Intel Tech Tour 2025取材レポート【その2】
Tick-Tock戦略の再来?Panther Lakeが前世代から大きく変わらず性能が向上した理由
2025年10月17日 10時00分更新
進化した「Intel Thread Director」
Pコア、Eコア、LP Eコアの使い分けに関してはこれまでと同様、「ITD(Intel Thread Director)」が要となる。Cougar CoveとDarkmontに合わせて処理の分類モデルを更新し、OSに適切なコアを提言するようAIを再トレーニングすることで、Panther Lakeに最適化したコアの割り当てをOSに提言できるようになった(ITDは提言するだけで、実際にコアに処理を割り当てるのはOSのスケジューラーである)。
Microsoftが開発し、Lunar Lake世代で導入された「封じ込めゾーン(Containment Zone)」もそのまま継承している。ITDはCPUの消費電力を抑えながら効率的な処理を目指すものであるが、究極的にはより厳密な電源管理をハードウェアとAIの支援のもとに行うことを目指している。
ITDは処理の分類(Classification)とフィードバックテーブルという2つの要素で構成される。前者はコアで実際にどんな命令が処理されるか分析し、4カテゴリー(PコアとEコアでIPCが大差ない処理、Pコアが優位な処理、AI処理、非スケーラブルな処理)に分け、後者はカテゴリーごとに最も高性能なコアと効率的なコアの順序をOSに送る。さらに、この順序は電力や熱の状態で変化する。負荷の状況が変われば、OSに割り込みが発生するというわけだ
ITDのコア振り分けポリシーの変遷。最初にLP Eコアに処理を振り分け、処理の内容によって順次Eコア→Pコアへと昇格させていくデザインを採用したCPUはMeteor Lakeが初。Panther Lakeでも基本ポリシーは変わらないが、昇格・降格させるアルゴリズムを強化している。また、Meteor LakeにおけるLP EコアはPコア&Eコアとは別のタイルに格納していたが、Panther Lakeではすべて同じコンピュートタイル上にあるので効率が良くなった
TeamsとWindowsスタジオエフェクト程度の処理はLP Eコアを優先して利用する。図は16コア版Panther Lake環境におけるCPU負荷の状況を示したものだが、4基あるLP Eコアにほとんどの負荷が集中しており、PコアとEコアは使われてもほんの一瞬である
これは「UL Procyon」の「Office Productivity Benchmark」実行時、つまりOffice 365の性能を見るベンチマーク実行時のCPU負荷。最初(グラフ左側)はLP Eコアが使われるが、シングルスレッド性能が求められる処理が始まると、Pコアに負荷がすみやかに移行する
「CINEBENCH 2024」を利用したマルチスレッドテストでは、開始直後のデータを準備する段階ではPコアもEコアも散発的にしか使われないが、全コアを動員する処理が本格的に始まると全コアの負荷が一気に上がる
Panther LakeにおけるITD最大の変更点は、内蔵GPUドライバーからGPUの状態も受け取るようになった点だ。GPUが描画処理を全力で回すような状況、いわゆるGPUバウンドな状況ではCPUの電力をGPUに回す必要がある。そこで登場する今年誕生した機能が、Lunar Lakeで導入した「Intelligent Bias Control(IBC)」である。IBCはITDにGPUの状況を伝え、GPUにもっとパワーを回すためにはPコアよりもEコアを優先して利用するようITDがOSに提言することになる。
ゲーム「Control」におけるGPU負荷の例。このグラフはGPU負荷で、ほぼ100%に張り付いたままになっている。これがいわゆるGPUがボトルネックになっている状況、通っぽくいえば「GPUバウンド」な状況である














