このページの本文へ

科学技術振興機構の広報誌「JSTnews」 第55回

【JSTnews12月号掲載】創発的研究支援事業(FOREST) 研究課題「無給電式バイポーラ電解反応システムの構築」

環境モニタリングへの応用も期待される、“液体の流れで生じる電位差”を利用した電気化学発光法を開発

2025年12月12日 12時00分更新

文● 中條将典

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 電気エネルギーによる化学反応で標的物質を発光させ、光量を検出して標的物質の量を測定する電気化学発光法は、高感度でノイズが少ないことから、優れた検体分析手法として知られています。近年では装置の小型化・ポータブル化が進んでいますが、通常は化学反応を起こすための電源が必要不可欠です。

 東京科学大学物質理工学院の稲木信介教授らの研究チームは、液体を固体面に接触させ、流す時に上流と下流に発生する電位差を利用することで、電源装置不要の電気化学発光法を開発しました。研究ではまず、樹脂製の多孔質材料を充填(じゅうてん)した電気化学セルを作製。低濃度の電解質を含むアセトニトリルと水との混合溶液をポンプで送り込むことで、流路の両端に約10ボルトの電位差を発生させました。さらに、この手法を用いて、溶液中のアミン化合物を検出することに成功。アミン化合物が存在すると発光するベンゾチアジアゾール‐トリフェニルアミン化合物をセルの電極に固定し、溶液に含まれるアミン化合物を検出できることを確認しました。また、条件検討の結果、蒸留水や水道水に微量に含まれる脂肪族アミン化合物も検出できることがわかりました。

電源を必要としない無給電電気化学反応に用いる電気化学セルの構成。電解液を流路に送り込んだ際に上流と下流のバイポーラ電極間に発生する電位差を利用して酸化還元反応を起こし、標的物質を発光させる。

 稲木教授らは以前から電源装置を用いない電気化学反応に関する研究をしており、今回の研究は、その応用の1つです。河川や配水管の流れの力を利用してアミン化合物などの有害物質を検出するなど、環境モニタリングや水質検査の分野への応用が考えられます。

カテゴリートップへ

この連載の記事

アクセスランキング

  1. 1位

    ITトピック

    “VMwareショック”余波、IaaSベンダー撤退も/本音は「拒否したい」時間外の業務連絡/IT部門のデータメンテ疲れの声、ほか

  2. 2位

    データセンター

    首都圏のデータセンター枯渇、電力コストの高騰、エンジニア不足 課題から考える最新データセンター選び

  3. 3位

    デジタル

    なぜ大企業でkintoneの導入が増えているのか? DX推進と「脱・属人化」を実現するエンプラパートナーに聞いた

  4. 4位

    TECH

    【提言】「VPNの安全性」が通用しない時代 ZTNAへの困難な移行を経営層はサポートせよ

  5. 5位

    TECH

    自律的に動けないメンバーを持つくらいなら、一人で全部やったほうが幸せに働ける「管理職の憂鬱」に関する調査

  6. 6位

    データセンター

    「NVIDIA Blackwell GPU」約1100基搭載のAIインフラが稼働 さくらインターネットが石狩DC内で

  7. 7位

    ビジネス

    行政DXを超え、デジタルで市民の力を引き出す“地域社会DX”へ 兵庫県豊岡市の挑戦

  8. 8位

    デジタル

    kintoneの大企業売上は間もなく3割に サイボウズはグローバルで“戦える”新サービスも開発中

  9. 9位

    デジタル

    地方テレビ局が生成AIで記事作成を爆速に でもその裏で“10倍増えた”業務とは?

  10. 10位

    TECH

    IT人材の約半数が「静かな退職」 正当に評価されないし心身の健康を優先

集計期間:
2026年02月26日~2026年03月04日
  • 角川アスキー総合研究所