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世界を知る投資ファンド運営者が語る日本のスタートアップが勝つための選択肢

Carbide芳川裕誠氏×DG Daiwa渡辺大和氏×IT-Farm春日伸弥氏、クロスボーダーVC1万字対談

提供: XTC JAPAN

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米国起業か、大企業のチャネルに乗るか。世界で勝つための2つの選択肢

――日本のスタートアップにはどのようなチャンスがあるのでしょうか?

芳川:チャンスはありますが、残念ながら日本からは道が閉ざされています。なぜなら米国がスタートアップのルールを決めているからです。

 例えば、日本型のストックオプション制度は整備されましたが、米国には通用しません。米国では株価の算定方法がIRC(Internal Revenue Code:米国の連邦税法)セクションの409A条で決まっており、米国で従業員を抱える世界中のスタートアップがそのルールに縛られています。米国を通らないと世界に出られないとすると、スタートアップが世界で勝つには、そもそも日本ではなく米国で起業するべきだという結論に至ります。そして実際に優秀な人材の流出が始まっています。

春日:そこで力を発揮するのが、我々のようなクロスボーダーVCです。海外調達はグローバルで勝負するうえで必須ですが、いきなり日本の起業家が海外で調達するのは非常にハードルが高い。日米両方のロジックを理解し、橋渡しをしてジャンプを助ける投資家が絶対に必要です。

渡辺:商習慣や法規制も含めて丁寧に説明をしながら、トランスレーターとしての役割を果たすことが我々の役目ですね。

芳川:実際問題、日本人起業家が世界プレイヤーになるための現時点でのリアルな選択肢は、2つしかないかもしれません。1つは、そもそも日本で会社をやらないこと。例えばオンラインサービスや計算機まわりの商売であれば、絶対に米国で起業したほうがいい。

 もちろん例外はあって、日本の社会問題に直接刺さるビジネスであれば、日本で起業して海外展開する方法も成立します。例えば介護ビジネスにおいて日本は巨大なPoCの場であり、超高齢化社会の日本で醸成された介護テクノロジーは世界中で確実に売れるはずです。

 もう1つは、自分だけでやらずに巨大企業のグローバルチャネルを利用する方法。自社の力だけでグローバルナンバーワンプレーヤーにはなれないけれど、グローバルプレーヤーにはなれます。

渡辺:日本人としては後者のほうがなじみやすいのではないでしょうか。VCのポートフォリオバランスという視点で考えてみても、例えば3億ドルのファンドの場合、株式比率を10%程度取ることを想定すると、1倍を返すために大体30億ドルの大型IPOが1件必要ですが、それ以上のアップサイドは、ポートフォリオが巨大企業からM&Aされるチャンスを伺ってさらに積み上げを狙っていくという考え方であり、これは極めてリーズナブルです。

芳川:巨大な米国に対して、日本の小さなスタートアップコミュニティが戦うには、社会全体での取り組みが必要です。また米国のマーケットで軌道に乗ると、マーケティング費用を使わずとも世界中から引き合いが来るようになります。

渡辺:うまくいっている会社は最初からGo To Market(自社ビジネスを顧客に届ける計画や戦略)の盤面を整えて、そこにフィットしたプロダクトを作っているような気がします。モノを作ってから売りに行くのではなく、売りに行ってからモノを作るというくらいのマインドセットを持つことも必要かもしれませんね。

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