スタートアップの経営を脅かす知財リスク、どうすれば回避できるのか?
「Sendai Startup Studio INNOVATOR'S MEETUP #5 スタートアップ知財の落とし穴 ~超話題Webショートドラマ「スタートアップは突然に」から学ぶその回避策とは!?~」イベントレポート
Season1最終回「共同研究は突然に…」(ライセンス契約の失敗)
<あらすじ>新型バッテリーを開発し、念願の大型契約を結んだナオトたち。導入先の製品はメガヒットとなり、ついに掴んだチャンスに浮かれるナオトたちだったが、その契約内容には大きな落とし穴があった。
高田氏:動画はコア知財を10万円で渡してしまった、というとんでもない契約でした。これは極端なケースですが、スタートアップ側に不利な条件で契約してしまった、という話はよく聞きます。このエピソードから学ぶべきところはどこにあるでしょうか。
井上氏:大企業側から契約を急かされる場合は、大抵ろくなことがありません。大企業からさんざん待たされて、資金が枯渇しそうな状況のときは、多少納得できない契約内容でも早く契約したい気持ちはわかります。しかし、大企業がスタートアップに考える時間を与えないのは怪しいので、いったん持ち帰って専門家に相談してほしい。「急かされたら持ち帰れ」はキーワードです。
駒井氏:共同研究などの契約書は、驚くほど大企業に有利な内容になっています。超大手企業でも、共同研究から新たに生まれた知見は全部自分たちが取る、というような内容になっていたりする。交渉がまとまらず、NDAが締結できずに案件にならなかったケースもいくつかあります。
井上氏:「ひな形から変えられない」という主張をされることもありますが、そんなわけがない。契約内容の変更を渋るような会社からは離れたほうがいい。NDAの段階から妥協してしまえば、以降の契約もひな形通りで押し切られてしまいます。最初からしっかりと主張することが肝心です。
駒井氏:我々スタートアップからすると、資金も時間もないので、早く通したいのが本音。我々がひな形を作って提出すると、先方の法務チェックで大量の赤字が入って戻されるので、なかなか進みません。ですから、先方のひな形をベースに、どうしても譲れないところだけを指摘して戻すようにしています。
高田氏:本当は、スタートアップ側から契約ひな形を出したほうがいいけれど、そのせいで時間を食うのであれば、相手側のひな形をベースにポイントだけ修正するのは現実的ですね。ただし、1点重要なことをお伝えします。NDAはお守りに過ぎないので、本当に出してはいけない大切な情報は、絶対に外に出さないようにすることです。また、連携先となるスタートアップのコア特許の周辺の用途特許を押さえるのは企業の常套手段。コア特許をもっていても用途特許がなければビジネスができないので、用途特許を自らも押さえていくことが必要です。
井上氏:共同研究でノウハウを共有すると、周辺技術や用途が知られてしまう。勝手に用途特許を出願されないように、契約内容に「改良発明があったときには通知しなければいけない」という条項を入れておくと安心です。
高田氏:ライセンス契約には、使用範囲や対価回収など、意外な落とし穴がたくさんあります。わからないとき、不安なときは、INPITに相談して専門家に支援を仰いでほしい。
Season2最終回「救世主は突然に…」(転職者の情報持ち込みで失敗)
<あらすじ>新たにモビリティ系企業を立ち上げたナオトたち。完成まであと一歩のところで、最後の壁にぶつかってしまう。そんな中、ある天才エンジニアを採用して製品は完成したが、前職の設計図を勝手に使っていたことが発覚する。
高田氏:退職者による情報漏洩には気を付けていても、入ってくる人のリスクは意外と盲点ですね。第2話は知らず知らずに他人の知財を盗用してしまうという事例でした。
井上氏:類似の事例では、回転寿司の運営会社の営業秘密を競合他社が不正取得したとして刑事訴訟になった事件があります。刑事事件になると、警察によってメールの履歴やSNS、クラウドストレージの情報まですべて調査されますし、民事上の損害賠償請求に加えて、罰金刑も科されます。
この動画のケースで最大の問題は、最初にチェックしていないこと。退職や中途採用の情報漏洩リスクを防ぐには、元の勤務先に対する秘密保持誓約書を交わすことが有効です。
高田:USBメモリーの取り扱いには注意してほしい。従業員が悪意を持っていた場合は情報漏洩・流入が防げないこともありますが、あらゆる情報漏洩対策を講じており、誓約書も交わしているのであれば、会社としての責任は免れる可能性があります。INPITでは、こうした秘密情報の適切な管理方法もご提案しています。ぜひご活用いただければ。
Season3最終回「共同研究は突然に…」(共同研究開始前の準備不足で失敗)
<あらすじ>二度目の倒産後、バイオ系企業でリスタートしたナオトたちは、老舗企業との共同開発を始めた。しかし、いつの間にかナオトたちの技術は勝手に特許出願されていた。
井上氏:共同研究開発では、契約自体に問題がなくてもこうしたトラブルは起こり得ます。ポイントは、動画の中で相手から「証拠があるのか?」と突き付けられるシーン。共同研究ではスタートアップ側の知恵が多く占めていても、老舗企業には20年来の研究実績があれば、21年目の研究成果だと主張されるとそれを覆せるだけの証拠は出しづらい。契約を交わした後で共同研究を進める中で、「ここまでは自分たちのアイデア」と明確に言えるように残しておかないと、裏切られて単独特許を出されても反論ができません。契約はもちろん、共同研究の進め方も極めて大事です。
駒井氏:以前、あるメーカーとの共同研究で契約する際、当然のように、共同研究で生まれた成果にも関わらず、特許を共有にすることを認めてくれないことがありました。よくよく話を聞いてみると、過去に共有特許を出したら、その特許が本業の製品にもひっかかり、かなりの使用料を取られたことがトラウマになっていたようです。その共同研究では、共有特許にはせず、研究成果ごとにどちらの単独特許にするように契約書で細かく取り決めて進めています。
高田氏:共有特許は第三者へのライセンスする際等に制約があるので、切り分けができるのであれば決して悪くない方法ですね。
共同研究は、お互いのバックグラウンドインフォメーション(共同研究開始前から保有していた情報)を特定したうえで始めないと情報の混濁が起こります。特に大企業は、こうしたことを悪意なくやってしまう。フロントの担当者は相手の技術だとわかっていても、バックの法務部や知財部は知らずに権利化してしまうことがあります。だからこそ、共同開発では開始する前にお互いのもつ技術情報を開示して、予めどちらの技術情報なのかを特定しておくことが大事なのです。
井上氏:大企業との共同研究では、競業禁止規定の禁止範囲についても注意が必要です。研究開発型スタートアップは多企業との連携が制限されると大きく成長できないので、あまりに独占欲の強い企業との契約は避けたほうがいいでしょう。
高田氏:共同研究の際は、まずINPITにご相談ください。知的財産の問題を整理したうえで、両者にメリットのある関係構築もサポートしてくれるので共同研究をスムーズにスタートできます。






























