このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

AIエージェントに選択肢 「AWS re:Invent 2025」レポート 第7回

これ1本でわかる!re:Invent 2025の基調講演ハイライト

200万人が視聴し、6万人がラスベガスに集ったre:Invent 2025 4つの基調講演で見えたAWSの進む道

2025年12月12日 07時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 2025年12月1日~5日、ラスベガスにおいてAmazon Web Servicesはフラッグシップイベント「AWS re:Invent 2025」が開催した。まもなく創業20年を迎える最大手のクラウドプロバイダーが、AI時代を迎えて、どこへ舵を切るのか? 4つの基調講演のハイライトをお伝えする。

AWSの進む道を示した4つの基調講演のハイライトをレポート

約20兆円のビジネスへ AWSはAI時代も堅調に成長中

 今年で14回目となるAWS re:Invent。クラウドサービスをリードしてきたAWSが新サービスを一挙に発表するフラグシップイベントだけに、イベントの規模もすさまじい。当初は基調講演やEXPO会場のあるサンズ・コンベンションホールと隣接ホテルで行なわれていたが、近年は周辺にある複数のホテルも併用するようになった。今年も6万人以上が参加し、公式のライブストリームやFORTNITE経由も含め、約200万人がオンライン視聴したという。この規模がまずニュースだ。

 基調講演は全部で4つ用意されており、メインとなる2日目の基調講演ではAWS CEO マット・ガーマン氏が登壇。AWSが「ビルダー」と呼ぶ開発者やエンジニアに向けて、ビジネス概況と新サービスを披露した。

2日目の基調講演に登壇したAWS CEOのマット・ガーマン氏

 ガーマン氏は、AWSは今年も前年比20%の成長を遂げ、1320億ドル(約20兆円)規模のビジネスに成長したことをアピール。Amazon Bedrockはすでに10万社以上が利用し、基盤モデルを選択できる自由を享受している。今回のテーマであるAIエージェントに関しても、Amazon Bedrock AgentCore SDKは数ヶ月で200万回以上のダウンロードに上ったという。

1320億ドルのビジネスに成長したAWS

 AWSというと、OpenAIを取り込むMicrosoftやGeminiに注力するGoogle Cloudに比べて、AI分野で後塵を拝しているイメージがある。しかし、前年比20%を超える成長の背景には、AIを利用するためのクラウドインフラとしてAWSがきちんと選ばれているという点が挙げられる。

 ガーマン氏はAIがAIエージェントが単なる技術的な興味から、真の価値をもたらす存在へと進化する転換点を迎えたことで、多くの組織でさまざまな発明が生まれるとアピールする。その上で、本当に価値をもたらすエージェントを利用するのに必要な要素として、AIインフラ、推論プラットフォーム、組織内でのデータ活用、エージェント開発ツールの4つのサービスを紹介した(関連記事:カスタムシリコンがAIの未来を切り拓く AWSが自社開発チップの好調ぶりをアピール)。

 また、ソニー、アドビ、WRITERなどのゲストがユーザー目線でAIエージェントのメリットやAWSとのパートナーシップをアピール。「KANDO(感動)」という日本語を使い、エンタテイメント分野でのAIの活用について披露したソニー小寺剛CDOの講演は、日本人にとっては特に胸に響くものがあった。

あらゆるレガシーをカバーするサービスの底上げ

 ガーマン氏の講演のポイントとしては、推論ワークロードもカバーするようになったTrainiumの好調ぶり、OpenAIやGoogleのオープンウェイトモデルを含め、Amazon Bedrockでさまざまなモデルを選択できる差別化戦略(関連記事:3強LLMの時代、Amazon BedrockはなぜマニアックなAIの品揃えにこだわるのか?)、自律的に動作するAIエージェントのためにさまざまな開発ツールなどが挙げられる。

OpenAIのオープンウェイトモデルもAWS上で選択できる

 AIを含めたさまざまなワークロードをカバーする屋台骨のグローバルインフラに関しても披露された。直近で立ち上げられたリージョンは38、AZ(アベイラビリティゾーン)は120にのぼる。また、データセンターは3.8GWsに上る容量を追加し、光ファイバーケーブルは900万キロを超えるという。

 ここまでAIエージェント前提でさまざまな発表を行なってきたガーマン氏だが、ラスト10分でノンAI系のイノベーションも多数披露し、長年のAWSユーザーからも熱い喝采を浴びた(関連記事:AWSガーマンCEOが10分で怒濤の新発表25連発 LTチャレンジにレガシーAWSファンも大歓声)。Amazon S3のオブジェクトの最大サイズ拡張やベクターデータへの対応強化、Amazon RDSの大容量化やコスト削減対応、なにより最大35%のコスト最適化を実現するDatabase Saving Plansなどは聴衆から大きな拍手が起こった。

10分で25本の新発表を披露しきったガーマン氏(写真提供:松下享平氏)

 さらに「AWS Transform」も強化し、メインフレームやWindows、VMwareなどのレガシーマイグレーションにおいてもAIエージェントを積極的に活用していく点をアピールした(関連記事:自社独自のレガシーシステムの移行・マイグレーションが容易に AWS Transformが強化)。最新AIの利活用を可能な環境に向け、あらゆるレガシーをカバーするサービスのアピールもガーマン氏の基調講演のポイントだった。

AIエージェントの開発に踏み込んだ3日の基調講演

 3日目の基調講演は、博士号を持つスワミ・シバスブラマニアン氏がAIサービスとその設計思想を踏み込んで紹介する(関連記事:教えて、ほめて、注意して AWSが考える「本番に強いAIエージェントの育て方」)。

AWS Agentic AI VPのスワミ・シバスブラマニアン氏

 冒頭、シバスブラマイアン氏が語ったのは、AIエージェントが初めてプログラミングしたときに味わったのと同じ万能感や自由をもたらせてくれるという感想だ。システムを構築するために言語の構文を覚える必要がなくなり、自然言語でやりたいことを記述すれば、目標と計画を作成し、実行まで進んでくれる。これは確かに歴史上初めての画期的な出来事と言える。

 その後、シバスブラマイアン氏の講演は、エージェントの定義や必要な要素、PoCから脱出するためのモデルの効率化、複雑性やコストの課題などのトピックについて掘り下げる。難解になりがちなAIの説明を、わかりやすいたとえ話で表現してくれるシバスブラマニアン氏の話はいつも学びにつながる。エージェントに必要なコンテキストを補う「Amazon AgentCore Memory epsodic functionality」や強化学習をトレーニングジムに例えた「Amazon Nova Act」の説明は特に秀逸だった。

報酬とペナルティで鍛える強化学習はまさにジム

 シバスブラマニアン氏はAIエージェントをそもそも信用できるのか? AIエージェントと人間との共同作業とはどんなものか?といった倫理や文化に関わる興味深い話題にまで触れつつ、アイデアを自由に構築できる未来をいっしょに築いていこうと聴衆に訴えた。AIエージェントに深い知見と選択肢の幅をアピールしたいのが、シバスブラマニアン氏の基調講演の役割だったと言える。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事

アクセスランキング

  1. 1位

    TECH

    訓練だとわかっていても「緊張で脇汗をかいた」 LINEヤフー、初のランサムウェア訓練からの学び

  2. 2位

    ITトピック

    若手が言わない“本音の退職理由”上位は/「データ停止は景気後退よりも企業の脅威」6割/クライアントに告げずAI活用するフリーランス、ほか

  3. 3位

    ビジネス・開発

    最悪のシナリオは「フィジカルAI」による基幹産業の衰退 日本の勝ち筋は、“同期技術”と“ドメイン知識”

  4. 4位

    Team Leaders

    ファイル名が命名規則に合っているかの自動チェック、Power Automateのフローで実現しよう

  5. 5位

    TECH

    “GPUなし”ノートPCで動くLLMで、ローカルAIエージェントを自作する

  6. 6位

    TECH

    糖尿病超早期を採血なしで検出、予防へ! 代謝や臓器のつながりに着目した予防法開発

  7. 7位

    ビジネス

    廃校がAIの心臓部に!? 地方の遊休施設を「AIデータセンター」に生まれ変わらせるハイレゾの挑戦がアツいぞ

  8. 8位

    データセンター

    液冷技術の最先端が集うイノベーションラボ「DRIL」、印西のデータセンターに現わる

  9. 9位

    TECH

    業界横断で“サイバー攻撃から供給網を死守” NTT・アサヒ・トライアルらが「流通ISAC」始動

  10. 10位

    Team Leaders

    バックオフィス業務もAIに“丸投げ” マネーフォワードが「Cowork」機能を2026年7月に投入へ

集計期間:
2026年04月08日~2026年04月14日
  • 角川アスキー総合研究所