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連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第170回

IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 2月1日~2月7日

セキュリティ担当者の7割超が「AI悪用を深く懸念」/外国人エンジニア採用経験が8割超え/買い物客がセルフレジを好む理由は、ほか

2025年02月10日 08時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。

 今回(2025年2月1日~2月7日)は、激しさを増すMDR市場の競争、サイバー攻撃におけるAI悪用に対する意識、順調に成長を遂げる国内のノーコード/ローコード開発市場、スーパーマーケットなど小売現場のデジタル化と消費者の動向、外国人エンジニアの採用に関するデータを紹介します。

[セキュリティ][MDR] MDR市場は激戦区に! サービス提供側の差別化ポイントは?(IDC Japan、2月5日)
・MDR市場は激戦区、MSSPとセキュリティ製品ベンダーがせめぎ合う
・MSSP側は「一体的な運用サービス」「包括的な導入支援」などで差別化を図る
・競争力強化に向けて、AIの活用でコスト削減や省電力を実現する動きも

 エンドポイントセキュリティ製品のEDR(Endpoint Detection and Response)を、専門性の高いセキュリティ人材に運用アウトソーシングするMDR(Managed Detection & Response)サービス市場。従来SOCサービスを提供してきたSIer、通信事業者などのMSSP(マネージドサービスプロバイダー)だけでなく、EDR製品ベンダーも自らSOCを運用してサービス提供に参入し、市場でのせめぎ合いが起きているという。

 ⇒ 製品ベンダーとの激しい競争に勝ち残るため、MSSPでは「セキュリティとネットワークの一体的な運用サービス」や「オフィスソフトウェアやID管理製品を含む包括的な導入支援」などで差別化を図る動きが出ているとのこと。

MDRでは、EDR製品ベンダーとMSSPが競合関係にある(出典:IDC Japan)

[セキュリティ][AI] 72%のセキュリティ担当者が「サイバー攻撃へのAIの悪用」を「深く懸念」(カスペルスキー、2月7日)
・「過去1年で自社へのサイバー攻撃が増加した」が約8割
・半数近くが「攻撃にAIが利用されている可能性がある」と認識
・AI使用による攻撃への対策では「社内専門知識の強化」「高度人材確保」など

 情報セキュリティ担当者を対象としたグローバル調査より。サイバー攻撃が「この1年で増加した」とした回答者は世界全体で76%(日本は73%)。「攻撃にAIが使用されている可能性がある」とする回答が46%(日本は34%)を占め、これを「深刻な懸念事項」ととらえるセキュリティ担当者は72%(日本66%)に及んでいる。AIを使った攻撃への対策について、重要性の高いものを尋ねると、「定期的なトレーニングによる社内専門知識の強化」(全体92%、日本82%)、「高度な専門知識を持つ人材の確保」(全体91%、日本81%)、「外部のサイバーセキュリティ専門家の支援」(全体90%、日本91%)などが上位だった。

 ⇒ 対策について世界と日本のギャップに注目すると、日本は社内の知識強化や高度人材確保よりも「外部専門家の支援」を重要視する回答者が多いのが特徴です。ただし、実態を尋ねると「外部専門家の支援を活用していない/できない」が68%(全体は56%)となっており、理想と現実の間にもギャップがあるようです。

AIを使用したサイバー攻撃への対策として重要と考えるもの(出典:カスペルスキー)

AIを使用したサイバー攻撃への対策を実施する機会(出典:カスペルスキー)

[小売] 買い物客の約8割は「スピード」を理由にセルフレジを好む(日本NCRコマース、2月5日)
・米国消費者がセルフレジを好む最大の理由は「スピード」
・スーパー店舗側は、42%がセルフレジでの商品損失(スキャン漏れなど)を目的にスマートカメラ導入
・レストランに導入してほしいテクノロジーは「セルフサービス端末」(39%)、「テーブルトップオーダー」(37%)

 米国在住の消費者1044人を対象にした、スーパー、コンビニ、飲食店における購買行動調査。スーパーでセルフチェックアウトを選ぶ買い物客の最大の理由は「スピード」(77%)、セルフレジ利用比率が高いのは「Z世代(18~29歳)」(63%)など、納得できる結果。セルフレジでは、商品のスキャン漏れのような商品損失が起こりうるが、店舗側では「スキャン漏れを検出して再試行を促すカメラ」(42%)、「(バーコードのない)野菜や果物を認識するスキャナー」(32%)といったスマートテクノロジーの導入で対策をとっているという。

 ⇒ 日本でもやっと普及してきたセルフレジ。筆者が最初に使ったのは2008年、欧州でのこと。長い行列、無愛想で間違いの多い店員に辟易としていたので、その便利さに感動したことを覚えています。

[ノーコード/ローコード] 国内のノーコード/ローコード開発市場はゆるやかに成長続く(アイ・ティ・アール、2月6日)
・ノーコード/ローコード開発国内市場、2023年度は前年度比で14.5%の伸び
・2023~2028年度の年平均成長率(CAGR)は12.3%とゆるやかな成長が続く
・成長の主軸はクラウド型製品、パッケージ型も緩やかに成長

 国内のノーコード/ローコード開発プラットフォーム市場予測。業務アプリケーションの開発コスト削減や開発期間の短縮、迅速なアップデートの実施といった開発の効率化のメリットが評価されて、ゆるやかだが確実な成長を見せている。ベンダー別で見ると、2023年度はベンダーの6割以上が2桁成長を達成し、特に上位2社は大きく伸びたという。2023~2028年度のCAGRは12.3%で、2028年度には2023年度の1.8倍の市場規模になると予想されている。

 ⇒ 生成AIによる開発支援機能なども出てきており、ローコード/ノーコードを通じた“業務アプリ開発の民主化”はさらに進みそうです。

ローコード/ノーコード開発市場規模推移および予測(2022~2028年度予測)(出典:ITR)

[人材] ITエンジニア採用で「外国人採用経験」8割超える(ウィルオブ・ワーク、2月5日)
・ITエンジニア採用で「外国人エンジニア採用経験あり」が86%
・およそ7割が「今後も外国人エンジニアを採用したい」と回答
・採用で感じるメリットは「社内のダイバーシティ促進」

  ITエンジニアの採用に携わる人事担当者107名を対象に行った「外国人エンジニア採用」調査より。エンジニアとして「外国人を採用した経験がある」企業は86%に達した。採用理由は「国内エンジニア人材が不足」(59.8%)がトップで、「グローバル化対応」(56.5%)がそれに続く。採用後のメリットとしては「社内のダイバーシティ促進」(56.5%)がトップ、それに続き「専門性の高い人材の確保」と「既存エンジニアの知見・技術アップ」(いずれも51.1%)が挙がっている。外国人エンジニアを「今後も採用したい」は69.2%だった。

 ⇒ IT人材不足を背景に外国人エンジニアの登用が一般化してきました。ただし「採用経験あり」(86%)と「今後も採用したい」(69%)にはギャップもあり、どのような場合にアンマッチングが起きるのかは気になるところです。

「外国人エンジニアを採用した経験がある」は86%(出典:ウィルオブテック

「今後、外国エンジニアを採用する予定がある」は69.2%(出典:ウィルオブテック

外国人エンジニアを採用して感じるメリット(出典:ウィルオブテック

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