このページの本文へ

Intel Tech Tour 2025取材レポート【その4】

インテルの次期CPU「Panther Lake」のNPU 5、IPU 7.5、Bluetooth 6、Wi-Fi 7 R2を解説

2025年10月28日 10時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●ジサトライッペイ/ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

リモートワーク時代だからこそ高画質化したIPU

 続いて、IPU(Image Processing Unit)について解説しよう。IPUはSkylake時代のモバイルPC向けCPUで初採用した画像処理専用のユニットである。2〜3年ペースで更新してきたが、Lunar LakeのIPU 7に続き、Panther LakeではIPU 7.5になった。世代ごとに電力効率や画質、遅延などを改善してきたが、IPU 7.5ではノートPC搭載カメラの画質を向上している。

Panther Lake

IPUはSkylake世代からある機能だ。バージョンを更新するたびに、性能や省電力性能が向上している

 ノートPCのカメラの生データは、カメラ内のISP(Image Signal Processor)か、CPU内のIPUで処理して「鑑賞にたえる」画質にする必要がある。ISPではレンズ補正のほか、ノイズ除去やカラー調整などの処理を行う必要があるが、安価なISPはそれ自体が備えるメモリーや処理性能に制限がかかる。

 そこで、IPUの登場だ。IPUならばメインメモリーをワークエリアとして利用できるほか、GPUやNPU、CPUによるAI処理を組み込むこともたやすい。プレミアムなノートPCは高品質なセンサーとISPが備わっているので問題はないが、そういった装備が選べない低価格なノートPCでも高画質化が容易になるというわけだ。

Panther Lake

カメラがとらえた映像を最終的な映像として出力するまでの流れ。レンズ補正やノイズ除去、シャープネスや色補正といったさまざまな段階を経て出力する

Panther Lake

カメラに付帯するディスクリートのISPと、CPU統合型ISP(つまり、IPUのこと)の違い。前者はメモリーも限られているため、複数のフレームから結果を出すようなテンポラルな処理には不向きだ。対して、IPUならメインメモリーが使えるため、解像度も実質的に制限はない、という主張。画像処理に関しても、IPUならパワフルなGPUやNPUを利用したAI処理が可能である

Panther Lake

IPUを利用した画像処理の一例。これはセンサーでとらえたRAWデータ。とてもこのままではTeamsやZoomで利用できない

Panther Lake

まずは光学系の補正。レンズの色収差補正もここで入る

Panther Lake

ホワイトバランスや露出補正をかけるとかなり見られる映像になってきたが、まだ粗い

Panther Lake

まずは空間的なノイズリダクションを適用し……

Panther Lake

色補正や過去フレームの情報を参照してテンポラルノイズ除去の処理も加える。シャープネス処理などを適用したら、所定の解像度にスケーリングしてはじめてシステムに映像データが手渡されるのだ

Panther Lake

これらの処理のビフォー&アフターを比較したもの。これをカメラ側のISPでやるか、Panther Lake上のIPUで実施するかの違いはあるが、流れとしてはこのような感じになる

 肝心のIPU 7とIPU 7.5の差分は3点。1つめはハードウェアを利用したスタッガードHDRである。露出時間を変えた2枚の映像をIPU上で合成し、コントラスト比を向上する技術である。IPU 7.5では最大4Kの映像に対応し、リアルタイムに変動する照明条件においても柔軟に調整できる。そして、IPU 7時代よりも最大1.5Wの電力削減に成功している。

Panther Lake

多重露光で撮影した2枚の映像を合成し、明暗ともにつぶれのない画像を作成する処理は、IPUのハードウェアを用いて処理可能になった

 2つめはNPUやGPUを利用してAIによるノイズ除去。特に照明が暗い場所で撮影した映像はノイズが多くなりがちだが、これを前もってデノイズ用のニューラルネットワークで処理したあとでIPUに渡す。カメラの解像度は5メガピクセルまで、30fpsの映像に対してリアルタイムで処理をかけられる。

Panther Lake

センサーからメインメモリーに転送したRAW画像をNPUまたはGPUでデノイズ処理し、それをIPUに渡してさらなる処理をかける。IPU 7.5はこのシームレスな処理の流れを可能にする

 3つめはAIによるローカルトーンマッピングである。文字通りAIを利用したトーンマッピングだが、画面全体に対して調整するのではなく、画面内の異なる領域を個別に調整するというものだ。

 これによりリアルなコントラストと奥行き感を与え、明暗両方の領域において微細なディテールを引き出せるようになる。従来のトーンマッピング技法に比べ、映像にアーティファクトが出にくく、フリッカーも発生しにくいという利点がある。

Panther Lake

IPU 7.5のローカルトーンマッピングは従来技法より画質が良く、より安定した映像を出力できるという

Panther Lake

赤線で囲った部分(筆者が資料に記入)がIPU 7.5で新設した機能となる

 上の図でわかる通り、IPU 7.5はMIPI-CないしMIPI-Dで接続するカメラを最大3基サポートしている。Lunar LakeのIPU 7では最大4基なのでこの点は若干退化している感じだが、一般的なノートPCだとカメラは1基なので特に問題にはならない。

 では、なぜカメラのインターフェースを3基も搭載しているのかといえば、エッジAIの利用を考慮しているためである。Intel Tech Tour 2025の展示では、ロボットに3基のカメラを装着し、それらの映像をAIで分析して制御するというデモを行っていた。

Panther Lake

ロボット制御用にPanther Lakeを利用するというデモ。カメラは首の付け根部分に1基、そのほかに両手に1基ずつ装着している

Panther Lake

手から飛び出している部分がカメラのハウジングだ

Panther Lake

GPUが3基のカメラから出力される映像を分析。Lunar LakeのArc Graphics(Xe2)は4.4〜4.9it/sec(itはiterationの略と思われる)だったのに対し、Panther Lakeの16コア12Xe版のArc Bシリーズ(Xe3)は9.3〜9.8it/secと倍程度の差だった

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

  • 角川アスキー総合研究所
ピックアップ

ASCII.jpメール アキバマガジン

デジタル用語辞典