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CSRじゃない。NPOと組む“本気のサステナ戦略”が注目される理由

支援先ではなくパートナーへ。企業の挑戦を支える新しい協業のかたち

連載
羽山友治の【新規事業が動く思考スイッチ】

著者紹介●羽山 友治(はやま・ともはる)
スイス・ビジネス・ハブ 投資促進部 イノベーション・アドバイザー。10年以上にわたり、世界中のオープンイノベーションの研究論文を精査し、体系化。戦略策定・現場・仲介それぞれの立場での経験を持つ。著書に『オープンイノベーション担当者が最初に読む本:外部を活用して成果を生み出すための手引きと実践ガイド』がある。

「NPO=ボランティア」 の認識はもう古い

 「NPOってボランティア団体でしょ?」「ビジネスと関係あるの?」と思っている方も多いかもしれない。

 しかし今、企業とNPOが手を組んで社会課題に取り組むケースが増えている。サステナビリティやSDGsのような複雑なテーマでは、「専門性」と「現場感覚」を持つNPOが、心強いパートナーになるのだ。

イノベーションの源としての“非営利”というかたち

 実際、非営利組織が革新的な成果を生み出す例は珍しくない。AI開発で注目を集めるOpenAIも、もともとは非営利団体としてスタートした。

 「人類全体に利益をもたらすAIの開発」をミッションに掲げ、利益よりも公共性を重視していたことが、その後の技術的ブレークスルーにつながったとも言われている。

 こうした例は、NPOや非営利組織が単なる“支援団体”ではなく、社会や産業にインパクトを与えるイノベーションの源になり得ることを示している。

NPOが持っている“企業にないもの”

 ある調査では、NPOにはこんな強みがあるとされている。

  • 社会課題を見つけ出す力

  • 少数派の声に耳を傾ける姿勢

  • 市民からの信頼

  • 本気で社会を変えようとする熱意

 こうした特性は、多くの企業がなかなか持ちづらいもの。だからこそ、協業することで互いの弱みを補い合える関係になれる。

共創のカギは「信頼」と「歩み寄り」

 NPOと企業の協業には、文化の違いもある。NPOは丁寧に信頼関係を築くことを重視するし、スピードよりも納得感を大事にすることが多い。

 企業側としては、NPOを「支援する相手」ではなく、「一緒に課題を解決するパートナー」として捉えることが重要だ。共創がうまくいくと、NPOの柔軟さと企業のリソースがかけ合わさり、想像以上の成果につながることもある。

“まとめ役”としてのNPOに注目

 最近では、NPOが地域や分野を横断する“まとめ役(メタガバナー)”として注目されている。

 例えば、ある地域のSDGsプロジェクトでは、行政・企業・住民など、バラバラな立場の人たちをうまく束ね、プロジェクトを前に進めたのがNPOだったという事例もある。

 資金集めの経験が豊富なNPOだからこそ、関係者の多様なニーズを調整するのが得意なのだ。

日本でも協業の広がりに期待

 現時点では、企業とNPOをつなぐ仕組みはまだ少ない。それでも、NPOと協業する大企業は少しずつ増えており、今後は専用のマッチングサービスが出てくる可能性もあるだろう。

 一方で、そもそも欧米諸国を筆頭とした海外と比べて、NPOの数が少なく規模が小さいという問題もある。この点に関して、企業が積極的に協業することで、NPOを育てていく姿勢があってもよいのではないか。

 新規事業やサステナビリティ施策を考えるなら、NPOとの協業は十分に“あり”な選択肢だ。地域に根ざした活動をしているNPOとタッグを組めば、机上の計画を、現場で実行できる形に落とし込む力にもなる。

 「社会のために動きたいけど、どうすれば?」と悩んでいる企業にとって、NPOは次の一手を共につくるパートナーかもしれない。


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