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AMDのゲームテクノロジーセット「FSR “Redstone”」解説。新GPUが出なくてもソフトは劇的に進化する

2026年03月07日 11時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●北村/ASCII

提供: 日本AMD

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 AMDやNVIDIA、インテルといったGPUメーカーはGPUのチップだけ開発して売っているわけではない。ハードの性能や強みを十全に引き出すためにドライバーを更新しているほか、ゲームで自社製GPUを使ってもらうための技術も開発している。AMDの場合、かつて「AMD FidelityFX」が付けられていた技術がこれに該当する。

 そして今年AMDはAMD FidelityFXをリブランド、「AMD FSR」という体系に改めた。さらに「AMD FSR “Redstone”」(以降FSR Redstoneと略)という次世代技術のロードマップも発表した。すでにその一部については「CES 2026」のレポートで紹介しているが、今回改めてFSR Redstone全体について解説しよう。

FSR Redstoneという呼称が初めて紹介されたのは「COMPUTEX 2025」である。当初FSR 4はFSR Redstoneの外に置かれていたが、現在ではFSR Redstoneの枠組みの中に入っている。当時2025年後半にリリースとしていたが、予告通り2025年の終盤にリリースされたAMD Software 25.12.1で全機能が解放された。AMDは公約をギリギリで守ったわけだ

AIを採り入れてライバルを追撃する

 FSR Redstoneが従来のAMD FSRと異なる点は機械学習(Machine-Learning:ML)の採用、すなわち「AI」にある。AMD FSRの柱であるFSR(現在はFSR Upscalingと改名)は、もともとNVIDIAのDLSS(Deep Learning Super Sampling)、後のDLSS-SRに対抗すべく開発された技術だが、DLSSがTensorコアを必要とする技術体系なのに対し、FSRは特定のハードを必要としないオープンソースな技術として誕生した。

FSRをはじめとするAMD発のグラフィック技術に関する情報(100%開発者向け)はAMDの管理する「GPUOpen」で公開されている

 AMDはかねてよりAIを使わない数理的なアルゴリズムによりさまざまな機能を実装してきた。環境遮蔽(Ambient Occlusion)を実装する「AMD FidelityFX CACAO」、スクリーンスペース限定でレイトレーシング的な反射処理を実装する「AMD FidelityFX Screen Space Reflections」、アンチエイリアス(TAA)でボケた映像をシャープにする「AMD FidelityFX Content Adaptive Sharpening(CAS)」など、ゲームの設定画面でも見たことがあるだろう。

 しかし、AMDもそのポリシーを曲げAIを本格的に使うフェーズに突入した。AI処理を前提とした新しいFSRの柱が本稿で解説するFSR Redstoneである。これは以下の4つの技術で構成されている。

FSR Redstoneに実装されている4つの技術
FSR Upscaling アップスケーリング技術
FSR Frame Generation フレーム生成技術
FSR Ray Regeneration レイトレーシング処理時に不可欠なデノイズ処理
FSR Radiance Caching レイトレーシングにおけるライティング処理の負荷を軽減する技術

 これら4つすべての機能は従来のFSRの弱点を克服し、DLSSが先行していた部分をキャッチアップすることを目的としたものであるが、同時にFSR Redstoneの機能はすべてRX 9000シリーズのRadeonが必要になる(技術的にはRX 9000シリーズ以外でも動作可能という話もあるが、AMDはこれを否定している)。

 これはRX 9000シリーズに搭載されたAIアクセラレーターのみが、FSR Redstoneの処理に必要なFP8の演算に対応しているためだ。また、これらの機能を使うにはAMD Software(Radeonドライバー)の25.12.1も必要である。

 それでは、FSR Redstoneを構成する各技術を解説していくとしよう。

画質を損なわずにGPUの処理を軽減するアップスケーリング技術が発達

 現在のゲームグラフィックはより新しい表現を求めてどんどん重くなっている。重いグラフィックをドットバイドットでレンダリングするよりも、最初により低解像度でレンダリングし、それを出力解像度に合わせ「アップスケール」するというアイデアが生まれた。

 ゲームによっては「レンダリングスケール」として実装していたものがある(例:「Rainbow Six Siege」「Overwatch」など)が、これをGPUメーカーが整備したものがNVIDIAのDLSS、AMDのFSR(AMD FidelityFX Super Resolution)、インテルのXeSS(Xe Super Sampling)である。

 FSRは現在FSR Upscalingと呼称が変わったがゲーム設定画面ではFSR表記のままであることが多いため、本稿でもFSR単体表記はFSR Upscalingを意味するものとする。

 FSRはNVIDIAのDLSSの後追いではあるものの、後発ならではのメリットもある。FSR 1〜FSR 3では、GPUシェーダーを利用して処理するためRadeonならRX 500シリーズ、GeForceならばGTX 10シリーズ以降で動作する。技術的に言えばShader Model 6.2に対応したGPUであればFSR 2を実行可能である。

GPUOpenにおけるFSR 2のトップページには「AIを使用しない理由」について言及がある。アップスケーラーとはとどのつまり、現フレームに過去フレームの情報を組み合わせてアップスケーリングされた映像を得る機能であり、優れたアルゴリズムがあればAIは不要だと言っている。後にFSR 4でAIを採り入れるのだから、この一文は非常に趣深い

 FSRにおける入力解像度と出力解像度の関係は下表の通りDLSSとほぼ共通しているが、DLSSにはない「ウルトラクオリティー」というモードが用意されている点に注目したい。また、DLAAに対応するアンチエイリアス用モードは「ネイティブAA」と呼ばれている。どのモードを利用するにせよ、FSRはゲーム側の対応が必要になる。

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