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【AI×キノコ】植物工場は赤字でも、きのこ工場だけが儲かってる理由

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“赤字”続きの植物工場、その中で黒字なのは……

 植物工場は大半が赤字と言われている。天候の影響を受けることなく、レタスやトマトをLEDで育てれば効率がよさそうだが、実際には照明や空調にかかる電気代が莫大で、採算が合わない。

 そんななか、唯一黒字を出しているのがきのこ工場だ。大手企業のホクト株式会社やユキグニファクトリー株式会社(旧雪国まいたけ)などは昭和の時代から工場での量産に成功してきた。きのこは暗所で育ち、光を必要としない。温湿度を一定に保てば安定生産が可能で、工場栽培との相性がいい。農業DXに手を出すなら、まずはきのこから始めるのが低リスクといえる。

「きゅうりトマトなすび」なのに育てるのは「シイタケ」

 農業の“完全デジタルツイン化”に挑む東京大学発のAIスタートアップ、株式会社きゅうりトマトなすび(以下、CTE)が最初に選んだのも「シイタケ」。さすが東大生、堅実だ。

 黒字ならDXしなくてもいいのでは?と思いきや、そう単純ではないらしい。きのこ工場は昭和の時代に成功しすぎたがゆえに、設備も工程も“当時のまま”止まっている。ベテランの目利きに依存した属人的な運用が続き、後継者不足が進んだ今では生産を維持するだけでも難しい。じつは、こうした成功したまま時が止っている業界ほどDXが必要なのだ。

 CTEは、農業特化型AIエージェント「ノウノウ」シリーズを開発している。そのひとつ「ノウノウビジョン」では、SLAM自律走行ロボットがほ場を撮影し、シイタケの成長を3D解析する。芽の体積や傘と軸の比率などを自動で数値化し、目かきや収穫といった介入のタイミングをAIが教えてくれる仕組みだ。

“勘と経験”を数値に変える

 これまで農家が「見れば分かる」と感覚的に判断してきた作業を、AIがデータで再現する。ちなみに、脱サラしてキノコ農家に挑戦する人が失敗する原因は、温湿度管理の難しさにあるという。AIが生育状態を定量化し、環境を最適に保つサポートを行えば、こうした初期リスクも大きく減らせる。

 岩手の実証実験では、時系列での生育変化を定量化することに成功。傘と軸の体積比から最適収穫時期を導き出す独自の3D解析パイプラインはすでに特許出願中だ。

産地まるごとAI化へ

 CTEは個々の農家だけでなく、JAや自治体とも連携しながら、産地全体のデジタルツイン化を進めている。記録、計画、予測、助言を一貫して支援し、失敗の削減とともに、後継者不足に悩むキノコ産業への新規就農を後押しするのが狙いだ。

“儲かる農業AI”はきのこから始まる

 植物工場の難しさを知るからこそ、CTEはあえてシイタケを選んだ。もちろん、シイタケを足がかりに他の作物への展開も視野に入れている。目指すのは、AIが農場を見守る時代。その第一歩が、傘と軸のバランスを見極める“ノウノウの目”なのだ。

スタートアップリーグとは?

「スタートアップリーグ」は、競い合いながらも共に成長する“競争と共創”の場を提供する支援プログラム。単発で終わらせず、継続的な伴走支援によってスタートアップの成長を後押しすることを目指し、2023年度に始動した。スポーツリーグをモデルに、世界で活躍できる日本発スタートアップの創出を後押ししている。
https://startupleague.jp/

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