE Private Cloud AIポートフォリオにおける即時利用可能な開発者向けインフラシステム。

HPE Cray Supercomputing EX254n Compute Blade:1ブレードあたりNVIDIAの GH200を8個、768 GBのHBM3を搭載のコンピュートエンジン。キャビネットあたり最大448個のGH200、8口のHPE Slingshotポートを設置できるという。

HPE Cray Supercomputing GX5000 Compute Blade:HPCとAIインフラを統合したコンピュートエンジン。マルチベンダー、マルチワークロードに対応、100%直接水冷。1ブレードあたり最大2048個のCPU、1アクセラレーテッドブレードあたり最大16個のGPUダイを搭載できる。

HPEは2017年に「HPE Spaceborne Computer (SBC-1)」を国際宇宙ステーションに打ち上げるなど、宇宙領域でのコンピューターの取り組みでも知られる。展示会場には、月面探査におけるエッジコンピューティングとAIの活用で戦略的提携をしたVenturi Astrolab社の月面ローバーも展示された。

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