倒産ばかりの植物工場に光明。成功のカギは完全自動化
気候変動が進む中、食料の安定した生産に植物工場が期待されている。しかし、過去には多くの企業が植物工場に参入したが、電力や人件費のコストと価格が折り合わず、次々と倒産する現状が続いている。
そんな中、令和5年度のICTスタートアップリーグに採択されているHarvestX株式会社は、ロボティクス技術で植物工場の課題に挑戦している。同社はハチの受粉ロボット技術を核に、人工光型植物工場でのイチゴ栽培の完全自動化に取り組んでいる。HarvestXのソリューションは、イチゴの栽培設備、ロボット、運用ソフトウェアをパッケージとして販売し、育苗から収穫までをサポートするのが特徴だ。2024年5月には、パイロットプラントとして浜松ファームをオープンし、生産されたイチゴは「うなぎパイ」で有名な有限会社 春華堂へ導入されている。
これまでの植物工場が失敗した要因は、人手に頼った管理や高額な施設費にある。例えば、2023年に完全撤退したパナソニックの植物工場は廃工場の再利用が目的で、照明や空調機能は整っていたが、農法自体は従来とほとんど変わらなかった。その結果、栽培の専門知識や技術や持つ人材の確保に苦しみ、生産力や品質面でも従来の農業との差別化が図れずに終わった。
HarvestXの完全自動化された植物工場では、人件費の削減が可能となり、将来的な生産量次第ではコスト面のメリットが出せるという。完全な閉鎖空間を実現することで新品種の開発や生産技術の秘密保持にも効果的だ。製造業ではファクトリーオートメーションが当たり前となっているが、農業でもHarvestX式の植物工場がこれからのスタンダードになるかもしれない。
文:スタートアップ研究部
ASCII STARTUP編集部で発足した、スタートアップに関連する研究チーム。起業家やスタートアップ、支援者たちの活動から、気になる取り組み、また成長・成功するためのノウハウやヒントを探求している。この連載では、総務省のICTスタートアップリーグの取り組みからそれらをピックアップしていく。
※ICTスタートアップリーグとは?
ICTスタートアップリーグは、総務省「スタートアップ創出型萌芽的研究開発支援事業」を契機として2023年度からスタートした官民一体の取り組み。支援とともに競争の場を提供し、採択企業がライバルとして切磋琢磨し合うことで成長を促し、世界で活躍する企業が輩出されることを目指している。
https://ict.startupleague.go.jp/




























