金融分野で新事業を多数展開。UPSIDERが考える”攻めと守り”の魅力を聞く
「挑戦者を支える世界的な金融プラットフォームを創る」を掲げるUPSIDERは、法人向けのクレジットカード発行や請求書カード払いサービスなど複数の金融サービスを提供しています。金融業は法規制への対応や信頼性が求められるため、スタートアップとしては参入障壁の高い分野です。こうした環境で、エンジニアとしてどのような活躍の場面があるでしょうか。決済領域におけるエンジニアリングマネージャー兼テックリードである関野様と、新規事業におけるBPOサービス開発チームのエンジニアリングマネージャーである増元様にお話を伺いました。(本文敬称略)
金融系スタートアップへの挑戦
マスクド:UPSIDERのエンジニアチームは、どのような体制になっていますか。
増元:エンジニアを含めた開発チームは全体で100名ほどになります。開発者だけでなく、サポートや品質感などのメンバーも含めた人数です。
マスクド:法人向けクレジットカード事業においては、法規制や信頼性など特有の課題があります。こうした課題について、どのように解決されていますか。
関野:法律の遵守はもちろんですが、金融業界における既存ルールや慣習にも対応しなければいけません。クレジットカード業界は外部のステークホルダーが非常に多く、カード会社や加盟店に加えて「アクワイアラー」と呼ばれる加盟店の管理や開拓を行う会社にも対応しています。技術的な面ではクレジットカード特有のプロトコルがあり、ここが非常に厄介です。例えば1980年代頃に作られた仕様が現在でも使われており、歴史の長いルールに適応しなければいけません。こうした課題を乗り越えて、サービスを提供しています。
マスクド:法人向け金融業では小さなミスも大きな影響を及ぼす可能性があります。過去には不備もありましたが、エンジニアチームは、失敗をどのように乗り越えてきましたか。
増元:ミスが発生すると「これはダメ!あれもダメ!」と規則を厳しくしがちですが、大事なことは「なぜ問題となるのか?」を考えることです。問題が発生した場合はエンジニアもお客様と同じ立場で考えて、どのように解決するかを考えます。サービスを一旦停止したりコードを修正するだけではなく、組織としてどのように解決すべきかを、エンジニアだけでなくビジネスチームやカスタマーサポートのメンバーと一緒に考えて解決しています。
意見の衝突はありますが、むしろ衝突を歓迎する文化だと思っています。立場や意見が異なっても、会社として取り組むべき方向は同じです。そこでお互いを理解しながら遠慮せずに意見を出し合って、会社としてベストの形を作り上げて問題を解決してきました。これまで取り組んだ事例としては、リリースまでの承認手続きが複雑化して、開発サイドに不満を抱く状況がありました。そこでどうすれば安全にリリースできるかについて、承認側とエンジニア側の立場ですり合わせながら、手続きを効率化する取り組みがありました。以前はリリースに最低2週間かかっていましたが、現在は影響が限定的な変更や軽微なものであれば1日でもリリースできるようなフローが整いました。
金融系出身のエンジニアは2〜3割
マスクド:採用について、お伺いします。UPSIDERでは幅広い経歴の方が入社されているとのことですが、どのような経緯で採用される方が多いのでしょうか。
増元:採用窓口は転職エージェント様、自社ホームページからの直接応募、知り合いを通したリファラル、スカウト媒体などでさまざまです。入社いただく方のうち金融系出身は2〜3割程度で、業態としてはSIerや事業会社出身の方が多く、雇用形態も正社員からフリーランスなど幅広いです。
入社の理由で多く挙がる点としては「世界的な金融プラットフォームを創る」というミッションへの共感が多く、チームの雰囲気や所属するエンジニアの人柄で決めたという人という声もいただきます。この点は入社いただく方と会社にとって、重要な点だと思います。
マスクド:昨今において生成AIはエンジニアにとって、重要な存在になっています。UPSIDER様では、どのように活用されていますか。
増元:弊社は生成AIに対して寛容な組織なので、エンジニアではコード生成やコードレビューなどさまざまな場面でほぼ全員が使っています。すでに開発生産性が向上しており、今後もさらに影響があると思います。一方で金融に関わる立場として、セキュリティーや品質を最優先として注意しなければいけません。AIの動作であっても、情報漏洩や間違ったコードは避けなければいけないため、AIを許容できる部分と間違えてはいけない部分を見極めながら、細心の注意を払って人間が必ず確認をしています。
フルリモートを前提とした組織運営
マスクド:コロナ禍を経て働き方がリモートから出社回帰に流れています。UPSIDER様ではフルリモート・フルフレックスが可能で、遠隔地で働くことが前提となっています。チームをまとめる上で、どのような取り組みがありますか。
関野:まず組織体制としてはエンジニア以外にも、カスタマーサポートやデザイナーや品質管理のメンバーもいます。「ビジネスサイドとエンジニアサイド」ではなく、プロダクトに関わるチーム全体として考えることが必要です。そのうえでリモートだからこそ、メンバー全員がSlackやNotionを使いこなして情報共有ができる前提になっています。社内ツールに情報が集約されてコミュニケーションもできるので、オフィスで会議をする必要はありません。こうしたリモートワークを前提とした情報共有や意思疎通ができる柔軟さが強みだと思います。
マスクド:リモートや出社に関係なく、スピード感のある組織ということでしょうか。
増元:まず新規事業の創出ペースが早いため、必然的に目標達成の基準は明確かつ高い数値となります。そのためあえて決められたオペレーションなどを作り込まずに、常に状況に応じて最適なものを求め続けるスピード感があります。社内組織は半年に1回見直しており、より最適な形を目指して試行錯誤しています。こうして意図的に雰囲気が変わる状態を維持しながら、目標管理や組織構造を固めていければと考えています。
今後の取り組みや新規事業の展開についてアイデアはいろいろありますが、企業における決済やお金の管理をよりシームレスにして、決済データを起点に業務フローを効率化していきたいです。例えば会計知識が少ない経営者でも安全に決済を利用できる仕組みや、経理部門が日々の業務に忙殺されず本来取り組むべき作業に取り組める時間を増やすなどを考えています。
規制の厳しい金融だからこその「攻め」と「守り」
マスクド:法人向けクレジットカード事業では、堅牢性や安定性など目に見えにくい部分が重視されます。また、利用者の顔が見えにくい点も考えられますが、どのような面でエンジニアとして魅力があるでしょうか。
関野:エンジニアとしての面白さや挑戦できる点として、堅牢性を担保することはユーザー体験や革新的な新機能を提供するのと同じぐらいやりがいがあると考えています。新機能やUI/UXが「攻め」であれば、堅牢性や安定性は「守り」となりますが、我々は攻めも守りも非常に重視しています。特に金融という複雑なサービスにおける守りは、さきほど申し上げた通り、さまざまな点を考慮しなければいけません。技術的な困難だけでなく、お客様の目線とエンジニアの目線で考える必要もあります。特にセキュリティーは不正利用対策として、悪意を持った攻撃者という第三者の目線を持たなければいけません。そのうえでどうやって安全性を確保するかを考えながら開発するのはエンジニアとして挑戦しがいのある領域だと思います。
マスクド:すでにUPSIDERが提供するサービスは2024年9月時点で6万社以上に導入されており、クレジットカードもさらに大規模なプロダクトに成長していきます。同時に組織も大きくなる中で、エンジニアにとってどんな魅力があるとお考えですか。
関野:金融という難しい分野に向き合いながら、新しいものを作れることです。クレジットカードや決済における制約に縛られるだけでなく、本当にUPSIDERが提供すべきものを考えて実現するおもしろさがあります。一人一人のエンジニアにとって、難しいことも新しいことにも挑戦できる環境が強みですね。
増元: プロダクトを提供するうえで、金融系では利用者の声が伝わりづらい印象があります。ですがUPSIDERでは利用者から頻繁にフィードバックをいただく機会が多く、セールスメンバーから聞けることもあれば、SNSやユーザーコミュニティ「UPs」を通して直接声をいただけます。エンジニアとして自分が開発に関わったサービスのフィードバックをもらえるのは、魅力的だと思います。
あとがき
法人向け金融は巨大な市場規模でありながら、スタートアップにとっては参入障壁が高い分野です。法人向けクレジットカード決済としての実績を出しつつ、新たな事業への挑戦を続けるUPSIDERにおいて、エンジニアとして活躍できる場面は更に増えていくでしょう。「攻め」と「守り」のどちらも重視しながら、世界的な金融プラットフォームという壮大な目標に取り組む面白さを感じた取材になりました。
マスクド・アナライズ
空前のAIブームに熱狂するIT業界に、突如現れた謎のマスクマン。
現場目線による辛辣かつ鋭い語り口は「イキリデータサイエンティスト」と呼ばれ、独特すぎる地位を確立する。
"自称"AIベンチャーを退職(クビ)後、ネットとリアルにおいてAI・データサイエンスの啓蒙活動を行う。
将来の夢はIT業界の東京スポーツ。
最新書籍「会社で使えるChatGPT」が好評発売中!