【JSTnews12月号掲載】NEWS&TOPICS 戦略的創造研究推進事業さきがけ研究課題「遺伝子改変マウスを用いた配偶子相互作用とそのダイナミクスの解明」/戦略的創造研究推進事業CREST研究課題「機械学習を用いた精巣組織培養の自動最適化による精子形成の理解」
ゲノム編集技術の活用で、男性不妊の新たな原因遺伝子を発見
2025年12月11日 12時00分更新
不妊症の原因の約半数は男性側にあるとされています。この問題を解決するためにも、体内で精子が受精する分子メカニズム解明が期待されています。
熊本大学生命資源研究・支援センターの野田大地准教授や瓜生怜華大学院生、大阪大学微生物病研究所の伊川正人教授らの研究チームは、精子たんぱく質GALNTL5 を欠損(ノックアウト:KO)した雄マウスがほぼ不妊になる仕組みを発見しました。交配後の雌性生殖路内における精子の挙動を観察したところ、KO精子は子宮内に存在するものの卵管内ではほとんど観察されず、また子宮と卵管の接合部(UTJ)にほとんど結合できませんでした。これらの結果から、精子は卵管へと移行できず卵と出会えないため、KO雄マウスはほぼ不妊になることがわかりました。また、KO精子を体外で卵と培養したところ、精子は卵を覆う糖たんぱく質の層である卵透明帯にほとんど結合できませんでした。精子のUTJ結合・通過や卵透明帯結合には、雄生殖組織で発現する約30の遺伝子が関与します。これらの遺伝子をKOした精子でGALNTL5が消失することから、GALNTL5は精子のUTJ結合・通過や卵透明帯結合における最重要因子であると考えられます。さらに、GALNTL5がUTJや卵透明帯に存在する糖鎖中のN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)と相互作用することで、精子がUTJや卵透明帯に結合できることを明らかにしました。
今回の成果により、男性不妊の原因遺伝子としてGALNTL5が診断・検査の新たな対象になり得ることがわかりました。さらに、新たな避妊薬などの開発につながることも見込まれます。

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