【JSTnews9月号掲載】NEWS&TOPICS 戦略的創造研究推進事業ACT-X/研究領域「環境とバイオテクノロジー」/研究課題「機能性ナノカーボン材料の高効率生産を指向した生体触媒の創製」
「生体システムを用いた機能性分子創製」により昆虫の体内でナノカーボンを合成
2025年09月16日 12時00分更新
材料科学分野ではこれまで、従来の有機化学や酵素を用いた試験管内での合成法によって機能性分子を合成してきました。しかし、有用な分子の中にはこうした方法での合成が難しいものも存在します。理化学研究所の伊丹健一郎主任研究員、名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所の宇佐見享嗣特任助教らの研究チームは、昆虫が持つ異物代謝の仕組みを利用して、その体内で機能性ナノカーボンを合成させることに初めて成功しました。
研究チームは「メチレン架橋[6]シクロパラフェニレン([6]MCPP)」というベルト状ナノカーボンを人工飼料に混ぜて、農業害虫として知られるガの一種であるハスモンヨトウの幼虫に経口投与。2日後にこの幼虫の排せつ物から、[6]MCPPに酸素原子が導入された[6]MCPP-オキシレンを抽出・精製しました。この合成物は[6]MCPPにはなかった蛍光特性を獲得していました。
同チームはさらに、[6]MCPPを食べた幼虫の腸に対するRNA解析や、大腸菌を用いた異物代謝試験などを実施し、反応メカニズムを調べました。その結果、シトクロームP450という代謝酵素が[6]MCPPの酸素原子導入に関与していることがわかりました。また、酸素原子は特定の環サイズのナノカーボンだけに導入されていました。
今回の昆虫内ナノカーボン合成の反応メカニズムは、前例がなく革新的です。これを足がかりとして、材料科学に「生体システムを用いた機能性分子創製」という新しい方法論を提唱するものです。
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