【レシート買取でバズったZ世代起業家】が次に挑む「あれ、保存しとけばよかった」をなくすアプリ
レシート買取アプリ「ONE」の山内奏人氏が仕掛ける “後悔しない記憶”のための新サービス「Savespace」とは?
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AIが情報を整理する時代
山内氏がSavespaceで挑戦するのは、情報管理の新しい形だ。
「昔から、人は情報を分類して整理することに苦労してきましたよね。分類学があるように、情報をどう扱うかは人類の永遠の課題です。でも、その主権を人間からAIに移してもいいのでは? それが僕らの提案です」
従来のディレクトリ構造に頼らず、AIを活用することで情報管理をより直感的なものにする。その考えが、Savespaceのコアにある。
「このアプリの比較対象になるEvernoteやNotionも、近しいことは考えているでしょう。フォルダ管理から脱却しようとしている。でも、僕らのアプローチはもっと徹底していて、“情報を一時的に入れられる箱”を作ることで、AIがユーザーに適した形で整理してくれるんです」
市場としては、コンシューマ向けのアプリではあるが、技術的な部分はB向けにも転用できると考えているそうだ。
「B向けに展開すれば生き残れる手応えはあります。逆に特定領域に最適化した後にコンシューマに展開するのは難しい。だからこそ、最初にコンシューマ市場で受け入れられることを重視しています」
2025年4月には1億円を資金調達し、投資家からの期待も高まっている。
「最初のシード資金調達を終えた後も、多くの投資家の方々から『次のラウンドはうちと一緒にやりませんか』と声をかけていただいています。こうした領域に本格的に取り組むスタートアップは少ない中で、しっかりと時間とリソースを集中させることに意義があると感じています」
また、Savespaceは、DAY1からグローバルがターゲットだ。
「まだ日本語版が作れておらず恐縮なのですが、それでも日本のユーザーの中には、すでにヘビーに使ってくださる方がいます。各国のユーザーが直感的に利用できるインターフェースを設計しているので、言語に縛られず広く展開できる手応えを感じています」
2度目のスタートアップ、そしてハードウェアへの挑戦へ
山内氏の新会社となる「あたらしいインターネット株式会社」では、広告モデルを超えた価値提供を目指している。
「ONEはアプリランキング1位を何度も獲得しました。でも、その先に何が残ったか? と考えたとき、社会の成長に本質的に寄与できていたか疑問が残ったんです。Savespaceでは、人間の能力を拡張するようなツールを作りたい。蒸気機関やメガネ、自転車みたいに、人間の可能性を広げるものを目指しています」
こうした思想を実現するために、ハードウェアの構想も進めている。
「ウェアラブルのクリップ型カメラを考えています。動画や音声は撮れないけれど、日常の画像をAIが記録し、“AIの目”としてユーザーを助ける。『冷蔵庫にトマトあったっけ?』『駅のポスターに何て書いてあったっけ?』と聞くと、AIが答えてくれる。まるで外部記憶装置のような存在です」
技術的には実現可能であっても、課題は価格と社会受容性だ。
「例えば2万円以下で提供するには、技術的なハードルがあるし、プライバシーの問題も慎重に考えなければならない。でも、10年前と比べれば、社会の考え方は変化しています。防犯カメラの普及やドライブレコーダーの一般化によって、プライバシーと利便性のバランスは以前より柔軟に受け入れられています」
次々とアイデアを話してくれるので、少し心配になってきた。知財についてはどう考えているのだろうか。
「今回はハードウェアなので、最低限は知財で守らなければいけないとは考えています。ですが、潤沢な資金があるわけではないので、知財に投資するよりはユーザーの価値に投資したい。戦うべきは、思想とコンセプト。僕たちが目指すのは、社会にとって本当に意味のあるプロダクトを生み出すことです」と山内氏。
情報の整理は、人類が長く向き合ってきた課題だ。Savespaceがもたらすのは、単なるストレージではなく、人間の記憶の拡張だ。人が見逃したものすら保存され、最適なタイミングで表示されて価値を発揮する、そんな新しい情報管理の形が当たり前になる日は近いのかもしれない。
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