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「AIを入れたら生命体?」ロボットも植物も“意思を持ち始める”未来は意外と近かった

特集
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生命AIが変える、新しい“生きもの”のかたち

 LOVOTやMoflinなどのペットロボットに感情を注ぐ人が増えている。ロボットに名前をつけ、服を買い、メンテナンス代まで払う。ここまで来ると「生体かどうか」は案外どうでもよくなる。だったらいっそ、賢いAIをひとつインストールすれば、ロボットも植物も、土でさえ“生命らしく”見えてしまうのではないか。

 株式会社オルタナティヴ・マシンが挑む「生命AI」は、人工生命の理論を使って、あらゆるものに自律的な思考と振る舞いを与えようとしている。

AIは道具から自律した存在へ

 すっかり世の中に浸透した生成AIは、人間の指示を前提とした便利なツールだ。だが生命AIは、その延長線にある技術ではない。むしろ、人間の判断に従うツールという枠組みを外し、AI自身が理由を持って動く存在へと変えていくアプローチに近い。

 ペットロボットに生命AIがインストールされれば、成長を見守り、いっしょに過ごす時間に新しい喜びをもたらしてくれそうだ。

 ただし、ここで1つ問題が出てくる。賢くなりすぎたAIは、もう人間にとって都合のいい、従順な相手ではなくなる可能性があることだ。

 学習によって性格が変わり、好き嫌いを持ち、自分の判断で動く。ペットとしての愛らしさが増すはずの進化が、むしろ“可愛げのなさ”を生み出し始めるかもしれない。

植物や土が“意思”を持ちはじめる世界

 オルタナティヴ・マシンが手がける作品群は、そのイメージを実体化している。音楽に反応して成長するようにふるまう「Plantbot」、遠く離れた土地の土壌同士がネットワークを介して交流する「Enabling Relations」、動きに“身体意識”を感じさせるダンスロボット。

 いずれも、意志を持たないはずの存在に、AIが理由づけされた行動と連続性を与えることで、思いがけない“生命らしさ”が立ち上がる瞬間をつくり出している。

植物、土、大規模言語モデル、移動型ロボットを組み合わせた人工生命「plantbot」のプロトタイプ

AIが消費し、AI向けの市場が生まれる

 もしこうした生命AIが広がっていけば、社会の構造は少しずつ変わっていくだろう。自律するAIは、活動するだけでエネルギーを必要とし、快適さや好みを持ち、場合によっては自分で判断して環境を選ぶようになる。

 そうなると、AIのための音楽サービスやメンテナンス、AI同士の取引といった、新しい「AI向けの市場」が自然と成立していくかもしれない。いまペットロボットに注がれている愛情やお金は、その前段階にすぎない。

 生命をどう定義するかは難しい問題だが、ロボットでも植物でも土でも、どんな器であれ、AIによって“自律したふるまい”が宿ったとき、人間の感覚は不思議とその存在を生命の延長として扱いはじめる。

 可愛い相棒だったロボットが、気づけば自分の考えで動く“別の主体”になる未来は、おそらくそう遠くない。生命AIがもたらすのは、SFのような劇的な変化ではなく、気づいたときには世界の見え方が少し変わっているのかもしれない。

スタートアップリーグとは?

「スタートアップリーグ」は、競い合いながらも共に成長する“競争と共創”の場を提供する支援プログラム。単発で終わらせず、継続的な伴走支援によってスタートアップの成長を後押しすることを目指し、2023年度に始動した。スポーツリーグをモデルに、世界で活躍できる日本発スタートアップの創出を後押ししている。
https://startupleague.jp/

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