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“DeNAの開発チーム流アジャイル”が突破口に【CEDEC2025レポート】

「ポケポケ」開発チームが直面した“いつまでも完成しない問題” リモート×大規模な組織づくりの難しさ

2025年08月04日 10時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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「イニシアチブ制」でオーナーシップとコミュニケーションを改善

 ポケポケ開発チームが、課題解決のために目指したのは、「オーナーシップが持ちやすく、コミュニケーションも取りやすい組織」への転換だった。

 そのために始めたのが「イニシアチブ制」と名付けたやり方だ。この名前は、DeNAが利用するタスク管理ツール「Jira」の用語からとっている。「普段使っている言葉を名前にすることで、理解しやすく、これまでのやり方からの差分をなくした」と今別府氏。

 イニシアチブ制では、総合ディレクターを頂点としたピラミッド型の組織(開発途中でこの形に移行していた)から、20名~30名程度の「イニシアチブチーム」を複数持つ組織に移行した。各イニシアチブチームは、「パック開放」や「バトル」「ゲットチャレンジ」といった機能単位で組成されており、オーナーであるプランナーを中心に、機能を開発するためのすべての職能が所属する。

イニシアチブ制

 総合ディレクターである竹内氏は、各イニシアチブチームのオーナーに対して、改めて「コンセプト」や「ターゲット」、それを踏まえた「機能のUX」「(暫定的な)具体的仕様」までを伝える。ここで、各チームとオーナーには、仕様ではなく「UXの実現を期間内に達成すること」に責任を持たせるのがポイントだ。要求されたUXが満たされるのであれば、具体的な仕様は各チームで自由に変更してよい。

 タスク管理は、個々のチームメンバーが能動的にタスクを洗い出す形で運用する。オーナーは、常にUXを意識しながら仕様を詳細化しつつ、タスク漏れや別案が生じた際に判断を下す。

イニシアチブ制でのタスク管理

 イニシアチブチーム内での開発の流れは、次のとおりだ。

 まず準備段階では、オーナーが仕様書を作成して、それを基にUIデザイナーが画面遷移図を作成する。そして、チーム全員が出社して対面形式のキックオフを開催。仕様書を読み合わせ、考慮すべき点や記載漏れを指摘して、実装方法などをすり合わせる。

 開発期間に入ると、毎週または隔週ペースで進捗確認会を実施。実際にUXが実現されているかを確認し合い、タスクやスケジュールも調整する。そして開発終盤には、再び全員で出社してプレイ会を開催し、演出や音なども含めた最終調整を行う。

開発全体の流れ

 このような体制にしたことで、チームはどう変化したか。

 まずは、関係性が薄い人が増える中、一部でコミュニケーション不全が発生していたのを解消できた。各イニシアチブチームを、リモート会議でも全員が意見を言える程度の人数で組成したことによって、メンバー間の距離が近づき、議論が活発で和気あいあいとしたチームに変化したという。

 また、イニシアチブオーナーに多くの権限が譲渡されたことで、チーム内での意思決定が可能となり、相談や確認が集中していた総合ディレクターの負担も減った。「序盤は、設定したUXとズレていくチームもあり、私が介入する場面もあったが、やがて慣れてくると安心して任せられるようになった」と竹内氏。

 そして、少人数で責任を明確化し、「期間内にUXを実現する」というゴールを設けることで、希薄だったUXや完成に対する意識も変わっていく。その結果、機能のクオリティも上がり、タスクの遅延も解消した。

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