全体的に音が整理されて聞き取りやすくなった
発売に先立って、その音も体験できた。ベースは深く、明確に、音の分離感が上がって、透明感が上がっているのが確認できた。従来機種のWH-1000XM5と比べると、M5は音が近く音像がくっきりと感じられるが、立体的なM6のサウンドを聞いた後では、少し平板な感じもある。
帯域バランス的には低音が結構強めに出る。一方で、ラップなど、人の声は聞き取りやすい。低音は量感がある。そう書くと、包まれるような迫力があるけれど少しボワッとしたものを想像する人もいるかもしれないが、そんなことはなく、楽器やパートとしてのまとまり感を感じさせつつ、個々の塊がしっかりと分離して聞こえるのがいい。
その結果として、楽曲制作時の意図、演奏のニュアンスなどがより明確に表現される印象だ。このタイトで明確なベースの表現に加えて、定位感も明確で、従来機種よりも一皮も二皮も剥けたような立体的な空間を感じるようになった。確実でかなり大きな再現性能のアップが、全体を通して得られた印象だ。
新機能も試してみた。シネマモードは、低域が少し強調される感じがある。また、空間の広さや音の動きがよりはっきり出てきて、セリフの明瞭さも増す形だ。シネマモードという言葉通り、映画を見る際に必要な音をハッキリ出すものと言える。音楽には向かなそうだが、ラップのようなセリフを聞く楽曲とは意外に相性がいいかもしれない。
ながら聞きに便利なBGMモードでは、ただ音が小さくなるだけでなく、耳から離れた場所で音が鳴る感覚がある。遠くのスピーカーから自然な音がなっているような感覚で、外音取り込みと組み合わせるとかなり効果的だ。外音取り込みは便利だが、音楽をしっかり聞きたい音量にすると、外音は聞けず、実はもう一つ役立たないというジレンマがある。BGMモードでは音が小さく、かつ遠くのスピーカーで鳴っているような感覚にはなるが、音楽自体はよく把握できる。自動外音取り込み、ノイズキャンセルと外音の量を調節できる機能と併用するとより効果的だ。
音のある空間と、その音のディティールを感じ取れるヘッドホン
WH-1000XM6は、空間をより自然かつ最適な形で再現するのに長けたヘッドホンであると感じた。これは信号処理の進化が大いに関係しているのだろう。また、ヘッドホンが音楽だけでなく映画や音楽など、多ジャンルで活用するデバイスに変わった現代を大きく意識した機能も搭載している。音楽自体もドルビーアトモスなど立体的な再現を重視する傾向がある中、空間再現が優れていることは、大きなメリットになる。
WH-1000XM5も非常に完成度の高いヘッドホンだったが、WH-1000XM6は基本性能、再現性能のさらに確実な進化を感じる仕上がりとなった。ぜひ一度体験してほしい完成度だ。
