世界を知る投資ファンド運営者が語る日本のスタートアップが勝つための選択肢
Carbide芳川裕誠氏×DG Daiwa渡辺大和氏×IT-Farm春日伸弥氏、クロスボーダーVC1万字対談
提供: XTC JAPAN
希望はディープテック。資金力と成長速度の課題にクロスバーダーVCが挑む
――中長期的なドメインとしてディープテックはどうでしょうか。
渡辺:チャンスはあると思います。しかし、成長の速度が海外に比べてまだまだ課題があります。成長速度をいかに早められるかを日々考えています。
芳川:ディープテックも米国や中国に比べると圧倒的に資金力が足りない。量は質を担保します。自国のことを悪く言いたくないけれど、「日本人はクオリティーが高い」、「ハードワーカー」というのは昔の話で、私たちは昔のような働き方を知らない世代。米国人のエリートは皆本当に勤勉だし、中国は昔の日本のような働き方をやっている。必ずしも永劫に普遍的ではないはずの日本の個性や特性そのものを、過大評価しすぎるのは違うのかなと思う。
春日:結局、売れるのはプロダクトで、コンピテンシー(能力や行動特性)が売れるわけではないですよね。
芳川:確かに日本人のエンジニアにも能力の高い方は多い。一生懸命だし、会社も辞めない。トレジャーデータは、米国で会社を立ち上げて、米国人のプロダクトマネージャーがコンセプト設計して、日本の優秀なエンジニアが実装して、それを米国人のマーケターと営業が売ることでじつはうまくいった。これは1分の1のケースでしかないけれど、仮にファウンダーとプロダクトマネージャーが日本にいたとしたら、うまくいかなかった気がします。
春日:ドメインによるかもしれませんね。製造業は日本でもいいですが、BtoBのSaaSなどは現地でプロダクトマネジメントしないといけないでしょう。
――今日のお話を受けて、クロスボーダーVCとしてこれから挑戦したいことをお聞かせください。
渡辺:ひとつはディープテック。もうひとつは、コンテンツビジネスもデータ分析やAIなどサイエンスの視点を加えれば日本の強みを存分に発揮できる産業だと思います。ディープテックは、技術革新や研究開発が重要な要素であり、日本の高い技術力を生かせる分野です。例えば、エッジコンピューティングやロボティクスなどに注目しています。
一方、コンテンツ産業はこれまで当たり外れのボラティリティが高いビジネスと思われがちでしたが、映像・漫画・ゲームに代表される日本が世界に誇る文化的資産にプラスして、データ活用により再現性を持たせることで、競争力を増大させることができると考えています。個人的には、これら2つのテーマを中心に見ながら、多くの日本のスタートアップのGO TOグローバルを助ける媒介役になりたいと考えています。
春日:私たちもディープテックをグローバルにスケールさせることに注力したいと考えています。ディープテックは手間も時間も金もかかるので、ディープテックこそ、小粒ではなく、大きな夢が必須です。
芳川:先程も触れましたが、AIのエンジニアに中国人が多いのは、中国の政策なのですかね。量が質を担保していて、クオリティーも非常に高い。いま米国では無数のAI企業が生まれていますが、そこで働く開発者は、中国本土出身者を中心に中華系の人が大変多い印象です。本当に優秀ですし、米国で教育を受けている人も多く米国人感覚も持っています。しかし、そこに中国政府の産業政策的意思があったとしたら……と考えると、日本も世界で勝ち得る特定のドメインに社会資源を集中投下すべきかもしれません。例えば、ディープテックに絞るなら、極端な話、核融合のエンジニアがフォーカスされた恋愛ドラマが制作されるようなレベルで、本当に社会全体で盛り上げていくといったアプローチも考えられるでしょう。
2月28日(金)10:30~、本体談のCarbide Ventures芳川氏とエヌビディア大崎真孝日本代表によるセッションが開催される
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