できる人に頼むBIはもう限界。非エンジニア向けに進化した「Squadbase」
生成AIで「分析できる人」を増やす。現場の仮説検証を回すためのAIネイティブBI
株式会社Queueは、AIネイティブなデータ分析基盤「Squadbase」の機能アップデートを2025年11月に実施した。生成AIを前提に設計された同サービスは、非エンジニアのビジネスユーザーでも自然言語だけでデータ分析や社内向けアプリを構築できる点が特徴だ。
「Morph」から「Squadbase」へ。プロダクトの再定義
Queueはもともと、エンジニアがデータ分析結果を安全に共有するための基盤として「Morph」を開発していた。その後、プロダクトの方向性を見直し、2025年5月にサービス名を「Squadbase」へとリブランディング。分析結果の共有基盤として培ってきた技術をベースに、より幅広い業務アプリケーションへと適用範囲を広げてきた。
転機はClaudeの進化。「非エンジニアでも使えるのでは?」
転機となったのが、リリース直後の2025年5月から6月にかけて起きた、生成AI、とりわけClaudeの性能向上だった。
「当時のSquadbaseは、エンジニアの業務効率を10倍にするツールとして設計していました。ただ、この精度で自然言語を理解できるなら、非エンジニアのビジネスユーザーでも使えるのではないか、という仮説が浮かんだんです」(同社代表の柴田直人氏)
この気づきをきっかけに、Queueはプロダクトの主軸をエンジニア向けから非エンジニア向けへと大きく切り替えていった。
仮説を確かめるため、いくつかの企業に実際に使ってもらったところ、想定以上の手応えがあったという。
「自分で社内アプリが作れることに加えて、ほかの“バイブコーディング”系ツールと違い、認証を気にしなくていい。業務用のツールをどんどん作っても、データが外に漏洩する心配がない点を評価してもらえました。リテラシーが高くなくても使える、という声も多かったですね」(柴田氏)
こうした反応を受け、Queueが明確にターゲットとして定めたのが、コードを書いたことはないが、業務でデータを扱う必要がある“ごく普通のビジネスユーザー”だ。日々の集計や分析に時間を取られながらも、自分でインサイトを引き出したい──Squadbaseは、そうしたユーザーが自然な会話だけでデータ分析できる環境を目指している。
BIツールの課題を「AIネイティブ設計」で解く
従来のBIツールでは、操作を覚えた一部の担当者に分析が集中しがちで、実際に使う人は限られているにもかかわらず、閲覧や共有のために多くのユーザー分のライセンス費用を支払わなければならないという課題があった。Squadbaseは、UIの裏側をコードとしてAIが読み書きする「AIネイティブ」な設計にすることで、自然な会話だけで分析を進められる環境を実現している。
今回のアップデートでは、MCPサーバーを活用したデータ探索機能や、チャット上でデータとUIを一体的に操作できる体験を強化。SnowflakeやBigQueryといったデータウェアハウスとの連携も改善された。データソースを接続すれば、AIがエラーを補正しながら分析を進め、インサイトまで提示する点が評価されているという。
エンタープライズで高まる反響と現場ニーズ
アップデート後、とりわけ反響が大きいのがエンタープライズ企業だという。多くの企業がデータウェアハウスなどに大量のデータを蓄積している一方で、それを十分に活かしきれていなかった。
既存のBIツールに対しては、「操作が難しい」「一部の人しか使えない」といった不満が想定以上に多かったという。一方で、Excelでは扱えるデータ量に限界があり、処理が重くなってPCが固まることも珍しくない。結果として、「できる人にお願いする」構図になりがちだが、そうした人材も限られている。
「現場のビジネス部門は、とにかく仮説検証を回したい。でも、エンジニア側に“どのデータが必要なのか”をうまく伝えられず、そこでコミュニケーションが止まってしまうケースが多い。まずはビジネス側でSquadbaseを使って分析してみると、会話がスムーズに進みやすくなります」(柴田氏)
実際、Squadbaseを使ってビジネスチームがラフに分析を行い、その結果をもとにエンジニアと議論することで、データ活用のスピードが上がったという声も出ている。バイブコーディング系のツールはまだビジネス向けの選択肢が少ないこともあり、「初めて触ったが、自分でできて面白い」という反応が多いという。
キラーはSnowflake/BigQuery連携
現在は、月に数件ペースでエンタープライズ企業からの相談が入り、営業チームなどでの利用が進み始めている。「これまでのプロダクトに比べて、かなりとっつきやすくなったという手応えはあります」と柴田氏は語る。
現時点でのキラーユースケースは、SnowflakeやBigQueryにデータを集約している企業だ。従来はデータベースの知識がなければ取り出せなかったデータも、Squadbaseでは自然言語で指示するだけで意図した分析結果を得られる。ウェブサービスとして提供していることから海外ユーザーも増えており、現在の課金ユーザー数は日本と海外がほぼ同程度だという。
生成AIの進化は、DXツールやITコンサルティングサービスにとって、既存の価値を揺さぶる「脅威」として語られることも多い。Squadbaseの事例は、これまで専門家向けだった領域がコモディティ化し、ユーザー層が一気に広がることで市場そのものが拡大する可能性を示している。
高度なデータ分析は、もはや一部のスキル保有者だけのものではない。生成AIを前提に再設計されたツールが、現場の仮説検証を加速させている。


























