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「AIセーフティ・インスティチュート」など国策との連携も

Anthropicの日本拠点が始動 安全性に傾注する「Claude」はAI実装の起爆剤となるか

2025年10月30日 09時45分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 LLMの「Claude」やAI向けプロトコルの「MCP」で知られるAnthropic(アンソロピック)。元OpenAIのメンバーで設立されたAI企業であり、安全性へのコミットメントを強みとしている。

 そのAnthropicが、2025年10月29日、アジア初の拠点として東京オフィスを開設した。代表執行役社長には、Snowflakeの日本法人代表を務めていた東條英俊氏が8月7日付けで就任している。同日都内で開かれた説明会では、日本市場におけるビジネス戦略や日本の政策との連携などが語られた。

(左から)Anthropic グローバルアフェアーズ(国際関係)責任者 マイケル・セリット氏、Anthropic Japan 代表執行役社長 東條英俊氏、Anthropic 最高商務責任者(CCO) ポール・スミス氏、国際事業マネージングディレクター クリス・シアウリ氏

日本が初のアジア拠点に選ばれた2つの理由

 冒頭、東條氏はアジア初の拠点として日本が選ばれた理由を2つ挙げた。

Anthropic Japan 代表執行役社長 東條英俊氏

 ひとつは、既に多くの日本企業がAnthropicのClaudeを利用している実績だ。既存のユーザー企業に対して、いち早く技術サポートを展開していく。

 例えば、みずほFGは、信頼できるAIアシスタントとして3万人の従業員に対してClaudeを展開している。

 コーディングエージェント「Claude Code」の利用も広がっており、楽天では、同ツールによって新機能の市場投入までの時間を80%短縮。SI企業のクラスメソッドでは、ほぼ全社員が利用しており、直近のプロジェクトにおけるコードの99%をClaudeが生成し、生産性を10倍に向上させているという。

日本の代表的のユーザー企業

 もうひとつの理由は、「安心・安全」に対しての要求が高い日本が、「安全性を最優先」とするAnthropicのミッションと親和性が高いからだ。

 同社が目指しているのが、安全で、有益で、解釈可能なAIシステムの構築だ。ここでいう「解釈可能(interpretability)」とは、AIの下した判断の根拠やプロセスを明らかにすることであり、Anthropicが注力する要素のひとつだ。

 加えて各モデルは、独自に安全性を規定した「責任あるスケーリングポリシー(Responsible Scaling Policy)」によって、リスクを事前評価し、適切な対策を講じたた上でリリースされている。

安全性を最重視するAI研究

 なお、これまでも日本に対して、ローカライゼーションや企業ニーズへの対応を進めてきた。Claudeは、ネイティブレベルの日本語が担保され、日本の文化や商習慣も学習している。「日本人が使う上で重要な、敬語の流暢さも表現できる」と東條氏。

 また、データレジデンシーやコンプライアンス、ガバナンスにも対応しており、「Claude Sonnet 4.5」をAWSのBedrockで利用する場合には、完全に国内に閉じて、データを海外に出すことがないという。

 今後は、多様なユースケースを発掘するために、顧客との対話を重ねていく予定だ。「現状、LLMの適用領域は、コスト削減や社内の生産性向上が中心。顧客接点や社外向けサービスなど、収益創出領域での活用を推進していく」(東條氏)

 日本法人は東條氏含めた3名体制でスタートしており、プリセールスエンジニアを含めた企業向け営業チームの強化を進める。パートナーエコシステムの構築やデベロッパーコミュニティへの働きかけにも注力していく方針だ。

日本のGo-To Market戦略

日本の「AIセーフティ・インスティチュート」「広島AIプロセス」との連携も

 また、日本法人の設立とあわせて、ダリオ・アモデイ(Dario Amodei)CEOが、高市総理大臣と会談しており、政府のAIセーフティ機関「AIセーフティ・インスティチュート(AISI)」との覚書を署名した。

高市総理大臣との会談の様子(ニュースリリースより

 AISIとは主に2つの分野で連携していく。ひとつ目は、「AIの評価手法」を進歩させることだ。AIモデルの能力や限界、潜在的なリスクをどう評価するかについて、情報交換やベストプラクティスの共有を進める。Anthropicのグローバルアフェアーズ(国際関係)責任者であるマイケル・セリット(Michael Sellitto)氏は、「こうした取り組みは決して一国では実現できない」と強調した。

Anthropic グローバルアフェアーズ(国際関係)責任者 マイケル・セリット(Michael Sellitto)氏

 2つ目は、「AIのトレンドと発展」についての対話だ。これは、Anthropicと日本政府が、今後のAIの進化とそれに伴うリスクについて継続的に意見交換していくという取り組みである。

 さらに、グローバルで安全、安心なAIの実現を目指す枠組みである「広島AIプロセス・フレンズグループ」にも参加しており、これは、同社が2023年に署名した「広島AIプロセス」の行動規範に基づくコミットメントをさらに発展させるものになる。

 Anthropicはこれまでも、米国の「AI標準・イノベーションセンター(Center for AI Standards and Innovation)」や英国のAIセーフティ・インスティチュートとも連携しており、2024年11月には共同でClaude 3.5 Sonnetを評価した。「こうした取り組みが、AI活用の機会を生み、安全で責任あるAIを活用しているという確信につながる」とセリット氏。

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