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AIで妊娠率の高い胚を見極め不妊治療の成功率を高めるメデタが優勝、B Dash Camp 2025 Fall

B Dash Camp 2025 Fall in Fukuoka

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 日本最大規模のスタートアップ業界カンファレンス「B Dash Camp 2025 Fall in Fukuoka」が、2025年11月5日から7日に福岡市内で開催された。B Dash Campはスタートアップ業界の第一線で活躍する経営者や著名人が集結する場で、スタートアップの起業家、大手企業の経営幹部、新規事業担当者、およびベンチャーキャピタル、CVCの幹部などが完全招待制で集まっている。

 オープニングでB Dash Venturesの代表取締役社長の渡辺洋行氏からも、今回もスタートアップ業界が大きな転換期にあると示された。ここ数年、特に株式市場や社会的な要請から、インターネット、IT産業だけでなく、他の分野の重要性が高まっていると指摘されてきた。前回、春に札幌で開催された、同イベントのテーマ「A New Beginning」では、ポスト・インターネット時代における新たな方向性として、「ディープテック」、「新産業としてのインターネット」、「M&A」が議論されていた。

B Dash Ventures 代表取締役社長 渡辺洋行氏

 業界は「カオスな状況」、あるいは「踊り場」にあるとし、ディープテックは分野選定に苦慮し、M&Aは人材不足などで容易には進まない状況が挙げられた。ただ方向性、課題は明確にされたこともあり、ディープテック、M&Aに向かっていく具体的成功事例、方法論が今回のテーマの「Path to Winning(勝ち筋を探せ!)」のもと、各セッションでは登壇者により語られていた。方向性が定まらないカオスな状況において、抽象的ではなく、「3年後、5年後、10年後に勝てるのか」という具体的な勝ち筋を見つけ出すことを目指す、という強い思いが込められていた。

 メインコンテンツで、スタートアップの登竜門とされるピッチコンテスト「Pitch Arena」では、受精卵のAI分析で不妊治療の成功率を高める株式会社メデタが優勝した。今回、100社以上の応募のうち3割がディープテックの企業で、決勝に残った7社のうち半数もディープテック、ハードウェア関連というインターネット業界発のイベントがまさに変わった姿を見せていた。準優勝ほか各スポンサード賞を受賞した企業、決勝進出の7社は以下のとおりだ。

優勝「株式会社メデタ」
準優勝「株式会社スマート修繕」
野村賞「株式会社メデタ」
AGS賞「株式会社Carnot」
ノバセル賞「株式会社Carnot」
PERSOL賞「株式会社スマート修繕」
UPSIDER賞「株式会社メデタ」

将来のノーベル賞⁉ 三次元に拡張した新しい炭素材料
株式会社3DC

 革新的な炭素材料Graphene MesoSponge(GMS)及び電極製造高度化アプリの開発、販売を行なう。GMSは東北大学で発明された新しい炭素材料であり、ノーベル賞受賞の可能性のある炭素材料として、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェンの次に位置づけられる。まずはリチウムイオン電池に注力、少量添加することで寿命延長、出力向上、急速充電の実現が可能となる。炭素材料の中でめずらしく構造をコントロールできることから、市場ごとに製品設計をデザインでき、宇宙や半導体など広い市場への展開を目指している。

株式会社3DC 代表取締役CEO 黒田拓馬氏

チャットで指示する、日本発のAIワークフローエージェント作成ツール
株式会社Carnot

 AIワークフロー・エージェント作成ツール「jinbaflow」の開発、販売を行なう。「こういうのつくって」と、チャットによる自然言語で指示で動く「バイブコーディング」、ノーコードのワークフローやコードを自動生成するデベロッパーツールだ。数億円かかるようなユースケースの作成を、自分たちで迅速に内製化できるツールであり、日本発のAIワークフロー・エージェント作成ツールとして、米国法人も立ち上げ世界進出を視野に入れている。

株式会社Carnot Founder & 共同代表COO 乗杉卓也氏

ドローンにも搭載可能なロボットアーム
Kailas Robotics Inc.

 倉庫や工場での自動化推進、高所や遠隔作業の自動化に貢献する、ドローンなど移動体に搭載可能な小型ロボットアーム「MobiRobo」の開発を行なう。自社開発する小型軽量、高性能なアクチュエーターにより、不安定な移動体からでも正確に目標物を掴むことが可能。低消費電力で人と同じ環境で作業が可能であり、工場では導入のためのレイアウト変更や安全策設置が不要となる。

Kailas Robotics Inc. CEO 塩見佳久氏

屋外自律走行の物流商用モビリティー
LOMBY株式会社

 屋外での自律走行モビリティーロボットの開発、遠隔での商用ロボットを運用する。超高齢社会における物流と人流を労働力に頼らず活性化することを目指している。すでに東京の八王子ではセブン-イレブンと連携し、荷物を戸口まで運ぶサービスを運用中だ。物流のほか、椅子を取り付ければ人の移動も自動化できるとしている。

LOMBY株式会社 代表取締役 内山智晴氏

不妊治療の成功率を高める受精卵のAI分析
株式会社メデタ

 IVFクリニック向けSaaS「コウノトリ Assist」、胚を評価するAI「コウノトリ AI Embryo」を開発、運営する。不妊治療の成功率向上のため、受精卵の細胞分裂の動画をAIで分析し、妊娠率の高い胚を見極める技術を開発している。

株式会社メデタ CEO 伊藤慎悟氏

魚種ごとに最適な陸上養殖プラットフォームを提供
mizuhachi株式会社

 陸上養殖システムサービスのフランチャイズ展開、魚種及び水槽、配合飼料の開発。魚種ごとに最適な陸上養殖プラットフォームを提供できるとし、現在はおもにウニの養殖から事業を開始している。魚類17種、プランクトン2種の養殖実績があり「水産」スタートアップとして、陸上養殖においてトップレベルの技術を有するとしている。

mizuhachi株式会社 代表取締役 CEO 高橋優人氏

大型建築の修繕工事ワンストップサービス
株式会社スマート修繕

 分譲マンションから商業施設、工場などの大型建物における修繕工事の見積DX、工事費適正化のワンストップサービス「スマート修繕」を提供している。独自の見積データベースを活用したデータドリブンな見積査定、コンサルティングプロセスを仕組み化、分業化することで属人性を排除し、品質の安定とスケーラビリティを実現している。

株式会社スマート修繕 代表取締役 豊田賢治郎氏

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