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科学技術振興機構の広報誌「JSTnews」 第39回

【JSTnews10月号掲載】NEWS&TOPICS 研究成果革新的GX技術創出事業(GteX)/研究領域「 バイオものづくり」 研究課題「 GXを駆動する微生物・植物『相互作用育種』の基盤構築」

農業被害をもたらす線虫を植物が認識する仕組みを解明

2025年10月14日 12時00分更新

文● 中條将典

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 植物の根に寄生する体長約1ミリメートル前後の線虫は、世界中で甚大な農業被害を引き起こしており、線虫対策は作物の安定生産において喫緊の課題となっています。植物は、さまざまな病原体が侵入すると、病原体に共通して存在する特徴的な分子を目印として認識し、免疫反応を起動します。植物の細胞表面にはこうした目印を検出する受容体が備わっていますが、これまで、線虫がどのようにして植物の免疫反応を引き起こすのかは、よくわかっていませんでした。

 理化学研究所環境資源科学研究センターの白須賢グループディレクターらの研究チームは、実験室で大量培養が可能な種類の線虫が、植物への寄生能力がないにもかかわらず、シロイヌナズナに強い免疫反応を引き起こすことを発見。この線虫の抽出液から活性物質を精製することにより「分泌型トレハラーゼ」と呼ばれる酵素の一部で、わずか24個のアミノ酸から成るペプチドが、免疫反応の原因になることを明らかにしました。さらに、この免疫反応を起動するために植物が用いている受容体のリン酸化酵素も同定しました。また、このペプチドが植物に寄生する多様な線虫、害虫、病原性糸状菌に共通して存在していることもわかりました。

 今回、植物が分子レベルで線虫を認識する仕組みを解明したことで、植物免疫の理解が大きく前進しました。こうした病原体に対する防御物質を見いだすことで、新しいタイプの抵抗性作物を開発できる可能性があります。

線虫、害虫、病原性糸状菌が放出する分泌型トレハラーゼ由来のペプチドが、植物の受容体キナーゼ(リン酸化酵素)を介して免疫反応を引き起こす。

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