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科学技術振興機構の広報誌「JSTnews」 第7回

【JSTnews5月号掲載】NEWS&TOPICS 研究成果/創発的研究支援事業(FOREST)  研究課題 「雌の生殖路における精子機能調節機構」

精子形成の正常プロセスが判明!男性不妊症の解明や男性用避妊薬の開発に道

2025年05月29日 07時00分更新

文● JST広報課 中川実結

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 日本を含む先進諸国では6組に1組のカップルが不妊に悩んでおり、その半数は男性に起因すると言われています。精子の形成過程では、精子細胞内の細胞質を除去する必要があり、この過程が正常でないと精子の頭部が折れ曲がり、卵子への受精が不可能になります。しかし、細胞質の除去制御機構については、これまでほとんどわかっていませんでした。

 大阪大学微生物病研究所の宮田治彦准教授らの研究グループは、精子形成において重要な役割を担うたんぱく質の「TEX38」と「ZDHHC19」が複合体を形成して安定化し、ZDHHC19が脂質修飾を行うことで、細胞質の除去を制御することを明らかにしました。また、 TEX38/ZDHHC19たんぱく質複合体が脂質修飾するたんぱく質も発見。このプロセスが精子の正常な形成に不可欠であることを確認しました。さらに、この複合体が欠損した精子細胞では、細胞質を正しく除去できないことを見いだしました。これにより、精子の頭部が異常に折れ曲がり、受精能力を失うと考えられます。

 精子形成の正常なプロセスが明らかになったことで、男性に起因する不妊症の原因解明や新しい治療法の開発に大きく貢献する可能性があります。また、今回発見したたんぱく質複合体の脂質修飾活性を特異的に阻害することで、男性用避妊薬の開発への道も開けました。男性不妊の診断や治療法に関する新たなアプローチが現れたことで、将来的には多くのカップルの不妊問題の解決や、効果的な避妊方法の提供に役立つことが望まれます。

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