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特許を“5歳児でもわかる”ようにするとどうなる? 眠る技術を動かす「IPマーケット」の知財流通構想

海外起業の経験から生まれた、特許を「売る・買う・使う」ための新しい仕組み

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このスタートアップに聞きたい

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 日本は世界有数の特許大国だ。国際特許出願件数ではトップ3に入り、中国・米国と並ぶ存在でもある。にもかかわらず、日本経済は伸び悩んでいる。その一因として、特許という資産を事業や成長につなげきれていない現状がある。

 特許庁をはじめ、弁理士会などが中心となって知財活用の促進施策や各種サービスを進めてきたものの、状況が大きく変わったとは言い難い。知財は専門家や技術者に委ねられ、経営や事業の文脈からは距離を置かれがちだ。

 こうした“活用されない知財”という課題に、別の角度から切り込もうとしているスタートアップが株式会社白紙とロックだ。

 同社は、特許情報をイラストや4コマ漫画で「5歳児でもわかるように」翻訳し、特許を「売る・買う・使う」ためのプラットフォーム「IPマーケット」を運営するスタートアップである。2025年4月の本格ローンチから数カ月で、すでに複数のマッチングが生まれているという。

 同サービスが生まれた背景、知財業界の構造的な課題、そして日本の産業全体を変えるかもしれない知財の流通構想について、同社代表取締役で発明家の渡部一成氏に話を伺った。

知財プラットフォーム「IPマーケット」。特許情報をイラストや4コマ漫画で子どもでもわかるように翻訳することで、休眠特許の活用を促進

海外起業で知った「特許は“取るもの”ではなく“使うもの”」

 渡部氏がこの問題意識を持つようになった背景には、自身の起業経験がある。渡部氏は以前、タイ・バンコクでスタートアップを経営していた。当時、日本のスタートアップでは特許を強く意識する文化があまりなかったが、海外では事情が異なったという。

 「海外のスタートアップは、プロダクト開発と特許の取得が並行して進むのが一般的でした。これをやるなら特許を取っておこう、という感覚です」

 東南アジアでは自国の権利が弱かったり、IT系の特許が取りにくい事情があり、米国・中国・日本で権利化することが実務上当たり前となっていた。その一環として、日本での特許申請を行っていたという。

 その後、決済処理システムに関する特許は事業のEXITとともに譲渡され、2018年12月にGMOペイメントゲートウェイ株式会社へ引き継がれた。この経験から、渡部氏は「特許の価値がどう算出され、どのようにお金に変わるのか」を実際に理解することができたと話す。

 しかし帰国すると、日本では特許を「取得するところ」で止まってしまい、マネタイズまで踏み込むケースがほとんどないことに気づく。

 「海外でプロダクト開発や権利化の実務を経験し、その感覚が日本では共有されていないことにギャップを感じました」

 その違和感が、白紙とロックの事業構想の出発点になった。

弁理士が創業メンバーに。知財業界の「活用されない理由」

 現在の白紙とロックのメンバーは4名。そのうち取締役の杉浦健文氏は弁理士だ。彼は渡部氏の幼馴染であり、タイでの活動時代から日本での特許申請を手伝っており、現在も事業の中核を担っている。

 渡部氏は杉浦氏とのやり取りを通じ、日本の知財業界が抱える構造的な課題を把握していった。

 「弁理士は依頼された技術を特許化するところまでが仕事で、その先の活用には踏み込まない。業界自体も古い慣習が多く、知財の活用フェーズが弱いという現状があります」

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