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Intel Tech Tour 2025取材レポート【その2】

Tick-Tock戦略の再来?Panther Lakeが前世代から大きく変わらず性能が向上した理由

2025年10月17日 10時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●ジサトライッペイ/ASCII

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ITDの進化で向上した電力効率

 Intel Tech Tour 2025の会場では、この進化したITDの電力効率をわかりやすく体感できるためのデモを行っていた。Panther Lake、Arrow Lake、Lunar Lakeを搭載したノートPCを用意し、Teamsでオンライン会議をしながら、ExcelとPowerPointで資料を開きつつ、YouTubeの動画も再生、といった状況を想定。このシチュエーションにおいて、CPUがどう使われるのか観察できた。また、その時の消費電力も計測してきたのでご覧いただきたい。

Panther Lake

こちらはPanther Lakeの16コア12Xe版を搭載したデモ機(メーカーと型番は不明)

Panther Lake

TeamsとExcel、PowerPoint、YouTubeではこの程度の負荷で、LP Eコアがほぼすべての処理を行っている。EコアやPコアの負荷が瞬間的に上がることもあるが、一瞬で負荷が0%に戻っていた

Panther Lake

上記の処理をしているときのPanther Lake搭載機の消費電力は実測で7.6W弱だった

Panther Lake

Arrow Lake搭載ノートPCでも同じような処理をさせてみる

Panther Lake

同じ作業をしているのにもかかわらず、Arrow Lake搭載ノートPCではLP Eコアは働かない。その代わり、Eコアが処理を担当している。Pコアも1%未満ではあるが負荷が上がっている(=電力を消費している)

Panther Lake

Arrow Lake搭載ノートPCの消費電力は11.4W強。本体のディスプレーは使っていないため、この消費電力はほぼCPUの消費電力とリンクしている。同じ処理をしているのに3W以上の差が生まれるのだ

Panther Lake

Lunar Lake搭載ノートPCでも同じ処理をさせてみた

Panther Lake

Lunar Lake搭載ノートPCでは、LP Eコアに負荷が集中。しかし、先のPanther Lake搭載機に比べてLP Eコアの負荷がやや高い。消費電力はPanther Lakeと同程度の8W前後だった(USB電力計の写真は撮り忘れ。大反省……。)

 ITDはPanther Lakeに搭載しているPコア、Eコア、LP Eコアをどのようなポリシーで運用するかを決定する機能だが、この考えをさらに押し進めると、プラットフォームのパワーポリシー設定の決定にも利用することができる。バッテリー駆動時間を優先したければ、OSにLP EコアやEコアを優先的に使うよう底辺すればいいわけだ。

 また、PCメーカーは各々の製品について、どのようなポリシーでコアを運用したいかを独自に定めることができる。例えば、ハンドヘルド機ならCPU内蔵GPU性能を最大化したいし、薄型ノートPCならバッテリー駆動時間がとにかく重要、といった具合だ。そこで、ITDとOSスケジューラーの間にメーカー独自のパワーポリシーを設定可能にした。

 さらに、Panther Lakeでは「Intelligent Experience Optimizer」なるツールを導入。バランスモード時は負荷に応じてパワーポリシーを柔軟に変更し、バッテリー駆動時でもAC駆動時に近い性能を絞り出せるという。Intelligent Experience Optimizerを利用することで、シングルスレッド性能主体のワークロードでは20%程度の性能向上が期待できるというが、このあたりは実機を見てみないとなんともいえない。

Panther Lake

ITDはOSにコア運用のヒントを与えるが、PCメーカーはPanther Lakeのパワーポリシーにカスタマイズを加えられる。いわゆるcTDP的な設定でパワーを独自に盛ったり絞ったりする点だが、今回はよりきめ細かくOS側にパワーポリシーを適用できるというわけだ

Panther Lake

Windowsのパフォーマンス設定(省電力〜バランス〜高パフォーマンス)の下にIntelligent Experience Optimizerが存在する。処理の状況や電源の状況を見て、自動的に高パフォーマンス寄りと消費電力寄りの設定を切り替えてくれるというものだ。このIntelligent Experience OptimizerはWindows専用というわけではなく、ChromeOSやLinuxにも似たようなレイヤーを提供するらしいが、詳細は不明だ

Panther Lake

Intelligent Experience Optimizerを利用することで、性能が必要な時に効率良くCPUパワーを絞り出せるようになる。CINEBENCH 2024のシングルスレッド性能やOffice 365のパフォーマンス(UL Procyonで検証)は20%近く向上するという

まとめ:フタを開けてみればTick-Tock戦略の再来

 Cougar CoveとDarkmontの設計は1世代前のLion CoveとSkymontから大きく変化しておらず、細かい最適化を地道に積み重ねて性能向上を図っている。先にも述べたが、プロセスルールと配線技術の大刷新という大仕事を無事乗り越えるためには、コア設計を大きく変更するリスクは負えなかった、あるいは最適化の徹底で十分なバリューを生み出せると感じたのだろう。

 プロセスルールをシュリンクした時はコアの中身に大きく手を入れないという方針は、かつてのTick-Tock戦略の再来ともいえる。しかしながら、PコアとEコアのパフォーマンスはLunar Lakeから伸びているとはいえ、Arrow Lake-Hとの差分が小さい点は残念でならない。

 ただし、電力効率は大きく向上し、ITDの挙動も最適化したという点を考慮すると、Panther Lakeはモバイルのシチュエーションで評価すべきCPUになったわけだ。Panther Lake搭載PCは2026年のCES以降と目されている。早いところIntel 18Aの底力を体験してみたいものだ。

 次回はGPUおよびNPU、IPUといったPanther Lakeで刷新されたさまざまな要素について解説する。

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