ディープテックが変える食やエネルギー サステナブル社会を実現するOIST発イノベーション
2025年9月29日、30日「OIST-Lifetime Startup Elevate 2025」が開催
沖縄にあるグローバル研究拠点である沖縄科学技術大学院大学(OIST)にて、「OIST-Lifetime Startup Elevate 2025」が2025年9月29日、30日に開催された。Startup Elevateは、グローバル展開を志向するディープテック・スタートアップと投資家を結びつける、2日間にわたる招待制の国際カンファレンスだ。本イベントは技術開発とビジネスのハブをしているOIST InnovationとOISTとの連携ファンドを運用するベンチャーキャピタルであるライフタイムベンチャーズが共催、新しいアイデアを創出し、革新を前進させることを目的としている。
9月29日が、ヘルスケア・デイ、30日がサステナビリティ・デイとして設定され、本記事では2日目のピッチ「Pitch Elevate - Day2 Sustainability -」をお届けする。サステナビリティ・デイである2日目には、新エネルギー、脱炭素、炭素吸収・貯蔵、オルタナティブ・アグリ&フードテック、再生型養殖、気候変動適応技術など、地球の持続可能性に資する分野に焦点が当てられた。選考を通過したスタートアップが、VCメンターと1ヵ月間にわたり集中的に協働して磨き上げたピッチを披露した。ピッチは7分間、国内外の著名な投資家やアクセラレーターを含むゲストが審査にあたった。
本ピッチセッションの結果、以下のスタートアップが受賞を果たした。
Best Pitch Award「株式会社Thermalytica × 株式会社環境エネルギー投資」
低い熱伝導率と低い製造原価を両立する独自の高断熱性エアロゲル素材「TIISA」による、液化水素の安定的な輸送や貯蔵を実現し、水素社会に貢献するとともに、半導体から住宅、家電まで省エネルギー化など、幅広い熱管理ソリューションを実現できる。
Runner-up Pitch Award「Axross Pte Ltd × Scrum Ventures LLC」
AI駆動型の自律的なHVAC(冷暖房・換気・空調)システム制御を産業施設に導入し、データとIoTセンサーを活用して温度と環境条件を最適化することで、エネルギー消費を削減できる。
Best Growth Award「Kwahuu Ocean株式会社 ×JICベンチャー・グロース・インベストメンツ株式会社」
イカの陸上養殖システムを開発するOIST発スタートアップ。小型モジュール型で分散化された閉鎖循環型養殖システムを通じて、持続可能なイカの安定供給を可能にし、日本のイカ産業の課題に取り組む。
Best Poster Award「NeuralX, Inc.」
インテリジェンスAI技術を活用し、養殖事業をリアルタイムで監視、分析、最適化する。水中カメラの映像から魚のバイオマス推定、個体数計測、行動分析を行ない、効率的で持続可能な漁業生産を支援する。これにより餌代やエネルギー消費を削減するなどの効果が見られる。
2日目をコーディネートしたライフタイムベンチャーズの國井紅秋氏は、「気候変動や環境汚染は依然として進行しており、待ってはくれない。我々も待つべきではない」ことを強調した。今回のカンファレンスだけで終わるのではなく、明日からではなく今日から始まる「行動」を伴うものになることを望んでいると述べた。
Startup Elevate 2025の舞台となったOISTは、日本発の国際的な大学院大学であり、1400人以上の教職員と学生がおよそ80の国と地域から集まっている。世界レベルの科学と博士課程教育を推進し、研究成果を社会に移転し、世界に貢献することを目指しており、その役割を担う部門がOIST Innovationである。OIST Innovationは専門家の構成も多様で、40%が大学院の学位を持ち、60%が女性、管理職の70%が女性である。また、スタッフの25%が7ヵ国出身の国際的な人材で構成されている。
OIST Innovationの目的は、研究室から生まれる破壊的なテクノロジーが市場に到達するまでの「初期の深い死の谷」を橋渡しすることである。知的財産、ギャップファンド(初期の発明と実現可能性のギャップを埋める資金)、業界パートナーシップ、および起業家支援の4つの領域を重点的に支援している。OISTは設立が2011年の設立だが、その商業化活動は順調に進展。2024年度には、締結されたライセンス10件のうち5件がスタートアップにつながった。これまでに合計35社のスタートアップを輩出している。




































