SWITCH 2025がシンガポ-ルで開催 未来を拓くディープテックとEmbodied AI
SWITCH 2025 - Singapore Week of Innovation & Technology
アジア屈指のイノベーションイベント「SWITCH 2025(Singapore Week of Innovation & Technology)」が、2025年10月29日~31日にシンガポールのMarina Bay Sands Expoで開催された。シンガポールの企業支援を目的とした政府機関「Enterprise Singapore」が主催するイベントで、10回目を迎えたSWITCHはシンガポール独立60周年とも合わさり、過去最大規模での開催となった。シンガポールの支援、研究機関をはじめ、各国のパビリオンに400社以上のスタートアップ、テック企業がブース出展した。日本からもJETRO、東京都、福岡市など自治体のパビリオンが並び、支援スタートアップがブースを構えた。
開会挨拶にはシンガポール副首相兼貿易産業大臣のガン・キムヨン氏が登壇。シンガポールは、テクノロジーのブレークスルーが産業全体を変革し、直近の課題に対処していくため、量子技術、Climate Tech、Embodied AIなどのディープテックに重点的に投資を続ける方針を示した。支援の体制では海外とのネットワークハブとなるプログラム「Global Innovation Alliance」が現在50以上の市場に拡大し、700社以上のスタートアップを支援していることを言及、さらにマイクロソフト、シンガポール国立大学(NUS)のBLOCK71、Enterprise SGのパートナーシップにより、3年間で150社のAIスタートアップを育成する「AIアクセラレータプログラム」を立ち上げると発表した。
基調講演には、Manus AI共同創業者CPOのタオ・チャン氏が「The Frontier of Agentic AI)」と題して講演した。AIエージェントは単なるチャットボットではなく、「自ら考え、行動し、物事を行う能力」を持つ存在であるとし、特定のタスクのために設計されるのではなく、人間のように、広範な能力を持ち、課題を解決できるシステムであるとした。Manus AIは、「考え」、「行動し」、「学習する」という、3ステップで動作するAIエージェントを構築しようとしている。AIを導入するためのマインドセットとして、AIを従業員の「置き換え」としてではなく、人間の能力の「強化」として捉えることが重要であると述べた。
また29日のグローバルステージでは、「Panel: Market Access to Japan for Innovative Startups」のセッションで、スタートアップの日本市場への拡大における機会、日本に進出したシンガポールのスタートアップSoundEyeの事例が話された。北九州市のアクセラレーションプログラムに採択された、介護ビジネスを展開するSoundEye創業者兼CEOのタン・ヨウ・キー博士によれば、日本の病院および高齢者介護施設の市場規模は、シンガポールの40倍以上に達する。日本市場への参入は、ローカライズ、言語の壁やビジネス文化の違いにより「難しい市場」とされるが、日本での成功はソリューションが「他の地域でも通用する」という品質証明や認定となり、海外展開に役立つと説明した。
パネルディスカッションでは、UntroD Capital Asia取締役の熊本大樹氏、JETRO SingaporeのKhooKiewai氏、Enterprise SingaporeのYeoh Mei Ling氏が登壇し、海外スタートアップが日本市場への参入するにあたって、直面する課題、克服するための具体的な戦略が議論された。日本市場への進出を目指すスタートアップに対し、公的支援の活用に加えて、日本語で商談を行なうための日本人代理人を見つけることが重要とした。また東京などの大都市ではなく、イノベーション支援に積極的な地方都市であれば、意思決定も早く、より迅速に展開できるとした。自分たちだけで課題を解決しようとせず、支援者や投資家、パートナーと協力し、スタートアップ支援エコシステムを活用することでスケールできると示唆していた。































