連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第202回
市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 9月20日~9月26日
ICT求人の8割で「AIスキル」が職務要件に/経営層が熱望するソフトウェア革新/セキュリティのハイプサイクル発表、ほか
2025年09月29日 08時00分更新
本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。
今回(2025年9月20日~9月26日)は、経営層の期待を集める「ソフトウェアによるイノベーション」、G7諸国のICT求人で急増する「AIスキル」要件、日本のセキュリティハイプサイクル最新版、APIセキュリティの現状と今後の問題点についてのデータを紹介します。
[ソフトウェア開発][AI] 経営層の9割近くが「ソフトウェアによるイノベーションが最優先事項」(GitLab、9月25日)
・国内経営層の87%が「ソフトウェアイノベーションは事業運営の最優先事項」と回答
・AI投資で開発者1人あたり年123万円ぶんの作業時間削減、全国130万人に適用すると1.6兆円の経済価値に
・85%が「自律型AIが、3年以内にソフトウェア開発の業界標準に」と予想
日本の企業経営層251名を対象に、ソフトウェアイノベーション(※「ソフトウェアの新規開発、大幅機能強化による新機能導入/効率向上/革新的問題解決の実現」と定義)による経済効果を調べた。同調査によると、AI投資によって、平均で開発者1人あたり年間およそ753時間の作業時間削減が実現している。これに開発者の平均時給、国内の開発者総人口を掛け合わせて、「年間およそ1兆6000億円」の経済価値を創出可能性があると試算している。また過去1年間で、AI活用によって65%が「生産性向上」、60%が「ビジネス成長」を実現した。大きな可能性が見えていることから、87%の回答者が「ソフトウェアイノベーションは事業運営の最優先事項」と考えている。
⇒ 日本の経営層も、AIを活用したソフトウェアイノベーションがビジネス成長の大きな原動力になっていることを認識しています。それゆえに、自律型AI(AIエージェント)のセキュリティや信頼性向上などへの懸念もまだ多くあります。なお、経営層が理想とする“人間:AIの協働比率”は「50:50」ですが、現実は「75:25」で大きなギャップがあるとのこと。
[AI][人材][スキル] ICT求人のおよそ8割に「AIスキル」の職務要件、スキル人材不足は深刻な水準に(シスコシステムズ、9月22日)
・G7諸国でICT関連50職種の求人を調査、78%に「AIスキル」の職務要件が存在
・「AIガバナンス」スキル需要は150%増、「AI倫理」も125%増
・生成AI、プロンプトエンジニアリングなどで「スキル人材の不足が危機的な水準」に
シスコが立ち上げたAI Workforce Consortiumによるグローバル調査より。直近1年間(2024年7月~2025年6月)のG7各国における求人データを分析したところ、ICT職種の78%に「AIスキル」の職務要件が見られたという。また、求人数が急成長しているトップ10職種のうち7割がAI関連職種(AI/MLエンジニア、AIリスク・ガバナンス専門家、自然言語処理エンジニアなど)だった。専門スキルを持つ人材の供給と雇用ニーズのギャップ(専門人材不足)は、生成AI、プロンプトエンジニアリング、AIガバナンス、AI倫理など、幅広いAIスキルにおいて、充足率30%未満の「危機的(Critical)な水準」に達しているという。
⇒ 前出のGitLab調査にあったとおり、企業はビジネス成長のためにAI活用を求めており、エンジニア求人にもそれが強く反映された結果と言えます。一方で、企業は責任あるテクノロジー導入を実現するために「ヒューマンスキル」(コミュニケーション、協働、リーダーシップ)なども重視するようになっている、という興味深い指摘もあります。
G7各国における、求人数の多いICT職トップ5(出典:シスコシステムズ)
求人数が急成長しているICT職トップ10。7つがAI関連職種だ(出典:シスコシステムズ)
AI関連職の多くが、雇用ニーズに対する充足率30%未満の「危機的(Critical)」水準にある(出典:シスコシステムズ)

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