【JSTnews11月号掲載】NEWS&TOPICS 戦略的創造研究推進事業CREST 研究領域「原子・分子の自在配列・配向技術と分子システム機能」/研究課題「超原子を基盤とする階層性ナノ物質科学の創成」
金の原子3つ分の超極細「金量子ニードル」を開発、他分野への応用に期待
2025年11月27日 12時00分更新
金属原子が数個から数百個集まってできた「金属ナノクラスター」は、塊状の金属とは異なる原子配列を取り、特異な物理・化学的性質を示します。金属ナノクラスターを用いて新たな機能性物質を創出する研究が広く実施されていますが、クラスター中の原子の個数、距離、配置の対称性などを精密に制御しながら集積化する方法は現時点では確立されていません。
東京大学大学院理学系研究科の佃達哉教授らの研究チームは、金イオンを一気に還元するという従来の方法ではなく、ゆっくりと還元することでさまざまなサイズの金ナノクラスターを合成し、それらの幾何構造を単結晶X線構造解析によって調べました。その結果、この方法で合成された金ナノクラスターでは、とびとびのエネルギー値を持つ軌道に電子が収容されており、四面体Au4や三角形Au3を基本単位とした異方的な集積構造を持つことを発見。これらの中に、金原子わずか3つ分の幅の2種類の針状構造体を見つけ、「金量子ニードル」と命名しました。さらに、これらの金量子ニードルがそれぞれ755と770ナノ(ナノは10億分の1)メートル付近に強い吸収ピークを持ち、800~1100ナノメートルの近赤外領域に発光するという、ユニークな光学特性を示すことも実験で明らかにしました。
金量子ニードルは今後、近赤外線に対する強い吸収や発光の特性を生かすことで、温熱療法や生体イメージング、光エネルギー変換などへの応用展開が考えられます。また、この新しい合成手法により、ナノ物質科学の発展への貢献も期待されます。
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事
-
第79回
TECH
水電解における塩素発生の抑制につながる新発見 -
第78回
TECH
情報通信科学分野の革新的技術の創出を見据え、JSTと情報通信研究機構(NICT)が業務連携 -
第77回
TECH
農業用ハウスの屋根に載せられる有機太陽電池~農作物育成と発電が両立可能に -
第76回
TECH
昆虫の「求愛歌」の仕組みを解明し、ハエや蚊の繁殖を抑える技術へ -
第75回
TECH
情報学・神経生理学・社会心理学の学際的研究で、AI によるおすすめの信頼性を向上! -
第74回
TECH
白亜紀から続くロマンに惹かれて挑む、浮遊性有孔虫の研究 -
第73回
TECH
出芽酵母を用いて環状DNA発生の仕組みを明らかに -
第72回
TECH
病原細菌が植物の葉の気孔を開いて侵入する仕組みを発見 -
第71回
TECH
原子分解能電子顕微鏡法で、結晶粒境界における添加元素の拡散状況を観察 -
第70回
TECH
有機フッ素化合物を分解する新たな技術を開発 -
第69回
TECH
小中高生の可能性を広げる「次世代科学技術チャレンジプログラム」 - この連載の一覧へ








