最高画質と中程度の画質で歴代xx60番台GeForceと性能比較
GeForce RTX 5060をゲーム11本でベンチマーク、「これでいい」と「VRAM 8GBはつらい」のせめぎ合い
2025年05月24日 11時00分更新

レビュー用に調達したASUS製「DUAL-RTX5060-O8G」。本稿執筆時点における実売価格は6万円前後
2025年5月20日、日本国内における「GeForce RTX 5060」(以降、RTX 5060と略)の販売がはじまった。NVIDIAが発表した国内予想価格(いわゆるMSRP)は5万5800円だが、今回はMSRPを割り込んだ5万4000円〜5万5000円前後のモデルも登場する異例のスタートになった。
RTX 5060の仕様については、すでにプレビュー記事で、ベーシックな性能・クリエイティブ系アプリおよびAI系のパフォーマンスについては前編で解説済みだ。RTX 5060はRTX 4060に比して、SM(Streaming Multiprocessor)が25%も増えている。
また、カードが利用できる電力(TGP:Total Graphics Power)も引き上げられているため、素の性能はRTX 4060より概ね20%程度高くなっている。ただし、VRAM搭載量が8GBなので、大きな学習モデルの利用には制限がかかるなどの弱点があることがわかっている。
後編となる本稿では、ゲームにおけるパフォーマンス検証を試みる。RTX 5060 Ti 8GBレビューでも書いたように、近年のAAAタイトルではレイトレーシング(特にパストレーシング)やテクスチャーの精細度を上げるために、VRAMを多量に消費する傾向がある。
ゆえに、VRAM 8GBではフルHDですら動作に支障をきたす場合が出てくる。そのため、RTX 5060 Ti 8GBのレビューでは「VRAM 8GBに“理”はない」と結論づけた。一方で、画質をやや下げてVRAMへのプレッシャーを減らした状態なら、十分なフレームレートになることもわかっている。
RTX 50シリーズ最大の武器であるDLSS MFG(Multi Frame Generation:マルチフレーム生成)を利用すれば、旧世代GeForceとは比較にならない性能が期待できるだろう。何よりRTX 5060は「比較的」安い。誰しも最高画質でプレイするわけではないし、価格次第では十分アリの選択肢になり得る。
というわけで、今回も「画質やや抑えめ」と「最高画質」という2つの視点から検証する。果たして、RTX 5060は歴代「GeForce xx60番台」に対し、どこまで差をつけることができるのだろうか?
VRAMの容量(6GB、8GB、12GB、16GB)にも注目
検証環境はプレビューおよび前編記事とまったく同じである。RTX 5060との比較用に旧世代からRTX 4060、RTX 3060、 RTX 2060を準備。RTX 3060やRTX 2060は登場時期により複数のバリエーションがあるが、RTX 3060はVRAM 12GB版(RTX 3060 12GBと表記)、RTX 2060はVRAM 6GB版になる。
そして、上位モデルのRTX 5060 TiはVRAM 16GB版と同8GB版の2モデルを用意した。RTX 4060との世代間性能差も気になるが、RTX 5060 Ti 16GBやRTX 3060 12GBといった“VRAM容量における格上モデル”との対決も見どころになるだろう。
GPUドライバーはRTX 5060のみGameReady 576.46、それ以外のGPUについてはGameReady 576.40を使用している。Resizable BARやSecure Boot、メモリー整合性およびカーネルモードのハードウェア適用スタック保護、HDRなどはひと通り有効化。ディスプレーのリフレッシュレートは144Hzに設定した。
検証環境 | |
---|---|
CPU | AMD「Ryzen 7 9800X3D」(8コア/16スレッド、最大5.2GHz) |
CPU クーラー |
EKWB「EK-Nucleus AIO CR360 Lux D-RGB」 (簡易水冷、360mmラジエーター) |
マザー ボード |
ASRock「X870E Taichi」(AMD X870E、BIOS 3.20) |
メモリー | Crucial「Crucial Pro CP2K16G56C46U5」(16GB×2、DDR5-5600で運用) |
ビデオ カード |
Palit「GeForce RTX 5060 Ti Infinity 3 16GB」(16GB GDDR7)、 ZOTAC「ZOTAC Gaming GeForce RTX 5060 Ti 8GB Twin Edge OC」(8GB GDDR7)、 ASUS「DUAL-RTX5060-O8G」(8GB GDDR7)、 MSI「GeForce RTX 4060 VENTUS 2X BLACK 8GB OC」(8GB GDDR6)、 ZOTAC「ZOTAC Gaming GeForce RTX 3060 Twin Edge OC」(12GB GDDR6)、 NVIDIA「GeForce RTX 2060 Founders Edition」(6GB GDDR6) |
ストレージ | Crucial「T700 CT2000T700SSD3」(2TB M.2 SSD、PCIe 5.0)、 Silicon Power「PCIe Gen 4x4 US75 SP04KGBP44US7505」(4TB M.2 SSD、PCIe 4.0) |
電源 ユニット |
ASRock「TC-1300T」(1300W、80 PLUS TITANIUM) |
OS | Microsoft「Windows 11 Pro」(24H2) |
重いゲームはVRAMに優しい設定でも試す
検証の解像度はフルHD(1920×1080ドット)、WQHD(2560×1440ドット)、4K(3840×2160ドット)の3通り。画質については「最高」設定のほか、VRAM 8GBという制約にあわせて「中」〜「高」設定でも計測した。
まずがRTX 5060 Ti 16GBの最高設定でテストし、フルHD時のVRAM平均使用量(「CapFrameX」で観測)が8GBを大きく超える場合は、なるべく「中」設定までにとどめて画質を調整。平均使用量が8GB以内に収まる場合は、画質を下げた設定の検証は行わないというルールにしている。

CapFrameXでフレームレートを計測すると、Sensor DataとしてVRAM使用量も得られる(GPU VRAM usageの項目)。この数値はゲームが本当に必要なメモリーなのか、形だけ確保だけしたメモリーなのか一概に判別できないものの、GPU性能を出し切れる設定を見極めるヒントにはなる
その他のテスト条件は以下の通りである。
(1)PCI Expressのリンク速度はGen 5とする
(2)CapFrameXを利用し、「MsBetweenDisplayChange」基準で計算する
(3)DLSSやFSR 3を利用する場合は「クオリティー」設定とする
(4)DLSS FGが利用できないGPUはFSR 3 FGを利用する
(5)DLSS MFGを利用する場合は「3x」設定とする
(5)についてはRTX 5060の地力と、「Indiana Jones and the Great Circle」のプレイフィーリングと相談して決定したものである。RTX 5060でも軽いゲームなら「4x」設定でも遅延を感じずにプレイできるが、設定の統一性を重視した(事故防止でもある)。
「Apex Legends」
APIはDirectX 12、個別の画質系設定をすべて最高に設定。射撃訓練場における一定の行動をとった際のフレームレートを計測した。
RTX 5060 Ti 16GBよりも同8GBのほうが伸びた理由は、後者が高クロック動作のファクトリーOCモデルだからである。VRAM搭載量が問題にならない状況では、クロックの高いほうが勝つという単純な話だ。
肝心のRTX 5060はRTX 4060とRTX 5060 Tiの中間だが、RTX 5060 Ti寄りの位置に着地。フルHDではRTX 5060とRTX 5060 Ti 8GBの差が小さい(平均フレームレートで5%程度)が高解像度になるほど拡大しているが、フルHDではApex Legends側のキャップ(300fps以上は出せない)に起因する。
一方で、RTX 4060に対してRTX 5060は平均フレームレートで20〜30%増と、世代交代の効果がしっかりと見てとれる。SM数が増えてメモリー帯域も上がっているので、大きな性能差に仕上がったようだ。
上の表は「Pownetics v2」を用い、ベンチマーク中に消費したTBP(Total Board Power:ビデオカード単体の消費電力)と、10Wあたりのフレームレート(いわゆるワットパフォーマンス)を解像度別にまとめたものだ。
これまでのRTX 50シリーズのレビューと同様に、RTX 5060とRTX 4060ではワットパフォーマンスに大きな変化はない。しかしながら、RTX 3060 12GBやRTX 2060と比較した場合は大幅に向上していることがわかる。

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