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最先端の技術ではなく、人の熱量がディープテックを動かす――TechGALA Japan 2026

TechGALA Japan 2026

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ディープテックVCが語る「下請けではなく、対等なパートナーへ」

 Day3、STATION Aiで開催された「研究開発型ディープテック・スタートアップ創業のリアルとVCが語る成長戦略」では、モデレーターのCIC Institute Directorの名倉勝氏のもと創業期の苦悩と成長への道筋が赤裸々に語られた。

 株式会社INOMER代表取締役の桂典史氏は、アシストスーツの開発において、当初の「自動制御」から、自身の技術に合わせて調整したいという現場の理学療法士の声を反映してあえて「マニュアル操作」へピボット(路線変更)した経緯を紹介した。桂氏は「事業計画は現場の反応を見て毎日変わるものであり、悩みながら修正を繰り返している」と述べ、机上の空論ではない、現場起点の開発姿勢を示した。

株式会社INOMER代表取締役 桂典史氏

 名古屋大学発スタートアップである株式会社IZANA代表取締役の大前緩奈氏は、超高感度磁気センサーの社会実装に挑んでいる。大前氏は「大学の研究における『理想』と、ビジネスにおける『ニーズ』の間には大きなギャップがある」と、アカデミア発ベンチャー特有の苦悩を吐露した。また、研究開発には長い時間が必要であるにもかかわらず、VCからの資金調達によって短期的な出口を求められることへのジレンマにも触れ、公的資金などを活用しながら「自分たちのタイムライン」で成長を目指す重要性を強調した。

株式会社IZANA 代表取締役 大前緩奈氏

 これに対し、数多くの大学発ベンチャーを支援してきたQBキャピタル合同会社代表パートナーの坂本剛氏は、VCの立場から率直な意見を述べた。坂本氏は「VCは指数関数的な成長(Jカーブ)を求めるビジネスモデルだが、すべての企業がそれに合わせる必要はない」と断言。「自分たちの資金で着実に成長するブートストラップ型も正解であり、無理にVCから調達する必要はない」と、スタートアップ側の自律的な資金戦略を促した。

QBキャピタル合同会社 代表パートナー 坂本剛氏

 また、坂本氏は地域エコシステムの課題として、大企業側がスタートアップを「下請け」のように扱う風潮が一部に残っていることを指摘し、対等なパートナーとしての「リスペクト」が不可欠であると警鐘を鳴らした。

技術を超える「熱量」と「人間力」

 両セッションを通じて浮き彫りになったのは、ディープテックという高度な「技術」を扱う領域であっても、最終的に成否を分けるのは「人」であり「マインドセット」であるという部分だ。 坂本氏はセッションの締めくくりに、「経験豊富なプロ経営者も重要だが、ディープテックで成功しているのは、経験値に関係なく、熱い「ミッション」、「ビジョン」、「バリュー」を持ち、周囲を巻き込んでいく『熱量』のある創業者だ」と語った。技術の優位性以上に、その技術で世界をどう変えたいかという強い意志が、支援者や資金を引き寄せる引力となる。

 このメッセージは、TechGALA Japan 2026のクロージングで総合プロデューサーの奥田浩美氏が語った言葉とも共通していた。奥田氏は、今回のイベントを象徴するキーワードの筆頭に「熱量」を挙げた。「単に燃え上がるだけでなく、参加者一人ひとりの中に静かに火がつき、自らの『問い』が立つような熱量を感じた」と振り返った。

株式会社ウィズグループ 代表取締役 奥田浩美氏(TechGALA Japan 2026 総合プロデューサー)

 AIやデジタル技術が進化し、効率化や最適化が進む現代において、あえて泥臭い「現場」に足を運び、異なるプロトコルを持つ他者と「ウェット」に関わり、非合理に見えるほどの「情熱」を持って未来を語る。TechGALA Japan 2026は、最先端の技術以上に、そうした人間の根源的なエネルギーを確認し合う場であったと言える。「未踏市場」を切り拓くのは、AIでもデータでもなく、最終的には「人」の意志であると言える。

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