連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第181回
IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 4月19日~4月25日
出社回帰でも求職者は“リモートワーク志向”強める/ソフト開発企業の倒産増加/米国の4割はトランプ関税支持、ただし……、ほか
2025年04月28日 08時00分更新
本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。
今回(2025年4月19日~4月25日)は、企業におけるAIツール利用の爆発的な増加と浮上する課題、“トランプ関税”に対する米国民の意識、「ビジネス成長にはサイバーセキュリティが不可欠」と考え始めたCEO、求職者で高まる「リモートワーク」志向、過去10年で最多となった国内ソフトウェア企業の倒産、についてのデータを紹介します。
[AI][機械学習][セキュリティ] 企業のAI/MLツール使用は前年比で30倍以上増加、「ChatGPT」が一人勝ち状態(Zscaler、4月24日)
・企業におけるAIツール使用は前年比3000%(30倍)以上に増加
・AIトランザクションの約6割はセキュリティリスクがありブロック
・サイバー攻撃にエージェント型AIやDeepSeekを悪用する攻撃者も
SSE(セキュリティサービスエッジ)の「Zscaler Zero Trust Exchange」プラットフォームで2024年2月~12月に処理された、5360億件以上のAIトランザクションを分析したレポートより。AIトランザクション全体の半分近く(45.2%)を「ChatGPT」が占め、ビジネスユースでも“一人勝ち”状態であることが分かる。AIトラフィックを業界別に分類すると、「金融/保険」(28.4%)、「製造」(21.6%)、「サービス」(18.5%)が上位だった。
⇒ データ流出、不正アクセス、コンプライアンス違反などのセキュリティリスクが検出され、SSEでブロックされたAIトランザクションがかなりの割合(59.9%)を占める点は気になります。業務利用を進めるうえでは、こうしたリスク対策も必須でしょう。
[経済] トランプ関税を米国人の約4割が支持、ただし半数近くは「関税の意味を誤解」(ロイター/イプソス、4月21日)
・米国人の39%が、米国が貿易相手国に課す10%以上の関税を支持
・46%が「関税は輸出国が支払う税金」と誤解、保守系テレビ視聴者は72%
・物価上昇の予想、「個人用電子端末/携帯電話」は77%、「自動車」は73%
米国トランプ政権が打ち出す相互関税政策について、ロイター/イプソスが政策発表直後の4月4日~6日に実施した世論調査より。調査対象は18歳以上の米国民1027人(共和党支持者268人、民主党支持者337人、無党派層321人)。82%が新たな関税政策を認知していた一方で、「関税は輸出国が支払う税金」と誤認している人が46%と多数を占めた(正しくは「関税を支払うのは輸入国側の企業/人」)。正答/誤答率が、支持党派や視聴メディアによって大きく違うことも明らかになっている。「今後6カ月間で物価が上昇する」と予想する人の割合は、品目により異なるものの、およそ7割前後だった。
⇒ 視聴するメディアによって、関税に対する理解に極端な“食い違い”があるという調査結果。ほかのさまざまな社会課題でも同じことが起きている可能性があり、この分断はかなり根深い問題と言えそうです。
「関税は輸出国が払う税金である」という説明の正誤を聞いた回答。緑=「説明は誤り」とした正答率、オレンジ=「説明は正しい」とした誤答率(左から、回答者全体、Fox/保守系メディア、ケーブルTV/全国紙、全国TV網、オンライン/地方紙、ソーシャルメディア/その他/視聴しない、という視聴メディアごとの分類)(出典:ロイター/イプソス)
回答者が今後6カ月間で値上がりを予想している製品分野。「パーソナルデバイス/スマートフォン」が77%でトップ、以下「自動車」「日用品」「家庭用品」「生鮮食品」も70%以上が値上がりを予想(出典:ロイター/イプソス)
[セキュリティ] 世界のCEOの85%が「サイバーセキュリティはビジネス成長に不可欠」(ガートナージャパン、4月22日)
・世界のCEOの85%が「サイバーセキュリティはビジネス成長に不可欠」
・61%が「サイバーセキュリティの脅威を懸念」
・「資産保護だけでは不十分、ビジネス目標達成に貢献するセキュリティを」と提言
世界のCEO/経営幹部456人を対象に、サイバーセキュリティについて尋ねた調査。61%のCEOが「サイバーセキュリティの脅威に懸念」を示し、85%のCEOが「サイバーセキュリティはビジネス成長に不可欠」と回答した。ガートナーではこの結果を、ビジネス活動におけるAIの役割拡大と、先端技術の調達/使用に関する政治的議論に「大きく影響されている」と分析している。
⇒ 同社アナリストは「サイバーセキュリティはもはや単なる防御ではなく、ビジネス成長の重要な推進力」になっていると指摘しています。CEOや経営層に対して「サイバーセキュリティの投資価値」を訴えるチャンスが訪れているようです。
[仕事][働き方] “出社回帰”ブームの一方で、求職者の「リモートワーク」志向は強まる(Indeed Japan、4月22日)
・求職者の「リモートワーク」検索は高水準を維持、2019年比で約3倍
・「フルリモート」の検索は2019年比で90倍以上、継続的に増加
・首都圏では「リモートワーク」、北陸地方では「フルリモート」ニーズが高い傾向
求人サイトのIndeedで、「リモートワーク」「フルリモート」をキーワードにした仕事検索の動向を調べた。「リモートワーク」の検索回数は2019年比で2.9倍、「フルリモート」は同90.9倍に増えている。地域別の特徴もあり、首都圏は「リモートワーク」、北陸地方(福井県や富山県)では「フルリモート」の検索が多い。沖縄県、長崎県、秋田県では「リモートワーク」「フルリモート」の両方が高かったという。
⇒ 国土交通省のデータによると、直近1年間のテレワーク実施率(2024年1月時点)は全国平均で15.6%と、2021年の21.4%から3年連続で減少。コロナ禍が明けて以降、“出社回帰”で減少が続くリモートワークですが、求職者の関心は現在でも高いことが今回の調査で分かりました。
[経済] ソフトウェア業の倒産が3年連続増加、2024年度は前年の1.4倍に(帝国データバンク、4月23日)
・国内ソフトウェア企業の2024年度倒産件数は220件、前年度比1.4倍に
・業界は好調でも倒産増加の背景は「人手不足」と「人件費の高騰」
・7割超が人手不足、賃上げ圧力も高まり中小/小規模事業者には逆風
国内ソフトウェア業(ソフト受託開発/パッケージソフトウェア業)における2024年度の倒産件数は220件と、3年連続で増加し、過去10年で初めて200件を超えた。その8割以上は従業員10人未満の小規模な企業だという。業界全体としては好調なものの、人手不足と人件費の高騰という“ダブルパンチ”を受け、特に賃上げ機運に追いつけない中小・小規模事業者に逆風が吹いているという。
⇒ 帝国データバンクでは、今後も深刻なエンジニア不足と人件費高騰を背景として、人材採用/育成が進まない企業では「厳しい局面が続くとみられる」としています。ソフトウェア業界が抱える構造的な問題の解決も必要そうです。

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