ロボットアーム、リチウム電池の安全運搬ボックス、子どもの多様な体験機会提供など 埼玉「渋沢MIX」が育てる社会課題解決型スタートアップ
埼玉発スタートアップ支援プログラム「渋沢MIXスタートアップ創出・成長支援プログラム」中間成果発表会レポート
提供: 埼玉県
1 2
曖昧な「ここ」や「あれ」まで扱える音声タスク支援
LOOVIC株式会社は、現場で教える人が発する15秒程度の音声を録音し、そのまま無人で作業者に伴走支援できる「タスク支援」ナビガイドを提供。AIがタグ付けできない「ここ」、「あれ」といった曖昧な指示も簡単に記録、共有できる特許技術が強みだ。大手がアプローチしづらい中小零細企業の現場の属人化解消と、技能継承・教育時に発生する伴走支援人件費の削減を目指している。
質疑応答では、「シンプルな作業は音声で伝えられるが、“職人技のコツ”のような言語化しづらい部分はどのようにカバーするのか」という質問があった。山中氏は、「タグ付けしづらい曖昧な指示を、指示した人と同じ空間で再生できる点こそ当社のイノベーションである」と回答した。
伝統工芸×ファッションの高付加価値ブランド
北迫秀明氏は、フランスで服飾学を修了したファッションデザイナー。ファストファッションに疲弊した消費者に向け、埼玉県の伝統工芸と現代ファッションを掛け合わせた高付加価値製品の企画を提案した。現在は伝統工芸への「入り口」として、富裕層向け店舗との協議を進めつつ、2000円程度のハンカチ商品に注力しているとのこと。
質疑応答では「なぜハンカチなのか」、「どれほど付加価値をつけられるか」といった質問があった。北迫氏は、中川政七商店やフェイラーなどの競合を挙げつつ、「自身のブランドは伝統工芸のパートナーと一緒に商品開発する点が特徴で、歴史やストーリーを価値として提供する」と説明。制作工程の動画化や「クラフトツーリズム」体験を通じて、量産品とは異なる価値を伝えていきたいと語った。
自治体向け「鏡像AR」による自動接客ソリューション
株式会社peiliは、 大手ガラスメーカーのAGC株式会社からスピンアウトしたディープテック企業。ミラー型ディスプレイ「mirrafy(ミラフィ)」と映像ロボット技術を組み合わせ、自治体向けに、自動接客と遠隔有人接客のシームレス切り替えを可能にする鏡像ARソリューションを提供している。自治体職員の減少やカスタマーハラスメントといった課題に対応するサービスだ。
質疑応答では「自治体以外にも人手不足やカスハラはあるのになぜ自治体特化なのか」との質問があった。高橋氏は、「一般の小売や病院では効率性が重視されるが、自治体では、高齢者を中心に親近感と丁寧さといった情緒的なコミュニケーションが求められるため」と説明。Peiliの技術がこのニーズに適合するため、まず自治体から取り組んでいると語った。
子連れ外食の不安をなくす店舗検索サービス
石岡美羽氏は、6歳までの子どもを持つ家族向けに、子連れ歓迎の飲食店を検索、予約できるサービス「Mamity」を提案。キッズチェアの有無、ベビーカー入店可否、授乳室の有無など、既存予約サイトでは拾いきれない、子連れに本当に必要な情報を一元化し、外食時のストレスの低減を目指す。将来的には、保育や地域コミュニティとの連携も視野に入れているとのこと。
質疑応答では、将来的にどのようなデータ拡張を考えているかが問われ、石岡氏は「埼玉県は車移動が多いので駐車場台数の情報は需要が高い」と回答した。
外反母趾の悩みに応える「smileee sneakers」
大村彩美氏は、 日本人女性の3人にひとりが悩む外反母趾の解決を目指し、ハイテクスニーカー「smileee sneakers」を提案。内部をサンダル構造とすることで外反母趾への負担を軽減し、足型計測アプリと3Dプリンターによるオーダーメイドインソールを組み合わせて製造する。ハイテクスニーカーというトレンド性が競合優位性につながるとアピールした。
質疑応答では医学的検証の重要性が指摘された。大村氏は、専門家との連携を進めていると回答。すでに埼玉県立大学に技術支援を依頼しており、このピッチの翌週には理学療法士と具体的に協議する予定だと述べた。
シード期の発表については個別講評こそなかったものの、評価員の池森氏は「アグレッシブなパッションとユニークな課題感に感動した」と総括。「短期間で課題を高い解像度で捉えている点が素晴らしい」と評価した。
一方で、「市場拡大の方法や競争優位性の構築など、次のステップがまだ見えていない参加者もいた」と課題も指摘。また、選出されなかった参加者の中にも、「実直で、ビジネスとして魅力的な事業が多くあった」とし、「選考は相性やテーマ性の影響もあるため、フラストレーションは割り切り、ぜひ前に進んでほしい」と激励した。
デモデイに向けて求められる“もう一段の深掘り”
全体講評として、評価員からは「今回の中間発表で得られた学びを活かし、デモデイに向けてさらなる事業のブラッシュアップをしてほしい」というメッセージが強調された。
デモデイに向けたアドバイスとして、小林氏は、「限られた時間の中で、自社のビジネス・サービスの“良さ”や“質的価値”を十分に伝えきれていないケースがあった」と指摘。ピッチの内容の改善とともに、「顧客の課題」や「プロダクトマーケットフィット(PMF)」といった事業の本質をもう一歩掘り下げて明確にすることが今後の成長に不可欠であると述べた。
3月6日、7日に最終成果発表会(デモデイ)開催
運営事務局からは、最終登壇者に選出されなかった参加者も含め、本プログラムの支援は2026年3月まで継続される点が改めて案内された。今回選出された10社(者)は、VCや専門家による個別メンタリング会や、著名起業家との交流会を通じ、デモデイに向けて事業計画をさらに磨き込んでいく。
最終成果発表会(デモデイ)は、2026年3月6日(金)、7日(土)の2日間にわたり開催される。最終審査に進めなかった参加者も、ブース出展という形でデモデイに参加できる予定であり、事業の成長やネットワーク形成に向けた継続的なチャンスが提供される。
デモデイの詳細や参加申込については、2026年1月中旬に「渋沢MIX」および「渋沢MIXスタートアップ創出・成長支援プログラム(S4)」のサイトに掲載される予定だ。
1 2



































