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連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第174回

IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 3月8日~3月14日

今年のIT市場は大都市圏で高成長へ/ITレジリエンスに世界との格差/2024年のスマホ市場はわずかに成長、ほか

2025年03月17日 08時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。

 今回(2025年3月8日~3月14日)は、国内企業の生成AI活用動向、国内IT市場の2025年予測、ITシステム運用にまつわる自動化/AIなどへの意識と課題、企業の従業員健康管理市場、国内携帯電話/スマートフォン市場の最新動向に関する調査を紹介します。

[生成AI][DX][セキュリティ] 生成AI、利用企業の8割超が「日常業務で効果を感じる」(JIPDEC:日本情報経済社会推進協会/アイ・ティ・アール、3月14日)
・45%の企業が生成AIを日常的に業務利用
・84%の利用企業が「日常業務の効率化の効果を認識」
・DX推進企業の52%が「業務のデジタル化・自動化」で成果を認識

 国内1110社のIT戦略/情報セキュリティ施策担当者を対象とした「企業IT利活用動向調査2025」より。生成AIの業務利用については、「全社的に利用が推奨され、幅広い業務で使っている」(15.9%)を含む45.0%がすでに日常的な利用を始めており、「一部部門で試験的に利用し、効果を検証している」も26.3%に達している。生成AIを日常的に利用する企業では、「日常業務(電子メール、資料作成、調査)」において合計84%が「効果が出ている」と感じているという(45.2%が「非常に」、38.8%が「ある程度」)。一方、DX実践の成果については、社内業務や働き方に関する「内向きのDX」で成果を認識する企業が多かった。

 ⇒ この調査では、ほかにも「ランサムウェア被害」「テレワーク/出社の状況」「プライバシーガバナンス」など広範なデータが取り上げられています。プライバシーガバナンスの取り組みについては、経済産業省/総務省が“取り組むべき3要件”と示した「責任者を任命」(37.9%)、「組織の姿勢を明文化」(32.9%)、「プライバシー保護のための組織を設置」(32.4%)が進んでいるそうです。

業務ごとの生成AI活用効果(出典:JIPDEC/ITR)

DXの取り組み内容と成果の状況(出典:JIPDEC/ITR)

ランサムウェアの侵入経路(出典:JIPDEC/ITR)

[IT支出] 2025年の国内IT市場、特に大都市圏では高成長を予想(IDC Japan、3月11日)
・2025年の国内IT市場規模は、前年比8.2%増の26兆6412億円を予測
・地域別でも全地域で拡大、特に大都市圏(東京+関東、東海、近畿)は高成長
・大都市圏以外では、費用対効果からパブリッククラウド採用が進まない

 国内IT市場の地域別予測。2025年はすべての地域で市場拡大が予測されている。その背景には、人材不足対策/業務効率化を喫緊の課題として、多くの企業がデジタル化やデジタルサービス、既存システムのモダナイズに取り組むことがあるという。大都市圏(東京都、東京都を除く関東地方、東海地方、近畿地方)では高い成長率となる一方、それ以外の地域では、人口減による経済回復の遅れなどによって小幅な成長にとどまるとしている。

 ⇒ IDCでは「大都市圏以外では費用対効果からパブリッククラウド採用が進まない」など、地域別の細かな状況/ニーズの違いがあることも指摘。SIerなどのITサプライヤーは、それに適した最適なソリューション提案が必要だと提言しています。

国内IT市場 地域別 前年比成長率予測、2025~2028年(出典:IDC Japan)

[システム運用][AI] 「システム障害に耐えうる体制が整っている」日本の大企業は58%にとどまる(PagerDuty、3月14日)
・「システム障害に耐えうる体制整備済み」日本企業は58%、世界平均とギャップ
・日本企業の約71%が2025年のIT運用予算を増額予定
・「プロセス・ワークフロー自動化」「AIエージェント」などへの投資意向が強い

 大手企業のIT運用担当(年商5億ドル以上、1100人)を対象に実施したグローバル調査「2025年版システム運用の現状に関する調査結果」より。「システム障害発生時に耐えうる体制が整っている」とした日本企業は58%で、グローバル平均を15ポイントも下回った。障害発生時の迅速な対応で鍵を握る「システム運用の自動化」についても、一貫したIT自動化戦略を備える日本企業は約60%にとどまる(世界平均は約73%)。こうしたギャップを埋めるために、日本企業の71%が2025年のIT運用予算を増額予定であり、特に「プロセス・ワークフローの自動化(約68%)」「生成AI(約67%)」「AIエージェント(約66%)」などへの投資意向が強かった。

 ⇒ ITシステム運用は「自動化」や「AI」が効く分野であり、「AIエージェントがIT部門の幹部運用の中核的/補助的役割を果たす」と期待する日本企業は約90%に達しています。その一方で、自動化の拡大に対しては「データセキュリティ上の懸念」(38%)や「スキルトレーニング、人材の確保」(34%)などの懸念点も上がっています。

システム運用の現状について(薄い緑は日本、濃い緑は世界平均)(出典:PagerDuty)

AI活用に対する意識(出典:PagerDuty)

[生活] 企業向け健康管理市場、2023年度は前年比20%増の成長(アイ・ティ・アール、3月13日)
・国内の企業向け健康管理市場、2023年度は前年度比20%増の60億円規模に
・2024年度はさらに成長が加速、22.5%増を予測
・市場への参入企業が増加、2023~2028年度の年平均成長率は20.6%予測

 従業員の各種健康情報を管理する、国内の企業向け健康管理市場の規模予測。少子高齢化による人材不足が進む中で、従業員の健康リスクの低減、離職/休職の予防といった効果が期待できる健康管理システムへの注目が高まっている。2023年度は20%拡大して60億円規模に到達、2024年度はさらなる伸びが期待されている。市場に新規参入するベンダーも増加しているという。

 ⇒ かつては「過労死(karoshi)」が世界で知られる言葉になる不名誉な時代もあった日本。現在は従業員の健康に投資する「健康経営」が企業価値の向上につながるという意識が高まり、市場の拡大を後押ししています。

国内の健康管理市場規模推移および予測(出典:ITR)

[スマホ] 2024年の日本の携帯電話/スマホ市場、成長はごくわずか(IDC Japan、3月7日)
・2024年の国内携帯電話/スマートフォン出荷台数は2023年比0.3%増、3039万台
・市場シェア1位は変わらずアップル、出荷台数は前年比1.2%増
・2位シャープの出荷台数は7.9%増、ただし平均販売価格は7%以上減少

 2024年通期の国内携帯電話/スマートフォン(スマホ)市場は、出荷台数ベースで前年比0.3%の微増にとどまった。ただし、第4四半期(10~12月)は前年同期比3.2%増と持ち直しており、iPhone、Androidともに対前年同期比増となった。iPhoneは価格上昇にも関わらず、キャリアのキャンペーン対象となったことで好調。一方で、AndroidはFCNTの復活により活性化したが、平均販売価格(ASP)の押し下げ要因になっているという。2025年の市場動向については「基本的には2024年後半の水準を2025年も引き継いでいくと思われる」とコメントしている。

 ⇒ 3月初めにスペインで開催されたモバイル業界の展示会「MWC 2025」も、数年前のように“スマホありき”ではなくなり、エンタープライズ向け(企業向け)ITベンダーの出展が活発だったそうです。今後の市場変化に注目です。

2024年通年の国内スマートフォン市場、ベンダー別シェア(出荷台数ベース)(出典:IDC)

2020年-2024年の主要ベンダー別平均販売価格(ASP)の変遷(出典:IDC)

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